石材店に使用された商号が会社法違反などにあたるとして、商号の使用差止めを求めた訴訟の控訴審判決が知的財産高等裁判所であった。(知財高裁令和5.3.6)

 

判決は、一審判決と同様、会社法違反(8条1項)などを否定した。

この判決で注目すべきことは、本件が商号の不正使用にあたるかである。

 

まず、「会社法8条1項の不正の目的は、他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など、不正な活動を行う積極的な意思を有することを要するものと解するのが相当である。」とした。

 

そこで検討するに、被控訴人は、E及び同人の子らによって運営されていた山田石材店に係る個人事業を法人化するために設立された法人であり、その後50年以上にわたって継続的に墓石の販売等の事業を行ってきたものである。

 

また、この間、被控訴人は、法人化する以前と同様に、「丸忠」とも表記され得る漢字の「忠」を丸で囲んだ標章や「山田石材店」及び「つなぎ館」の標章等、各被告標章と同様の標章を、被控訴人及びその事業を表示するものとして使用してきたものであり、

 

これらの標章には、多磨霊園正門の近隣における墓石の販売等の事業に関する被控訴人の信用が化体されているものといえる。

 

このように、被控訴人は、その事業の遂行にあたり、長年にわたって上記の各標章を継続的に使用してきたものといえるところ、

 

被控訴人は、平成17年7月に、被控訴人の信用が化体されているといえる上記の各標章を組み合わせた現在の商号に変更したものであること、

 

他方、控訴人の設立時の商号は「丸忠造建株式会社」であって、その事業目的は「造園外構工事の設計施工請負」等であり、

 

控訴人の設立当初の目的には墓地や墓石に関する事業は含まれておらず、控訴人が被控訴人と同様に墓石等の販売の事業を行うようになったのは平成17年7月頃からであり、

 

さらに、控訴人が商号を現在の「株式会社丸忠山田」に変更されたのは平成22年になってからであること、

 

以上の事実からすれば、被控訴人が、不正な活動を行う積極的な意思を有して、現在の商号を使用しているものとみるのは困難である。

 

したがって、「被控訴人が、不正の目的をもって、控訴人と誤認させるおそれにある商号を使用しているものとは認められない。」として、商号の不正使用にあたるものではないとした。

 

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