のり(海苔)に登録商標と類似する標章を使用して販売することが商標権侵害にあたるとして、損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が知的財産高等裁判所であった。(知財高裁令和4.11.30)

 

判決は、一審判決と同様、商標権侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、本件における損害額についてである。

 

まず、被控訴人は、控訴人に対して令和2年12月25日に送付された控訴審第4準備書面により、控訴人に対し、本件の不法行為に基づく損害賠償請求について消滅時効を援用する旨の意思表示をした。

 

そして、同消滅時効の成立を否定すべき事由は認められない。

 

そうすると、本件において、商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権は本訴の訴え提起日(平成30年4月7日)において3年を経過していた部分については時効により消滅した。

 

そこで、以下、対象期間のうち、平成27年4月8日から平成30年4月6日までの期間(以下「期間B」という。)は不法行為に基づく損害賠償請求または不当利得返還請求権によるものとし、

 

その以前の期間(平成20年4月7日から平成27年4月7日まで。以下「期間A」という。)は不当利得返還請求によるものとして、損害額または利得額を算定する。

 

そのうえで、証拠(乙146「ロイヤリティ料率データハンドブック~特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ~」平成22年8月31日経済産業省知的財産政策室編)によると、

 

国内同業他社にライセンスすることを想定したアンケート調査の結果(サンプル数205)では、商標権のロイヤルティ料率(正味販売高に対する料率)は、

 

全体で平均2.6%であり、本件商標権の指定商品である30類では平均1.5%、32類では平均0.5%であり、29類及び31類で回答が得られなかったことが認められる。

 

「上記に、前記ウ(ア)の各事情その他本件で顕れた事情を考慮すると、本件における使用料率は、0.5%と認めるのが相当である。」とした。

 

前記アの売上額に、使用料率0.5%を乗じると、使用料相当額は、別紙「損害額計算」記載4及び5のとおり計算され、期間Aにつき8万9364円、期間Bにつき29万3940円となる。

 

そうすると、期間Bについては、前記オの額の方が大きいから、商標法38条2項及び推定履滅部分について同条3項に基づき算定される額(121万5445円)が控訴人の損害額となる。

 

期間Aについては不当利得に基づく請求が認められることとなり、その額は、前記カで算定した使用料相当額と同額の8万9364円である。

 

なお、「期間Bについては、不当利得返還請求による利得額(前記カ(イ)の使用料相当損害金と同額の29万3940円)よりも、不法行為に基づく損害賠償請求より認められる額(121万5445円)の方が大きいので、不法行為に基づく請求が認められることとなる。」としている。

 

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