タイの発電所建設に絡む贈賄事件で、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)の元取締役への控訴審判決が東京高等裁判所であった。(東京高裁令和2.7.21)

 

判決は、罰金250万円の有罪とした。

この判決で注目すべきことは、取締役など役員が負うべき責任についてである。

 

本件は、タイにおける火力発電所建設プロジェクトに関し、資材の輸送に必要なはしかけの接岸にあたって、外国公務員等である同国の港湾局幹部から接岸の許可を得るための賄賂を要求され、共犯者らにおいて現金1100万パーツ(当時の円換算3993万円相当)を外国公務員等に供与した際、被告人がこれを幇助したという事案である。

 

本件犯行は、本件会社の複数の部門や下請け業者等の多数の関係者が関与して行われた組織的な犯行であり、国際的にも腐敗防止が叫ばれている昨今の情勢の下で、上記のとおり外国公務員等に対し多額の現金を供与するという手段で、国際商取引における公正を害したものであって、厳しい非難を免れない。

 

被告人は本件当時、上記プロジェクトを全体的に管理する責任を担っていたエンジニアリング本部長の職にあり、また、本件会社の取締役として、従業員等の不法行為を防止すべき監督義務者でもあったところ、

 

「判示の共犯者から本件供与の可否を諮問され、本件犯行が敢行されようとしていることを把握しながら、共犯者らである部下従業員らによる違法行為に対し毅然とこれを制することなく、本件供与に一定の理解を示すかのような言動を示しつつ、本件供与に代わる代替手段の検討を促すなどするにとどまった結果、共犯者らが本件供与に及ぶ抵抗感を減弱させて本件犯行の遂行を容易にしたのであって、本来果たすべき職責を果たさなかった点において責任を免れない。」とした。

 

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URL:https://ameblo.jp/gut-expert/entry-12523091805.html

 

後の上告審判決についてはこちら

 

 

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