株式会社の取締役、合同会社(LLC)の業務執行社員、一般社団法人の理事といった役員は、会社ないし法人と委任の関係にあることから善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負うことになる。

 

善管注意義務とは、業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務である。

法人については、理事など役員が常識的に払うべき注意義務である。

 

それに加え、上記の役員は忠実義務も負うことになる。

忠実義務について会社法はこのように規定している。

 

第355条(忠実義務)

 

取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

 

第593条(業務を執行する社員と持分会社との関係)

 

1.業務を執行する社員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務を負う。

 

2.業務を執行する社員は、法令及び定款を遵守し、持分会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

 

また、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律にも同様の規定がなされている。

 

第83条(忠実義務)

 

理事は、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、一般社団法人のため忠実にその職務を行わなければならない。

 

このように、忠実義務とは、法令、定款、総会決議を遵守し、会社ないし法人のために忠実に職務を行う義務である。

 

役員が善管注意義務及び忠実義務に違反したときは、会社などに対し損害賠償の責任を負う。

 

さらに、不祥事を知った取締役や役員に対して、不祥事を隠ぺいし積極的な損害回避の方策の検討を怠ったことについて、善管注意義務違反により役員に連帯して損害賠償責任を認めた株主代表訴訟の判決(大阪高裁平成18.6.9)においてこのようなことが示されている。

 

「自ら積極的には公表しない」ということは「消極的に隠ぺいする」という方針と言い換えることもできるのである。

 

…公表した後に予想される社会的な非難の大きさにかんがみ、隠せる限りは隠そうということにしたもので、現に予想されたマスコミ等への漏洩や、その場合に受けるであろうより重大で致命的な損害の可能性や、それを回避し最小限度に止める方策等についてはきちんと検討しないままに、事態を成り行きに任せることにしたのである。

 

それは、経営者としての自らの責任を回避して問題を先送りしたに過ぎないというしかない。

 

そして、現に行われてしまった重大な違法行為によってダスキンが受ける企業としての信頼喪失の損害を最小限度に止める方策を積極的に検討することこそが、このとき経営者に求められていたことは明らかである。

 

したがって、取締役であった一審被告らに「自ら積極的には公表しない」という方針を採用し、消費者やマスコミの反応をも視野に入れた上での積極的な損害回避の方策の検討を怠った点において、善管注意義務違反のあることは明らかである。

 

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