東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県山元町の町立東保育園の園児3人のうち、2人の遺族が町に損害賠償を求めた訴訟の判決が仙台地方裁判所であった。(仙台地裁平成26.3.24)

判決は、遺族側の請求を棄却した。
この裁判は最高裁まで争われ遺族側の敗訴が確定している。

この判決で注目すべきことは、リアス式海岸と仙台平野などそうでない地域とでの大津波の予見可能性についてである。

避難を指示するものとの選択肢を採用する義務を基礎付けるものとして、U総務課長において、当初の予測を超える規模の津波が発生する危険性や浸水区域が第3次地震被害想定調査における津波浸水予測域にとどまわない危険性を予見し、F保育所に津波が到達し得る危険性を予見することができたかについて、

津波は、直線海岸よりもU字型湾やV字型湾において高さが高くなり、リアス式海岸のようなV字形状に開いた湾においては湾の奥で津波の高さが高くなること、

そのような知見を整合するように、宮城県の第3次地震被害想定調査において示された予想される津波の最高水位は、リアス式海岸を形成している県北部ほど高くなっており、山元町について予想される津波の最高水位の2倍以上の数値であることからすれば、

U総務課長において、海岸線から1.5キロメートルの地点にあったF保育所に津波が到達し得る危険性を予見することはできなかったというべきである。」として、大津波の予見可能性を否定した。

さらに、午後3時14分以降に放送されたNHKによる釜石港の中継映像は、津波の威力を直接的に示すものであったが、リアス式海岸で従前から大津波の被害を受けている釜石市における被害の状況であり、

科学的知見や想定において示されていた、リアス式海岸とそうでない地域との津波の高さについての差異などをも踏まえれば、

「上記映像より、直ちに、山元町においても津波により想定をはるかに超える範囲で浸水し、F保育所に津波が到達することを予見することができたとも言い難い」としている。

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