19歳だった実の娘への準強制性交罪(刑法178条2項)に問われた父親に対し、名古屋地方裁判所岡崎支部が無罪判決を言い渡したことが物議を醸している。

判決の決め手は、娘は抗拒不能だったとは言えなかったことからである。
準強制性交罪を定めた刑法の規定は以下のようになっている。

第178条(準強制性交等)

2.人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交をした者は、前条の例(6年以上10年以下の懲役に処する。)による。

抗拒不能とは、意思決定の自由を奪われ、抵抗することが困難な状態をいう。
そこで気になったのだが、心理学で使われる用語で「学習された無力感(学習性無力感)」というものがある。

学習性無力感とは、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象である。

1967年にアメリカの心理学者ユーティン・セリグマンらの犬を使った実験的研究(オペラント条件づけによる動物実験)によって学習性無力感が証明された。
実験内容と結果は以下のようになっている。

まず、犬をハンモックの中に縛り、逃げられないようにして電気ショックを数10回繰り返し与え、その後、犬を実験箱に入れ、適切な行動をとれば逃げられるような状況にして電気ショックを与える。

そうした場合、多くの犬は電気ショックを与えられると、何とか逃げようと試みるのではなく、ちょっと慌てて動き回るが、すぐにあきらめてショックにだた堪えるだけという反応を示した。

この実験を通じて、初めに自らの力ではどうしようもないということ、つまり事態に働きかけて変化させることができないという経験をした犬は、無力感(絶望感)を獲得し、立ち直ることができなかったことが明らかになった。

そこで、本件において娘が学習性無力感に陥ってたのならば、抗拒不能(抵抗することが困難な状態)であったと言えるのではないか!
何せ、父親による性的虐待は長く行われていたものだし…

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