かつて、著作権の二重譲渡と文化庁への著作権登録を巡る事件の判例を紹介する記事を書いた。
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URL:http://blogs.yahoo.co.jp/gut_expert/54962505.html

今年の3月にこの事件の控訴審判決が知的財産高等裁判所で行われた。(知財高裁平成20.3.27)
判決は、著作権譲渡契約を虚偽表示(民法94条1項)により無効とし、さらには、二重譲渡を受けた者を「背信的悪意者」と認めるなど第一審判決を変更する内容となった。

まず、著作権譲渡契約につき、「被控訴人(二重譲受人)に全知的財産権を譲渡するとの意思を有していたのではなく、他社との紛争に関する権利を信託的に譲渡する目的で、譲渡証明書及び単独申請承諾書に署名したにすぎない」ことなどから、「譲渡に係る意思は存在していない」ため、契約は有効に成立していないとした。

また、仮に契約が外見上成立していると見る余地があったとしても、「虚偽表示」により無効なものであるとした。
よって、著作権譲渡契約が無効であることから、二重譲渡の関係は否定された。

次いで、「被控訴人(二重譲受人)は、控訴人(譲受人)が著作権の正当な承継者であることを熟知しながら、譲受人の円滑な事業の遂行を妨げ、または、著作権を高額で売却するなど、加害または利益を図る目的で、他人に働きかけて譲渡証明書及び単独申請承諾書に署名させ、譲渡登録を経由したものと推認することができる」として、二重譲受人が背信的悪意者であると認めた。

よって、著作権の移転につき、「対抗要件の欠缺を主張し得る法律上の利害関係を有する第三者」にあたらないとした。

なお、以前に音楽著作権の譲渡を巡る詐欺容疑で逮捕起訴された音楽プロデューサーの小室哲哉氏が、音楽出版社に譲渡した音楽著作権を、さらに別の音楽会社などに二重譲渡を行い、かつ、文化庁への著作権登録を経ていたことに関する記事を書いた。

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URL:http://blogs.yahoo.co.jp/gut_expert/55697240.html

このケースにおいても、二重譲渡を受けた音楽会社等は「背信的悪意者」となるであろうか?
すべては、音楽出版社の立証次第である。

後に書いた関連記事はこちら
URL:http://blogs.yahoo.co.jp/gut_expert/61812069.html