違法な行為を合法化するためだけの恣意的な安全基準の改定はやはり認められない | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

官邸はパニック状態に陥っているようだ。
3月11日以来非常事態モードが続いているので、やることなすことすべてが思慮を欠いているように見える。

切羽詰まったうえでの決断だと思うが、原発事故対策に取り組んでいる東京電力の現場作業員や、自衛隊、警察、消防その他の危険な業務に従事される方々に係る放射線の被曝限度基準の改定が如何にも危うい。

これで本当に大丈夫なのかと思うが、政府は、専門家が大丈夫とお墨付きを与えているから大丈夫、国際機関が示した基準の範囲なんだから大丈夫、目下のところ何の被害も出ていないから大丈夫、大丈夫だと思うから大丈夫、と繰り返す。
線引きすることの難しさが分かっているからある程度同情するが、危険な業務に従事している作業員の方々の安全を考えると実に申し訳のない事態である。

緊急非常事態だから許していただきたい。

そう思いながら、一日も早く事態が解決に向かうことをひたすら祈ってきた。
専門家の皆さんが決められたことだから、まあ大丈夫なのだろう。
大丈夫であって欲しい。
いや、大丈夫、大丈夫。
無理矢理そう思い込んで納得しようとしていた。

ところが、政府が「大丈夫」の根拠にしてきた専門家の皆さんの間で見解が分かれていることが明らかになった。

専門家の間で大丈夫という見解が定着していると思ったからこそ、私たちは内心の不安を押し殺して、「大丈夫」という方に賭けてきた。
それが、実は政府は、大丈夫という意見と大丈夫でない意見とがある中で、大丈夫という意見を採用し、大丈夫でないという意見を切り捨てていた、ということが明らかになったのだ。
これでは、政府が出したい結論を出している専門家の意見を採用し、政府が出したくない意見を述べる専門家の意見は切り捨てた、ということにもなる。

専門家の間で見解が分かれているのであれば、門外漢の私たち一般の国民には何が正しいのか分からなくなる。
政府に対して絶対の信頼を寄せることが出来る状況であればそれでも政府の決定に従ってしまうが、今は菅内閣に対して無条件の信頼など到底出来ない。

毎日新聞は、次のような報道をしているが、私は小佐古教授が内閣官房参与を辞任されたのは当然だったと思っている。

子どもたちの健康を犠牲にしてまで菅内閣はいったい何を守ろうとしているのだろうか。
私には、菅内閣がいよいよ暴走を始めたように思われてならない。

参考:毎日新聞ニュース

「原発:内閣官房参与、抗議の辞任

 内閣官房参与の小佐古敏荘(こさこ・としそう)・東京大教授(61)=放射線安全学=は29日、菅直人首相あての辞表を首相官邸に出した。小佐古氏は国会内で記者会見し、東京電力福島第1原発事故の政府対応を「場当たり的」と批判。特に小中学校の屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と異論を唱えた。同氏は東日本大震災発生後の3月16日に任命された。

 小佐古氏は、学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに採用されなかったことを明かし、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と主張した。

 小佐古氏はまた、政府の原子力防災指針で「緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべきもの」とされた「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」による影響予測がすぐに運用・公表されなかったことなどを指摘。「法律を軽視してその場限りの対応を行い、事態収束を遅らせている」と述べた。

 記者会見には民主党の空本誠喜衆院議員が同席、「同僚議員に20ミリシーベルトは間違いと伝えて輪を広げ、正しい方向に持っていきたい」と語った。空本氏は小沢一郎元代表のグループに所属する一方、大震災発生後は小佐古氏と協力して原発対応の提言を首相官邸に行ってきた。菅首相は大震災発生後、原子力の専門家を中心に内閣官房参与を6人増やしている。【吉永康朗】

 ◇「子ども20ミリシーベルト」専門家も賛否
 政府は国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力事故の収束段階で適用すべきだとして勧告した年間許容量1~20ミリシーベルトの上限を根拠に採用。1日8時間を屋外で過ごすとして子どもの行動を仮定した上で、放射線量が年20ミリシーベルトを超えないよう、毎時3.8マイクロシーベルト以上の学校などで屋外活動を1日1時間に制限する通知を文部科学省が19日に出した。

 文科省は「余裕を持って決めた基準で、実際に年間20ミリシーベルトを被ばくすることはない」と説明するが「子どもを大人と同様に扱うべきでない」として他の放射線の専門家からも異論が出ているほか、日本弁護士連合会も反対声明を出している。

 ICRP主委員会委員の経験がある佐々木康人・日本アイソトープ協会常務理事は「政府は厳しい側の対応をとっており、影響が出ることはない」と理解を示す一方、「被ばくを減らす努力は必要だ」と指摘する。【西川拓、永山悦子】

毎日新聞 2011年4月29日 21時08分(最終更新 4月30日 1時15分)」