渡辺議員は、もったいないことをした。
折角の問題提起がどんどん風化していく。
僅か1週間前のことだが、もう自民党の国会議員は渡辺議員のことを忘れかけている。
政治は論理の力であり、数の力でもある。
その両面で力が不足していることを露呈した。
短気は損気。
離党後の局面で渡辺議員が自民党の中でしっかり問題提起を続けていれば、同志を獲得できたかも知れないのに、惜しいことだ。
自分は捨石になる。
そう言っているようだが、果たして成りきれるだろうか。
一匹狼はどこまで行っても一匹狼。
群れを作ることが出来ない。
後に続く者もいない。
兎角の批判はあるが、中川秀直、塩崎恭久両議員は、とにかく頭目になる貫禄を示した。
同調する発言者が周りにいる、発言を聞きながらそのとおりと相槌を打たせるような見事な弁論を出席者に何度も聞かせたのだから、十分だ。
この人だったら何とかしてくれるかも知れない、この人の言うことが正論だ、そう周りを説得できなければ、次のステージに上ることは出来ない。
私は、そう思っている。
道路特定財源の一般財源化問題については、あえて特別法を作ったり、法律の明文でわざわざ1年限りの使途の限定を明記するようなことはすべきではない、と主張してきたが、幸いにもそのとおりの方針が示された。
定額給付金の使途の拡大を含めての制度設計の柔軟化についても一定程度受け入れられそうだ。
所得税法改正法案の付則に、「2011年度に、景気の回復を前提に、消費税を含む税制の抜本改革を実施する」、と明記する問題についても、「2011年度に税制抜本改革の導入に向けた準備を行なう」、という趣旨の文言に変える、ということになりそうだ。
様々な意見の対立があるときに、その落としどころ、妥協点を探ろうとしている幹部のご苦労を思うと、これでもまだ駄目だ、とか、納得できないから所得税法改正法案には反対する、などとは言えないだろう。
何度も議論を重ね、その議論を踏まえて法案の修正に知恵を凝らしてきたのに関わらず、その努力をまったく評価せず、自分の意見にあくまで固執する。
そうなっては、残念ながら政治家としてのセンスが疑われる。
これで造反したら、造反議員の負け。
私は、そう思う。
民主党の中では、定額給付金や消費税問題で自民党の中から造反議員が続いて出てくるのを期待している節があるが、どっこいそうは行かない。
今は、一日も早く第二次補正予算を成立させ、景気対策に万全を期さなければならない大事なときである。
どんなに支持率が低下しようとも、自民党は、今、足の引っ張り合いでゴタゴタを起こし、国政の舵取りの手を離してしまうような柔な政党ではない。