薬害肝炎問題で、変身を遂げた福田総理/これは凄いことだ | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

福田総理が就任してから3ヶ月にしかならない。


しかし、この3ヶ月で、日本の政治が大きく前に一歩踏み出すことになった。




血液製剤による薬害C型肝炎訴訟問題について、福田総理の大きな政治決断が示されたのである。


これまでの行政の枠を突き破り、立法府である国会が新たな法律を作って薬害C型肝炎被害者の一律救済を図る方針に転換したのだ。




一部のマスコミや野党の党首が決断が遅いとか、政府が自ら救済法案を提出すべきだ、などと、相変わらず非難めいた論陣を張っているが、自民党総裁としての立場を明らかにしたうえで、議員立法の方向を示した福田総理の決断は見事だ。




政府が大阪高等裁判所の和解勧告に答えを出したのが、今月の20日のこと。


原告団が即座に政府の提案を拒否したのも同日。


これを受けて大阪高裁が直ちに和解協議を打ち切るのではなく、年内に新たな和解勧告を提示したいとの表明があったのも、同日である。




2002年10月以降、東京、大阪、仙台、名古屋、福岡の5地裁で訴訟が提起され、国が敗訴するという事態が続いていた。


国の敗訴判決を受けて本格的な和解協議が始まったのは、今年の11月7日の大阪高裁の和解勧告の後のことである。




裁判所によって国が賠償責任を負担すべき時期の判断が異なっている状況で、行政府でしかない内閣が、未提訴者を含めて薬害肝炎被害者の一律救済を打ち出すことは困難だった。




裁判所の和解勧告も、自ずから現に継続中の訴訟の解決に止まらざるを得ない。


和解の付帯条件の一つとして、訴訟に参加していない被害者のための救済措置に言及することがあっても、それはどちらかというと紳士協定の類である。




したがって、薬害肝炎被害者の一律救済を実現するためには、新しい法律を作るしか道はなかったのである。


厚生労働省は、既存の法律体系の枠組みの中でしか動くことが出来ない。


裁判所が国の賠償責任を認める範囲でしか和解に応じられない、との回答に拘ったのは、行政府としては当然の反応である。




なんらの裏付けもなく、国に賠償の責任があるのかないのか分からない段階で巨額の財政支出をすることになったら、国民の非難の矢は行政府である国に向けられる。


ここは、国民の代表者で構成する、国権の最高機関として位置づけられている国会の出番なのだ。


それを、政府の責任だと非難するマスコミは、行政と司法、司法と立法、さらには立法と行政の関係を正解していない。


行政は、あくまで法律の根拠に基づいて行政を執行しなければならないのだ。




批判されるべきは、立法府である国会だった。


それに気づいて、直ちに手を打ったのが福田総理である。




福田総理は、21日に議員立法の検討を自民党の執行部に指示したという。


丁度その前日に福田総理の秘書官と若手議員との懇談の機会があったが、その際の若手の国会議員の率直な感想が今回の総理の英断の引き金になったかもしれない。




こんな経過を辿ってみると、福田内閣の柔軟性と強かさ(したたかさ)が浮き彫りになってくる。




この舞台回しに関わっているのは、党側では、伊吹幹事長、谷垣政調会長、大島国対委員長、笹川議院運営委員長、中川秀直元幹事長、そして与謝野前官房長官、官邸側では町村官房長官のようだ。


総務会長の二階氏、選挙対策委員長の古賀氏が福田総理を支持しているから、福田総理は大きな政策転換が平然と出来る。


津島税制調査会長や山崎元副総理も、福田総理の今回の決断を評価するだろう。


勿論、森元総理は、福田政権の支えの要であり、福田内閣のスポークスマンの役割を引き受けている。


こうした人がいるから、一日で政策の大転換ができる。


どこにも機能不全の影がない。


福田内閣は、確実に日本の政治を前に進めているのだ。




今回も、舞台の裏で舞台回しを務めたのは、事務方の二橋官房副長官か。


ひょっとすると、官邸と若手議員のパイプ役を務めた、棚橋議員の存在も大きかったかもしれない。




結局、国は、人が動かす。


要路に人を得るかどうか、で国の運命が決まる。




福田総理は、着実に日本を前に進める力をつけ始めたように思うが、さて如何か。


これに反し、民主党の小沢一郎氏の周りには、未だその「人」がいないようだ。