愚かな選択?の中ではベストの選択/政治資金規正法の改正案固まる | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

すべての政治団体について1円以上の領収書を公開すべし。


そんな国民の声に動かされてこの4ヶ月間、政治資金規正法の再改正に、自民党党改革実行本部プロジェクトチームの一人として携わってきた。


政治団体の政治活動の自由を侵すことになるから、あらゆる政治団体に公開を義務付けるような愚かなことはしてはならない、現行制度の罰則適用は恣意的な運用が可能になっているから、罰則規定の見直しをしなければならない、と口を酸っぱくして訴えてきた。


民主党の鳩山由紀夫幹事長や自民党の中川秀直幹事長が一円以上の領収書の公開を言い立て、チキンレースのような状況になってしまっていたので、その流れを変えることは日々困難になっていた。


羹に懲りて膾を吹く。

そんな諺がピッタリするような状況が続いていたのである。


政治家に対する不信が最高に達していたのだろう。


私が政治活動の自由の保障をいくら述べても、大衆は、政治家はそんなことを言って不正を誤魔化そうとしている、なんで領収書の公開ぐらい出来ないんだ、と、頭ごなしで私を批判する。

ホームページに私がどんなことを危惧しているか書いて情報発信してみるが、反応は芳しくない。


あの喧騒が一段落し、政治の舞台がぐるっと回ったようだ。

いよいよこの臨時国会で政治資金規正法の再改正が共産党を除く5党の共同提案で成立することになった。


第一に、今回の規制の対象を、国会議員や国会議員になろうとする候補者の関係する政治団体に限定することになった。

第二に、総務省に政治資金適正化委員会を設置し、登録政治資金監査人制度を創設することになった。

第三に、現行の政治資金規正法に基づく領収書の写しの添付義務については、1万円以上にかくだいすることとした。

第四に、政治団体は1円以上のすべての領収書を登録政治資金監査人に提出し監査を受けなければならないものとし、情報公開法による請求に対しては、総務省の政治資金規正適正化委員会の審査を経て、権利の乱用や公共の秩序を乱すものでない限り、すべて公開すべきものとした。

そして、第五に、総務省や選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書は、インターネットを通じて国民に公開するものとした。


その細部にわたる制度設計はなお総務省の事務レベルで詰めなければならないが、大変な大改正が実現することになる。


党改革実行本部長の武部勤元幹事長の政治センスの良さが、何といっても大きい。


一円以上の領収書の公開を強く主張した吉野、柴山の両衆議院議員、領収書の公開原則は堅持しながら、その実務上の取り扱いについて具体的なアイデアを出した加納参議院議員、突然国会に政治資金監査院の設置をぶち上げた武部本部長などなど、実に多彩な議員の議論で今回の政治資金規正法の改正構想が煮詰まってきた。


転機は、総務省に政治資金適正化委員会を設置し、登録政治資金監査人制度を創設することを細田幹事長代理が提案したときに訪れたのではないか。

第三者による監査を強く主張していた吉野議員の意見と、国会に政治資金監査院を設置するとの武部構想を合体したようなアイデアである。


かつての通産省の出身の政治家で、内閣官房長官や自民党の経理局長を経験された衆議院議員の細田幹事長代理がこのプロジェクトチームにいた、ということが実は大きかったと思っている。

表に出ることは少ないが、大事な仕事は、実はこういう議員が担っている。


そして、もう一人が、この全体の総括的事務処理を担った石田事務局長である。

この人がいなければ、実務者協議が進まなかった。

市長経験者で、しかも事務能力が極めて高い。

武部本部長がその能力を買って、党改革実行本部の事務局長に抜擢しただけのことはある。


自民党の政治資金改革プロジェクトチームのメンバー一人ひとりが、政治家の鏡のような士(サムライ)であった。

そう思うと、プロジェクトチームの一員としてこの一連の作業に加わった私もここで大変な充足感・満足感を味わうところであるが、実は、私には、その充足感も満足感も湧いてこない。


一人ひとりの政治家が国民の信頼に応えるような仕事をしてきていれば、これほど国民の不信を招くことはなかったのに。

民主主義のコストで止むを得ないと言うが、100人も公務員を増やさなければ対応できない、などというのは、行政改革とは逆行するではないか。

国会議員や国政に立候補しようとする人にまた新たなバリヤーを増やすことになってしまう。

これでは、日本の将来を担おうとする有為な若者が政治の世界からどんどん逃げてしまうぞ。

大変だ、大変だ。


どうやら、私たちは、愚かな選択の中ではベストの選択をしただけではないか。



この呟きをブログに残すべきか逡巡したが、いつか皆がわれに帰るときがあるはず。

そのときのために、記録に残しておこうと思い、あえてこのままにする。

政治家は、これからますます大変だ。


昨日、橋下弁護士が大阪府知事選挙への出馬表明をしたというニュースに接した。

早速マスコミの攻撃に晒され始めたようだ。

こうした高い志の有為の人材をどうか潰さないようにして欲しい。


橋下弁護士が、政治の実相に通じた、聡明で適切な判断の出来る政治の良師に早く恵まれんことを強く望む。