愛新覚羅さんのエピソードを思い出して | オッサン、そこは便所じゃねーぜ!

愛新覚羅さんのエピソードを思い出して

「そー言えば、最近どうなんだろ。ちょっと落ち着いたのかな?」


「まだ船とかは行ってるみたいだけどね。北のニュースのほうが強烈だから」


「にしてもね、中国のデモね、破壊の限りを尽くし、これで収めてやる!じゃ収まんないよ。こっちが」


「だよね。普通の感情としては」


「なんか、3回ほど中国行ったじゃんか。しかも仕事だから、普通の旅行より中国人と濃く関わって、いい人にもたくさん出会った」


「ま、中学生のときウケ狙いで中国語勉強したり、三国志読んですっかりハマったり、わりとシンパシー感じてたからね。もともと」


「でも、口あんぐりな瞬間もあったよね。ほら、ちょうどドイツワールドカップのとき行ってて、商談というか懇談会やって、テレビ観たい!でっかい画面で!とか言って、カラオケボックス連れてってもらって」


「うん。そんで、オーストラリア戦、日本が点を取られてこっちが引きつってるときに拍手しやがって、負けると満面の笑みでこっちを見てまた拍手。思わず拳にチカラが、ね」


「でも日本人だから表面的な笑顔で返してね」


「多くの中国人は、普通にいい人だったりするから、あれは『貝の中国人 羊の中国人』にもあったように、大陸的な空気の読めなさなのかな?と思ったよ。あとで、だけど」


「まぁでもね、今回の尖閣とか、ありゃどうなんだ?と。大切なパートナーのハズでしょ? つきあいかたがわからないよね」


「3回も行ったけどね」


「そんなの忘れたし、中国の仕事も途切れたし、いいんだよ。ヘンに気をつかわなくても」


「………というdisり話で終始しようと思ったんだよね」


「そう。でも、ちょっと萎えました。『ラストエンペラーの弟・波乱の生涯』観たときに書いた日記を読んじゃって」


「ETV…てか、昔で言うNHK教育でやってたやつね。そう言った方がしっくりくるね」


「それはいいんだけど、溥傑さんと家族の話は、奥さんの浩さんが書いた『流転の王妃の昭和史』も読んだし、ドラマでも、ドキュメンタリーでも観たから、それなりに知ってたわけですよ。けどね、中国と日本の架け橋になろうってがんばってたとか話で」


「そこに、以前観た別の愛新覚羅家ドキュメンタリーのレイヤーが重なってね」


「老夫婦が、紫禁城を一般市民として訪れると。そこで、長い階段を、足の悪い浩さんを溥傑さんが支えるように上る、というシーンがあったの。それがね、本当に、心から相手を気遣ってるのがわかる。やさしい、ものすごくあたたかい光景なのよ。ゆるい演出家がやるようなベタベタなシーンじゃないよ。もう空気感から伝わる。いや、神々しいくらいだったんで、よ~く覚えてます。それと、浩さんが亡くなって、遺体に号泣してすがってる溥傑さんの写真もね、泣けるわけ。目の幅で涙が流れるくらい」


「あれは…なんつーか、完全に、愛、だね。愛の迫力。肉の愛しか知らないヤツでもハッとするくらいの」


「溥傑さんと浩さんは、あからさまに政略結婚で、戦争で中国と日本に生き別れて、15年くらい音信不通でやっと再会したときには長女は心中死していて…という状況から、あの結びつきをつくった。人間ってスゲーな、って思うよ。あれ見せられると」


「人間と人間の間には国境線はないんだよな」


「…いま、いいこと言った?」


「…いや、いい話だったから…つい」


「で、そんな番組観て、少し反省したことを思い出したわけ」


「まぁ、そもそもはさ、日本の大先輩なわけだよね。中国って。大天才も多く出てる」


「そして、実際に人間関係を築いている人は、いっぱいいるわけよ。すでに。そこには、こんなことで切るには惜しい縁もたくさんあるはずでさ」


「ワールドカップの失点で手を叩かれたけどな」


「彼らがどうかは別にして、やっぱり中国は、広い意味で教育がダメだと思うんですよ。ちゃんと勉強した偉い人もいるけど、婉曲な表現が思いつかないのでそのまま言うと、バカ、も多い」


「なにを根拠に」


「何度も言ってるけど、たとえば、平日の真っ昼間に、道ばたでトランプとかしている大人がけっこういる。その人たちの顔を見るとわかる…ってのは、上からって言われればそうだけど」


「うん。きわめて失礼な決めつけだけど、魯迅も中国人の教育に強い危機感を持っていたんだよね。だから医者の道だったっけ?をやめて作家になった。中国人のダメなところを伝えて改善していくために」


「『阿Q正伝』とかね。中国人のしょーもなさを書いてる、というか告発してる」


「中国ってずーっと戦乱だったし、そして文革もあった。あれってバカ万歳政策だからね」


「知識階層は吊し上げか農村へ下放だもんね。まぁつまり知識が力になることを知っているから、K産党的には一般市民はバカがいい、と」


「で、敵はK産党政府じゃないよ日本だよ、と刷り込み、ときどきネタがあるとガス抜きさせる」


「そして愛国無罪と。でも、愛国=K産党なのか?だよね」


「うん。敵はハッキリしてきたよね」


「そうね。あれ、なんとかしなきゃ、ですよ」


「鄧小平のあとくらいからダメだからね」


「はやく合衆国になっちゃえばいいのに、って、道州制のことよく知らないけど思うよ。そうしたらチベットもウイグルもねぇ…わかんないけど」


「鄧小平は尖閣も『先送りにしましょう』って言ったらしいからね」


「もはや先送りにできる状況じゃないと思うけど、白黒つけられるのか?つけたらどうなる?を考えなきゃイカン」


「ふーん。このあいだまで熱くなってたのに」


「なってたけど…愛新覚羅家の番組観たときの日記読んじゃって気持ちのウエイトを関係修復に置いてみたら、ずーっと先送りするのもアリかもなぁ、と思って。メンツ以外のものはシェアできるんだし、共同開発地にしちゃうのはどうかと。もはやウチの国の資源だとか、そういう時代でもないし、これは世界的にも新しいんじゃないかと」


「でもアッチは言うよ。ウチの資源だ!って」


「それは、もうネットの世を考えたロビー活動に頼るしかないかも。ん?そう言えば、日本ってネットのロビー活動チームってあるのかな? 絶対必要だよね。世界世論。すげー大事なんだけど」


「ロビー活動の話は置いといて、国境の曖昧な場所の共同利用ってのは、ネトウヨは反発するだろうけど、そういう提案もありかも知んない。相手が乗ってくるかどうかは別にして。領土問題のありなしを認める認めないとかの話は整理するとして。けどね、北方領土は、どうすりゃいいんだろう。4島なのか2島なのか、最近は3島という話も出てきているみたいだし」


「あそこは、すでに人が住んでる場所もあるから、ややこしい」


「で、いずれの場合も、共同開発地としたところで、たとえば海底油田とかがあって、どっちが仕切る?とか、もめそうだ」


「理想論かもしれないけど、もうひとりじめの時代じゃないでしょ?と。持ってるものがエライ、みたいなのは、もう20世紀で終わってるんだよ、ホントは」


「うん。インフラの議論はあるけど、地域の主権というか、最大でも市区町村レベルのミニマムな単位が世界中で独立できて、ネットとかで世界中が相互に安全保障できれば、別に国なんて単位はいらないかも知れない」


「そのほうがわかりやすいし、幸せかも知んないよね。知らない土地のピンと来ない問題も、『日本人だから』みたいなことで背負わされることがなくなる」


「と言いつつ、三国志みたいに、わが練馬区が板橋区に攻め込まれた!みたいなことにならないかと(笑)。たぶん、そうしないようにするには、世界が一度みんな豊かにならないといけないんだよ」


「その貧しさと豊かさの距離を、ITが縮められないのか?と」


「IT革命と言うけど、まだまだ過渡期だから、どう変わっていくかもわからない。でも、ITが、明らかに世界を変えるし、人間の意識も変えると思う。国の成長は情報の進度と比例して速くなったけど、人間の時計も速くなってる」


「確証は持てないけど、尖閣の問題も、国際レベルで見れば、『中国ってやっぱ信用できない国だな』と思われたんじゃないかと。あんな映像を見たら、理屈はどうあれ、野蛮!と感じるじゃん。ずいぶん損なことをしてるし、損なことだと思わせたい。あの事件で学べたのは、中国の態度を反面教師として、日本は世界から尊敬されるというか、悪いヤツじゃない的なイメージを確保するべきだ、ってことだと思うのよ。それにはマンガアニメコンテンツを先陣に文化戦略を…」


「それは話し出すと長くなるから、また次にするとして、なんにせよ、国と国より、人と人だし、そういうことは忘れずにおかないとイカンかな、と思うね」


「まぁ、でも、オーストラリアのゴールに拍手した浙江省の役人は許せないけどね」


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