こんにちは。
今日の問題は、実際にありそうな内容です。
問題をイメージしながら解いてみると理解が早いかも知れません。
あまり馴染みが無い言葉かもしれませんね。
「準占有者」
占有者は解るにしても「準」って。。。
今日の過去問は、平成26年度問33の問題を○×式でやりたいと思います。
債権の準占有者に対する弁済等に関し、民法の規定及び判例に照らして○×れって言う個数問題です。
それでは、早速。
問題
債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が債権の準占有者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
正解は?
○
最初は、書いてあることを理解するのが大変ですよね。
債権者=例えばお金を貸した人(社長さん)
債権者の被用者=貸した人のところで働いている人(従業員)
この問題、ようは、従業員が受取証書を偽造して弁済を受けたって内容ですね。
そして、今日のメインテーマ、「債権の準占有者」ですね。
債権の準占有者=真実の債権者ではないのに、債権者であるかのような外観を有している者のこと。
真実の債権者ではない=受取証書を偽造した従業員
債権者=社長さん
この問題で言うところの弁済を受けることのできる人、そう見える人ってことですね。
実際、この被用者は偽造したものとはいえ、「受取証書」を持っていますからね。
どう考えますか
受取証書に関する規定を確認してみますね。
(受取証書の持参人に対する弁済)
第四百八十条 受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
前段で「受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。」と規定していますね。
「みなす。」ですから覆りませんね。
ただ、この規定は、「真正な」受取証書に関する規定で、この問題にあるような「偽造」された場合には適用されません。
んじゃ、どうなんの
そこで考えられるのが「債権の準占有者に対する弁済」です。
(債権の準占有者に対する弁済)
第四百七十八条 債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
この規定ですね。
古い判例ではあるんですが、「偽造した受取証書」を持参した者は、「債権の準占有者」として、第四百七十八条により処理することができると判断しています。
弁済者が、「善意かつ無過失」であれば、「債権の準占有者」への弁済として有効な弁済になると言うことです。
ちなみに、「第四百八十条の受取証書の持参人に対する弁済」の規定は、法改正により削除される予定のようです。
今後に注目しましょう
問題
債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
正解は?
○
漢字が多いですね。。。
債権がAさんとBさんの二人に譲渡されたと言うお話です。
Aさんが、先に「第三者対抗要件を具備した」ようですが、債務者のOさんは、ちょっと「この人」って弁済の有効性について疑問を持った訳です。
そして、Bさんが「真の債権者」なんじゃないかと、OさんはBさんに弁済をした場合のことです。
これは、判例からの出題です。
昭和57(オ)272 運送代金 昭和61年4月11日 最高裁判所第二小法廷 判決 その他 名古屋高等裁判所
二重に譲渡された指名債権の債務者が、民法四六七条二項所定の対抗要件を具備した他の譲受人(優先譲受人)よりのちにこれを具備した譲受人(劣後譲受人)に対してした弁済についても、同法四七八条の規定の適用があるものと解すべきである。
劣後する譲受人への弁済が「債権の準占有者」に対する弁済として有効になると言う訳ですね。
参照
(指名債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
問題
他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
正解は?
○
この問題は盗難ですね。
盗人さんが銀行で払い戻しを受ける場合です。
銀行さんは、「善意無過失」と書かれていますね。。。
1問目で、
債権の準占有者=真実の債権者ではないのに、債権者であるかのような外観を有している者のこと。
ってのを確認しました。
他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者は、「真実の債権者ではない」のは確実ですね。
債権者であるかのような外観を有している者に、「その代理人と称して」って人があたるのかってところが問題でしょうね。
これも判例で判断がなされています。
昭和33(オ)388 納品代金請求 昭和37年8月21日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
債権者の代理人と称して債権を行使する者も民法四七八条にいわゆる債権の準占有者に該ると解すべきことは原判決説示のとおりであつて、これと見解を異にする上告理由第四点の論旨は理由がない。
債権者の代理人と称して債権を行使する者=債権の準占有者に該る(あたる)
本来、「本人と詐称する者」や「詐称代理人」に弁済しても、その効果は債権者本人には帰属しません。
原則は、有効な弁済にはならない訳です。
この第四百七十八条の「債権の準占有者に対する弁済」の規定は、債権者のような外観や適法な代理人であるかの外観がある場合で、弁済者が、その外観を「善意無過失」で信じて弁済した場合に弁済者を保護するって規定です。
「その代理人と称して」=弁済者が「善意無過失」の場合には、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となります。
問題
他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。
正解は?
○
この問題も盗難ですね。
前問との違いは、単なる「払戻し」か「定期預金の期限前払戻し」か、それと、「その代理人と称して」と「本人と称して」の部分ですね。
なんて冷静な盗人なんでしょうか。
感心するところではありませんけどね。
こちらの問題も銀行さんは「善意無過失」の場合です。
と言うことは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となりそうですが。。。
この問題でポイントとなるのは、「定期預金の期限前払戻特約に基づいてする払戻しが、第四百七十八条の「弁済」にあたる」のかと言うことですね。
昭和38(オ)1006 債務不存在確認定期預金証書回復等請求 昭和41年10月4日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
右の事実によれば、原審は、本件定期預金債権の期限前払戻について、当事者間に前記合意の存した事実を認定しているものと解せられるところ、かかる合意の存しない場合は別論として、本件においては、期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約成立時にすでに合意により確定されているのであるから、被上告銀行のなした前記の期限前払戻は、民法四七八条にいう弁済に該当し、同条の適用をうけるものと解するのが相当である。
定期預金債権の期限前払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる訳です。
ただ、これは、読みようによっては、「定期預金の期限前払戻しについて当事者間で期限前払戻しの場合における弁済の具体的内容が合意により確定している場合には、」弁済にあたるけど、「具体的内容が確定していない場合」は、弁済にはあたらないともとれますね。
う~ん、難しい。。。あっ、「かかる合意の存しない場合は別論として、」って書いてますね、失礼しました~。
問題
他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、債権の準占有者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。
正解は?
○
なんか問題がさらに複雑になってますね。
試験は3時間180分ですね、60問ですから1問当たり3分です。
この5肢はちょっときついですね。
しかも妥当なものを問う個数問題ですから。。。
時間だけかけて、一つでも間違えばすべてパーですし。
簡単な問題も難しい問題も同じ4点ですし、後回しでも良い問題かもしれませんね。
ここまでやってきて何なんですが。。。
あ、続けますね。
この問題も盗難です、しかも「本人と称して」、盗んだ定期預金通帳を利用し定期預金を担保に融資を受けています。
まぁ、当然ながら盗人さんは返す訳はありませんよね。
この事実で、返済のなかった銀行さんが盗まれた定期預金債権と貸金債権を相殺した場合ですね。
債権の準占有者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となり得るのか
この問題も融資した銀行さんは「善意無過失」の場合です。
これも判例問題です。
昭和41(オ)815 預金返還請求 昭和48年3月27日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
銀行が、無記名定期預金債権に担保の設定をうけ、または、右債権を受働債権として相殺をする予定のもとに、新たに貸付をする場合においては、預金者を定め、その者に対し貸付をし、これによつて生じた貸金債権を自働債権として無記名定期預金債務と相殺がされるに至つたとき等は、実質的には、無記名定期預金の期限前払戻と同視することができるから、銀行は、銀行が預金者と定めた者(以下、表見預金者という。)が真実の預金者と異なるとしても、銀行として尽くすべき相当な注意を用いた以上、民法四七八条の類推適用、あるいは、無記名定期預金契約上存する免責規定によつて、表見預金者に対する賃金債権と無記名定期預金債務との相殺等をもつて真実の預金者に対抗しうるものと解するのが相当であり、かく解することによつて、真実の預金者と銀行との利害の調整がはかられうるからである。
書いてますね、前の問題で見た「実質的には、無記名定期預金の期限前払戻と同視することができるから、」と。
それと、基準はあくまで出捐者のようです。
「けだし、無記名定期預金契約が締結されたにすぎない段階においては、銀行は預金者が何人であるかにつき格別利害関係を有するものではないから、出捐者の利益保護の観点から、右のような特段の事情のないかぎり、出捐者を預金者と認めるのが相当であり」となっていますから。
出捐者=金品を出して人を救うこと、人。
裁判所の言う出捐者は、ちょっと一般的な意味とは違うのかも知れません。
預金者=出捐者
銀行さんが、「善意無過失」なら、第四百七十八条の類推適用、あるいは、無記名定期預金契約上存する免責規定によつて、その相殺は有効ということです。
今日は五肢、すべて難しかったですね。
それと五肢、すべてが○でした。
これ、本試験ではなかなかすべて○ってことに自信は持てないかも知れませんね。
自信を持つためにも説明出来ることを心掛けましょう
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
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