店内はそれほど混んでいなかった。

 

さっきまであんなことがあったんだから当然か。

 

突如、町に現れ暴れた怪物。

 

そんなものが現れた後に外食しようと思う人は少ない。

 

それでも、私たちの他にも学生やサラリーマンがグループで店内に来ている。

 

私たちは、怪物を倒した祝賀としてとある焼き肉店に来ていた。

 

何だが4人でこうやって集まるのはとても久しぶりに感じた。

 

「梨菜って、帽子似合うね。」、ふいに美桜が言う。

 

「ありがとう。」、そう言って私は美桜の顔を見返した。

 

美桜は普段からお世辞をあまり言わない。

 

何気ない言葉だが、私は嬉しく感じた。

 

美桜がそう言ってくれるなら、本当のことだと思うから...

 

私はもともとお洒落には無頓着な方だった。

 

まったく気にしないという訳ではないが、時間を沢山かけて容姿を整えるくらいなら、他のことをしたい。

 

服装や髪型も普段から実用性重視だった。

 

見た目やどう思われるかより、実用性・効率重視。

 

それが私が昔から周りを気にせず続けていることだった。

 

もっとも最近は美桜やゆうりの影響で少しはお洒落をするようになったのだけれど。

 

「焼肉ってダイエットには許されざる料理だよね。」、純花が焼肉を頬張りながら言う。

 

「あんたはもう少しお行儀良く食べなさいよ。そんなことだからダイエットが進まないのよ。」

 

美桜の的確な突っ込みに純花が肩をすくめる。

 

「そうだね。私、今度こそダイエットを成功させるよ。」

 

「あ、言ったわね。その宣言、明日から実行しなさいよ。」と美桜。

 

「うぅ。わかったわよ。」と純花。

 

純花はこの宣言を明日から実行するという気持ちだけはあるようだ...

 

最も宣言通りに実行できた試しはないのだが、、

 

私は今年で13歳になる。

 

同学年の子や年上の子と過ごす何気ない日常。

 

日々の生活の中で何を話したかなんて覚えてない。

 

けど、この時間は貴重な時間だと思う。

 

私の中で幸せと寂しさ、2つの対極の感情がせめぎ合う。

 

13歳という貴重な時間は、人生の中で一度きりしかない貴重なものだと分かっているから。

 

大人になっても、このメンバーでまた集まって、くだらないことを話したい、そう思った。

 

私の複雑な気持ちを吹き飛ばすかのように、外の木々は太陽に照らされて輝いていた...