私は本を読むのが好きだ。

 

それは私の趣味であり、日々色々な事を私に教えてくれるからだ。

 

また、本は現実世界にはないような魅力的な世界に私を連れて行ってくれる。

 

学校に親しくない人がいないという訳ではないが、私にとって1人で過ごす事はさほど苦ではない。

 

毎日面倒な人と関わらなければいけないくらいなら1人で本を読んでいた方が楽しい。

 

よって小学4年生という年頃の割には1人で過ごす事が多かったように思う。

 

両親はそういう私を少し心配していたように思う。

 

ある日、私はその後の私の運命を変える1つの本に出会った。

 

「魔法と科学で異世界転生」

 

このライトノベルとの出会いによって私の人生は大きく変わったと言っても過言ではないだろう。

 

それまで私が読んできたファンタジー小説とは一線を画す内容だった。

 

何よりも驚いたのは主人公が高校性だったという事だ。

 

小学生である自分よりも年上の主人公が、ある日突然事故で死んでしまい、気がつくと剣や魔法があるファンタジーの世界にいたのだ。

 

しかも死んだ筈の主人公は、なぜか自分が生きていた時の記憶を持っていた。

 

そして自分の能力値を見て愕然とする。

 

なぜならレベルという概念がない世界で、主人公は他の人間と比べて自分が圧倒的に強い事を知ったからだ。

 

最初は戸惑っていた主人公だが、やがて持ち前の性格から楽観的に考え始める。

 

そんな時、彼は偶然にもヒロインと出会う。

 

ヒロインはその世界の王女だったが、彼女はヒロインの事を知らない様子だった。

 

しかし、やがてヒロインは主人公に好意を抱き始め、2人で共闘するようになる。

 

敵サイドの目的はフューチャストーンなる己の欲望を叶えられる伝説の宝石を手に入れ、世界を支配する事であったが、主人公とヒロイン、そしてその仲間たちが協力しあってこれを阻止。

 

最終的にはフューチャーストーンの力を使って主人公は現実世界に帰還するのだった。

 

 「なんだ、結構王道な話じゃないか。」と思った人も多いかもしれないが、これが後に私の運命を変える事になる。

 

その本を読み終えた晩、私は不思議な夢を見ることになる。

 

 私はとても綺麗な景色の中にいたのをはっきりと覚えている。

 

具体的にどういう景色かと言われるとなぜか思い出せない。

 

とにかくそこにいると気持ちが爽快になる、この世のものとは思えないような場所である。

 

しかし、美しいものは決して永遠ではない。

 

地響きがし、いかにも悪役といった感じの、人なのか人ではないのか分からないような人たちが攻め込んで来る。

 

私は、状況が良く分からずその場に立ちすくんでいた。

 

その時、どこから現れたのか分からないが、1人の少女が私の前にふと姿を現した。

 

背が小さく、目に純粋な輝きを持った、綺麗な少女だった。

 

その少女が私に言う。

 

「お願いです。私たちに力を貸してください。あなたならこの国を救う事が出来る。」

 

「え!?そんな事言ったって。どうすればいいのよ?」

 

と私は思った事をそのまま尋ねた。

 

少女が何かを言おうとしたが、そこで夢は終わった。

 

その夢を見た時は、私は自分が少し疲れているだけだと思っていた。

 

少し前までテストなどが集中しており、実際にいつもに比べて疲れていたからだ。

 

疲労によって変な夢を見るというのは良くある事だと思う。

 

しかし、後にこれがただの夢ではない事がはっきりするのである。

 

この夢が全ての始まりになろうとはこの時には思いもしなかった。