樽の香味が気になる・・アンヌ・グロのオート・コート・ド・ニュイ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

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テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

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ドメーヌ・アンヌ・グロ オート・コート・ド・ニュイ 2004
購入日    2006年6月
開栓日    2011年6月21日
購入先    キタザワ
インポーター モトックス
購入価格   3180円

休診時間を新設するかどうかの選択に迫られ、昨朝ついに決断した。
最近行けなくなっている大学のカンファに参加するため、隔週火曜日午後を休診にするのである。
これでまた耳学問の勉強が再開できるが、教授はじめ大学のメンバーは嫌がるだろうなあ。

もう丸10年経ったし、その間周辺に同業者が3軒もできたし、まあ患者さんに迷惑をかけることは
ないだろう、と思う。

3年ほど前にも、1900まで受け付けていた夜間診療を、1830までに短縮した。
何人かの患者さんから苦情も出たが、結局患者数は減らなかった。

この30分の短縮で何が変わったか?
気分的にも身体的にもずいぶん楽になったのだが、最も大きな変化は、
「18時59分の患者」が来なくなったことである。

これこそが診療時間短縮の最大の目的だったが、目論見は大当たりであった。
「18時59分の患者」とは、「診療終了直前に駆け込んでくる初診患者」のことである。

会社を退社し、診療受付終了に間に合うように駆け込んで来られる患者さんのことではない。
朝から熱が出ているのに、朝からバイトに行ったり1日中遊んだりしたあと、
診療終了間際に来て、高圧的な態度で診察を要求するような人たちのことである。

「もうちょっと早く来ないと点滴もできない」などと言おうものなら、
「ちゃんと受付時間内に来てるやないか」
と居直られることもしばしばなので、そんなことは口にせず、もちろんにこやかに診察する。

「熱が出ているから、ちゃんと薬を飲んで、しっかり休養して、X日後に来て下さいね」
と親切に説明して帰しても、再診率は非常に低く、たいがい2度とやって来ない。

1830診察受付終了にしたら、こういう患者さんがぱったりと来なくなった。
どういうわけか、1829にはこんな患者さんは来ないのである。
近隣の同業者のみなさん、どうも申し訳ありません。


さて、今回のアンヌ・グロのオート・コートは、白ではなく赤である。
もう少し重めの酒質かと思ったら、開栓当日からすでに柔らかでほっこりしている。
やっぱりオート・コート・ド・ニュイという痩せた土地柄と、
2004という弱々しいヴィンテージのなせる結果なのだろう、と思った。

しかし注意深く口の中で転がしていると、案の定樽の香味がベースにあることに気付く。
濃いめの食事と合わせると気にならないレベルであるが、ワインだけに集中して飲んでいると
かなり気になってくる。

それでも初日は小さな赤系果実の果実味を楽しめるのだが、
2日目以降に徐々に果実味が後退すると、例によって樽味がのさばってくるのである。

最近わたしは樽香と樽味のアレルギーになっており、これを感じてしまうと
ワインに対する私的な評価を下げてしまう。

おそらくこのワインは、もっと早く開けることを想定している、
または開けた初日に飲みきることを想定して造られているだろう。
であれば、樽の香味は決してマイナスなファクターではなく、
それ自身を感じさせず、ワインに深みと奥行きをもたらしたただろう。

自分の飲み方が間違っているのか、この造り手の個性と合わないのか。
どっちか分からないが、どうもこの造り手はあまり趣味に合わない。

ミシェルもベルナールも、同じオート・コート・ド・ニュイを造っており、
裾ものワインでありながらそれなりに個性を持っているが、
酸がシャープなせいか、いずれもなかなか神経質で、開栓時期がやや難しい。
しかし、わたしはアンヌよりこの2者の方が好きである。

先日のグロの2004のように、ヴィンテージと造り手の個性がうまくコラボレーションし、
ぴったりの時期に開栓して、本来のオート・コート・ド・ニュイの魅力を堪能できる、
というケースはあまり多くはないようだ。