南仏の風・・デビッド・セニアの夜 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

最近大阪で人気フレンチの筆頭格、と言っていい「デビッド・セニア」を一昨日の土曜日、
家内と大学生の娘を連れて訪問した。
クラブで忙しいという同じく大学生の息子は、今回も姿を見せず。

ワイン大学のgeorgesさんが、最近この店を貸し切って例会を開催されていたから、
料理内容に関してはお墨付きだ。
ワイン大学のメンバーなら誰でも知っていることだが、georgesさんは、雑誌などで超人気の店でも、
自分の舌で納得できないと絶対にほめない人である。

店の名前はシェフの名前で、リーガロイヤルホテルと並んで、大阪で最も格式とお値段の高いホテル、
リッツカールトンのメインレストラン「ラ・ベ」の料理長から独立した人である。
年齢は今年で37歳、イル・ギオットーネの笹島シェフ、ポンテベッキオの山根シェフと同世代だ。


デビッド・セニア氏 名前から想像するより、ずっと軽くてお茶目なおっちゃん

シェフなのに、店の中を始終歩き回り、愛嬌を振りまいてエンターテイナーぶりを発揮する。
ニース出身だそうで、バターを多用した重いものではなく、オリーブやトマトを使って
地中海風の料理を供される。
シェフご本人のノリも、料理もラテン系で、フランスよりイタリアの風を感じる。

夜の料理は1万円、1万5千円、2万円のコースのみ。今回は真ん中のコースでお願いした。
これに10%のサービス料がつくが、日本人より外人が多いスタッフの愛想も良く、
この10%のサービス料は安い。

秋だからといって、旬のものばかり出してこない、というのも良い。
5月に同じメンバーで北浜のポンテベッキオを訪問したが、アスパラガスばかりでちょっと
食傷気味だったし、最初に卵まるごと1個、というのも減点要因だった。
家内と娘とわたしの料理に対する評価は、3人ともポンテベッキオよりデビッドに軍配を上げる。

わたしは今回が初めての訪問だったが、さらに気に入ったのが、ワインの持ち込みが可能
ということで、予約の際に確認して、自宅のミシェル・グロを1本下げていった。
持ち込み料は1本3000円。これもリーゾナブルである。

 
ドメーヌ・ミシェル・グロ ヴォーヌ・ロマネ 1er クロ・デ・レア モノポール 2002
購入日    2004年12月
開栓日    2008年10月11日
購入先    ヴェリタス
インポーター ヴェリタス
購入価格   6000円
右側の写真は、この店の売りであるオリーブのパン。

もう4年も前に3本購入して、ずっと放置していたワインの1本目。
30歳のブロガーwinestさんが、最近若いグロを開栓しておられ、わたしもちょっと若いグロが飲みたくなった。
自宅から持って行くのに、あまり澱の多いものは適さない、ということもある。

この店のソムリエ、若くてかわいい女性のYさんに開栓してもらったが、リリース直後に
押さえたものだけあって、コルクを含めて状態は万全である。
Yさんは、このワインを「まだ酸味が強いですが、若い果実味が詰まっていますね」と言われたが、
まったくその通りで、現在でも若すぎてピチピチしている。

フランボワーズ、プラム、花の香りが乱舞するが、ヴォーヌ・ロマネらしいスパイシーさには乏しい。
ヴォーヌ・ロマネ村の銀座からはちょっと離れた畑だからかも知れないが、
シャンボール・ミュジニーの北の方の畑を連想させる香りである。

飲むとこれが思い切り若くて、やっと渋みが果実として落ち着きかけた、という段階である。
2~3時間でかなり柔らかくはなるものの、最後まで複雑さは出てこない。
しかし、非常に大きなポテンシャルを感じる。

要するにまだまだ若すぎるのだ。
あと最低でも3年、できれば5年以上待たなければ、このワインの本来の飲み頃にはならない。
この点は、自信を持って断言しておきたい。

こんなに線が細くて、果実の甘さより酸の魅力が特徴で、しかも長熟なワインとなると、
一般には理解しがたいだろうなあ、と思う。
もはや1万円を越えた2005も、4本持ってはいるが、これなら10年待ちかと思うと気が遠くなる。
もっとも、世間ではもっともっと早く開栓されてしまうのだろうが。
だからこの造り手はカール・シューリヒトなのだ。


アミューズ パンプキンのスープ イカのマリネ入り チーズのスライス添え


前菜 酸味のきいたクリームソースをベースに 海のものが並ぶ
ウニをのせたアスパラガス 貝柱 バジルパンにトマトペースト 甘エビにキャビア

サワークリームの舌触りと酸味が心地よい。
この店の料理は、全体に羽が生えたかのように香り立ちが良く軽やかである。


イワシのスープ ロースとした玉葱を乗せた硬めのパン カキノキ茸添え

独特の香りがあったが、イワシの個性のうしろに海老の頭をいっしょに煮込んだ香りがする。
この立体的な造りが面白い。


キアラ(アラの山陰地方の方言)カブとタケノコ ゴボウのパイ生地巻き
トマトとオリーブのソース

この日のメニューでは、おとなしめのソースだが、皿の縁に添えられた、トマトとオリーブのソースが
アクセントを添える。


グラニテ カシスのシャーベット すり下ろした青リンゴが隠れている
ミルクと・・のソースをかけ、ザクロの実が振りかけられている
皿に添えられた、小さな菊の花がミスマッチで、笑いを誘う


メインは鳩のロースト 数種のキノコを炒めたペースト ムラサキイモのチップ
なぜかフォアグラ添え 赤ワインとトュリフのソース

ソースは軽めで、ピノ・ノワールに合う。
量は少なめでいい、と強調しすぎたのか、楽しみにしていたメインの鳩がほんの1かけらしか
なかったので、肩すかしを食う。

フォアグラはいらないから、せめて鳩はもう一切れ欲しかった、というのが家族3人の
共通した意見であった。


デザート フランボワーズのソルベ マンゴー スワンシュークリーム メロン

この店のHPに「パティシエ急募」となっていたので、どんなものが出てくるのか不安だったが、
大丈夫だった。


オマケのプティフール

この時点でチーズはもういい、と言ったら出てきたマカロン。
娘が1人でほとんど食べてしまった。

典型的なフレンチではなく、シェフの出身地ニースの料理の特徴が出ていたのが面白かった。
合わせたワインは、南仏のグルナッシュやシラーより、若めのピノ・ノワールで正解であったと思う。