広島の銘酒 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


相原酒造(広島県呉市) 純米吟醸 雨後の月 無濾過 生原酒
(左)雄町  (右)山田錦

先週末学会で横浜に出張したが、学会より臨床医会の会合に出席している時間が長かった。
臨床医会では、4月の医療費改定の責任者でもある厚労省の原徳寿医療課長を招聘し、
医療制度改定に関する講演をして頂いた。

この人物こそ、現在マスコミで話題になっている「後期高齢者医療制度」を制定した責任者である。
この制度の骨子に関しては、昨年の日本医学会総会でのパネルディスカッションですでに
原課長が紹介されており、その際のスライドでも説明されていた。
わたしの手元にも記録があるが、すでに昨年から着々と準備されていたことが分かる。

「後期高齢者不要制度」と悪口をたたかれているこの制度は、先月行われた山口の衆議院選挙の
補欠選挙で争点になり、自民党候補が敗れたことは記憶に新しい。
今回原課長の話を聞いて再確認したが、どう考えても政府の説明不足があると感じた。

原課長は講演で次のように説明されていた。
かかりつけ医を持ちましょう、というのは医師会の主張であり、それに沿った制度である。
かかりつけ医=主治医として固定し、アクセスを制限する、という意図はない。
現在の国の財政状況や方針では、これ以上医療費への財政支出は難しい。
しかし増え続ける高齢者の保険料は誰かが払わなければならない。

これまで低医療費でわが国がやって来れたのは、医師のボランティア精神によるものである、
とも発言されたことには少し驚いた。
よく現場を分かっているんじゃないか。

限られた財源の中でどうやって国民皆保険制度を守るか、という視点において、
厚労省の立場とわれわれ現場医師の立場は矛盾するものではない。
しかし過去20年以上にわたり厚労省に痛めつけられてきた、と感じている現場医師の不信感は
根深いようにも思う。
一旦制度を作っておいて、それが走ってから梯子を外す、というのは厚労省の常套手段で、
今や日本の医師はお上を誰も信用していない、というのも事実だ。
この不信感を解消しなければ、制度の定着は望めないのではないだろうか。

短時間だが、原課長をまじえて、件の副院長、盟友の事務局長、新東大教授たちと
雑談する機会があった。
京大理学部数学科出身で自治医大に入り直した、という経歴もユニークだが、
昨年同様、この人は相当な切れ者であると感じた。
テレビ朝日の「報道ステーション」の内容がひどいので、厚労省として抗議した、
とも言われていたし、医療費のどの部分を今後削っていけるか、という具体的な話も出た。

当たり前のことだが「医療費を上げろ」と厚労省に言うのはお門違いで、
財務省に言わねばならないのである。
前回の改訂で医療費が3.16%下がって医療崩壊に拍車をかけたのは厚労省のせいではなくて、
小泉首相の官邸主導で行われたことなのである。

限られたパイを奪い合う現状では、誰かが報酬を増やせば誰かの収入が減る。
制度に反対するのは簡単だが、医師会(の一部)と厚労省がバトルを繰りひろげても不毛であろう。
医療の正当な値段を決めるのは難しいが、透明性と公平性が求められるのは言うまでもない。


という充実した?学会出張を終え、件の副院長と西宮の大先生、福山の開業医の先生と
新幹線で宴会をしながら日曜日に帰阪した。
この福山のS先生は、わたしと同年配ながら町医者としては大先輩で、非常に熱心で面白い人物である。
酒の話をしていたら、広島の「雨後の月」は旨い、という点で意気投合してしまった。

で、早速先週広島から送って頂いたのが今回の2本である。
いずれも精米歩合50%の吟醸酒の生酒だが、米だけが違う。
それだけで微妙に味わいが異なるのが面白い。

わたしの印象では、山田錦の方がしっかりしていてやや男性的で、雄町の方がやや軽やかで香り立つ。
開栓する前の印象と逆な気もする。
ワイン好きで酸性人のわたしには、日本酒全般が甘く感じてしまうのは致し方ないとして、どちらも旨い。
冷蔵庫に冷やして、料理に合わせてちびちびやっている。

S先生、ありがとうございました。
また7月に福岡で飲みましょう。