空港問題その2
美容ネタを期待している方には申し訳ないのですが、ここのところ航空・空港関係の動静に一言言っておきたいことがありますので。
今日は関西3空港問題です。
関西3空港問題というのは、関西地区には、伊丹空港、関西国際空港、神戸空港と3つの空港が比較的近い地域にあるということです。伊丹空港は大阪都心から10kmちょっとと非常に近く、便利な空港なのですが伊丹の住民が廃港を求めて裁判を行ったりしていたので、これを廃止して、新しい空港を作りましょうということになりました。本当は神戸沖が有力な候補だったのですが、神戸はこれを断ったので、結果的に泉州沖に広大な埋め立て地を作って空港を建設したのが関西国際空港です。
ところが関西空港ができたら廃港になるはずの伊丹が、やっぱり空港を残してほしいと言い出し、さらに一遍空港はいらないと断ったはずの神戸が後になって、やっぱり空港を作りたいと言い出して、関西空港の横風滑走路とでもいうべき空港を造り、さらに、関西国際空港が莫大な借金を抱えてかつ空港の余力も十分にあるにもかかわらず、扇チカゲ大臣が関西地区の景気対策のために関西空港の第二滑走路を建設したのです。
それで今度は前原大臣は伊丹は小型機を中心にして存続、関西は格安航空会社(LCC)と貨物の拠点空港にすると言い出し、橋下大阪府知事は伊丹を廃港にしてその跡地を売却すべきだ、と主張しています。そしてその売却益で関西空港と大阪都心部を10分でつなぐリニアモーターカーを作れと言い出しました。
ちょっと、待ってくれよ、と言いたいですね。
まず前原大臣の意見。関西空港をLCCの拠点にするというアイデアですが、関西空港は世界で一番着陸料が高い空港であることをご存じでしょうか?それはへどろで地盤沈下する地盤の上に空港を作ったので莫大に埋め立て費用がかかったからです。LCCは着陸料が世界一高い空港には就航しません。LCCを呼び込む、ということはその分を税金から補てんするというわけですから、問題の解決にはならないのではないでしょうか?
さらに、貨物便を呼び寄せるとのことですが、関西空港は二期工事を行いましたが、予算が減らされたので二期工事は滑走路だけでいわゆるエプロンは作っていません。貨物便を呼び寄せるには大規模な貨物倉庫だとか駐機場が必要になってきますが、海の上の空港なのでこれを作るにはまた埋め立てをしなくてはなりません。またお金を海に捨てる気でしょうか?
次に橋下知事。伊丹空港のような都心から近い空港を廃止してしまえば、二度と同じような立地の空港は望めません。今回日本がオープンスカイ政策を受け入れたということは、今後航空需要が増大することが予想されます。近い未来を見通すことができずに、伊丹廃港を提案するのはあまりに短絡でないでしょうか?まして伊丹売却益で関西空港から大阪までのリニアモーターカーの建設費がねん出できるとお思いなのでしょうか?そしてもしリニアモーターカーを建設するとしたら、現在のJRと南海電車はどうなるのでしょう?空港ー大阪都心間にどれだけの需要があるのでしょう?結局別の赤字を抱えるだけなのではないでしょうか?
僕の提案はこうです。
まず、東京便、福岡便以外の国内線を伊丹からすべて関西空港に移す。
ソウル金浦空港、北京南苑空港、上海虹橋空港との国際線を伊丹から飛ばす。
東京、福岡、ソウル、北京、上海といずれも都心から近い空港との間にシャトル便を飛ばしビジネスユースの掘り起こしを図ります。またニューヨーク、ロスアンゼルス、ロンドン、パリなどの欧米の都市からの路線も受け入れ、これらの都市から北京や上海、ソウルに向かう客の乗継に使います。たとえばロンドンから上海の直行便では上海の浦東空港に到着するので、虹橋空港に到着する便は国際競争力があります。(直行便が飛ばない時間に到着するようにすればよい)またロンドンから羽田に飛ぶこともできます。
一方都心から遠い関西は、ゲートウェイではなく乗継空港としての機能を高め、国内線ハブ空港を目指します。
たとえば現在熊本から仙台に行くには、熊本から羽田に行って、そこから東京駅に移動し、新幹線を使わなくてはなりません。あるいは熊本から福岡に行ってそこから仙台に飛ばなくてはなりません。現在の熊本ー大阪、大阪ー仙台は一つの航空会社で乗り継ぐことができないので、接続がよくありません。
このようなことがないように、朝8時、11時、14時、17時、20時のように3時間おきぐらいに関西空港に到着便を集めて、そしてまた別の目的地に飛び立てるようにすれば、地方都市から地方都市への移動がきわめて楽になります。このシステムをハブ&スポークシステムと呼びますが、同時に離発着する飛行機が多数さばけるように、滑走路が複数ある空港でなければハブ空港にはなれません。現在日本でこの能力があるのは関西空港と新千歳空港だけです。(羽田は枠がいっぱい)
また関西空港は現在中国の多くの都市に就航していますが、これは残し、シカゴ、ミネアポリス、フランクフルトなど欧米のハブ空港と関西を結び、欧米から中国の中小都市へのハブにします。中国の空港での乗り継ぎはまだ国際レベルに達しているとは言えず(香港を除く)、欧米のビジネスマンはそれより先進国日本で最終目的地までの便に乗り換えることを望むと思います。
さて、神戸ですが、これこそLCCを受け入れればよいと思います。たとえばオーストラリアからジェットスター、マレーシアからエアアジア、シンガポールからタイガーなどの格安航空会社は関西空港に乗り入れるより、神戸に乗り入れたがるはずです。神戸と関西空港の間にはフェリーがありますから、これを使用すれば海外から安く日本各地に行けますし、逆に日本の地方都市から安く海外に行くこともできるようになります。
最後に関西3空港ではありませんが、静岡空港について。
静岡県の牧の原台地に静岡空港ができました。東京と名古屋の間にあってなかなか就航する飛行機会社がありません。地元の船会社の鈴与というところがフジドリームラインという航空会社を設立しました。
僕はJR東海はリニアモーターカーの建設を諦めて、この空港の真下に新幹線が通っているのですが、ここに新幹線の駅を作るべきだと思います。そしてフジドリームラインに出資して、海外から日本に来る旅行客を新幹線で移動させることを考えるべきだと思います。あるいは新幹線沿線の住民が海外に行く需要を取り込めばよいと思います。
たとえば八王子に住んでいる人が、海外に行きたいと思ったら、成田空港まで2回乗り換えで2時間30分ぐらいかかります。ところが八王子から新横浜までは40分弱、現在新横浜から浜松まで1時間10分ですから、静岡空港まででしたらおそらく1時間かからないでしょう。すると八王子ー静岡空港は乗り換えも1回ですし、八王子ー成田空港よりも1時間近く時間が短くなります。
名古屋から中部国際空港は約30分、浜松までも30分ですから中部国際空港に就航していないところだったら名古屋からの旅客も見込めます。
パリのシャルルどゴール空港にはフランスの新幹線であるTGVが乗り入れていますが、日本の空港には日本が世界に誇る新幹線は乗り入れていません。羽田空港の近くには東海道新幹線の車両基地がありますので、羽田の国際線ターミナルにも新幹線が乗り入れるといいと思うのです。
日本は島国なので外国に行くには飛行機か船に乗らなくてはなりません。JRも国内の移動ばかり考えないで、海外とつなぐことを考えてはどうでしょう?(品川にリニア中央新幹線の駅を作っても、多分あまり人は乗らない)
話が長くなったので今日はこの辺で。
日米航空協定自由化で合意!JAL提携先決定へ!僕の予想。
日米航空協定が自由化で合意しました。実はディズニーお宅であると同時に飛行機お宅でもあるので一言コメント。
今世界の航空会社は航空連合(アライアンス)という仲良しグループ単位で競争をしています。現在世界には3つの大きなアライアンスがあり、それはスターアライアンス(ANA加盟)、ワンワールド(JAL加盟)、そしてスカイチーム(デルタ加盟)です。
今後自由化が認められると羽田、成田、(伊丹も?)以外の空港への乗り入れは航空会社の判断で自由に行えるようになります。(今までは両国の政府で話し合って決めていました。)するとスカイマークの神戸ーニューヨーク便とかエアアジアxのクアラルンプールー茨木または静岡などという格安航空会社がどんどん新しい航路を開設することになるかもしれません。
そうすると競争が激しくなるので、ある程度グループの中で談合して路線の役割分担をすると有利になります。
たとえば成田ーニューヨークのような路線ではスターアライアンスに加盟している航空会社(ANA,ユナイテッド、コンチネンタル)が今までは各航空会社の判断で勝手に飛行機を飛ばしていましたが、競争が激しくなる分、自分たちのグループのなかでは融通をきかせ合うようになります。たとえばAという会社は朝の7時でこの時間帯は成田空港にたどりつける人が少ないので小さな飛行機、遅い午前にはBという会社で大きな飛行機。さらに深夜はまたC社が小さな飛行機という具合です。今までは発着枠が限られていたので、早朝や深夜ではなく各社とも午前の一番旅客が期待できる時間帯に集中してしまいました。今後は役割分担をして、そして収益はグループの全体で分け合うようにすれば深夜発希望の旅客も取り込めて、全体としての収益が上がります。
本題に入る前に基礎知識が必要なのでもう少し辛抱してください。
で、今話題の経営再建中のJALですが、ここは今ワンワールドに加盟していますが、デルタ航空から資本を受け入れてスカイチームに鞍替えするのではないか、という見通しがあります。しかしワンワールドに加盟しているアメリカン航空もワンワールドから離脱しないよう、オーストラリアのカンタス航空などと共同で資本参加する意思を表明しています。今日の報道ではどうやらどちらの陣営につくか決まったようです(発表はまだです)。
ここでもうひとつの問題が羽田国際化です。羽田空港は現在滑走路をもう一本建設しており、来年の10月に完成すると羽田空港からもっとたくさんの飛行機が飛べるようになるので、国際線をもっと飛ばすという計画になっています。羽田は混雑空港なので自由化後も新規の発着枠は政府が決めることになっています。
羽田国際化は成田空港をアジア便のハブ空港として使用していたデルタ航空にとってはあまりうれしい話ではありません。逆に羽田に国内線、近距離アジア線を有している日本の航空会社にとっては有利です。ですからデルタとしては何としてもJALを仲間に入れておきたいところです。
ところで、この日米の自由化協定に対して最初アメリカは日本が予想していたよりも多数の羽田発着枠を要求したとのことです。それが一晩明けて40便のうちの4便、すなわち一割の割り当てで交渉が妥結したとのことです。また成田空港での米国の発着枠のこれ以上の増加を求めず、今後は少なくすることにも合意したとのことです。
このことは何を意味するのでしょうか?
僕はJALがデルタ航空の資本を受け入れたのだと理解しました。
ポイントは今後成田からの発着枠を増やさず、むしろ減らすことで合意した、というところです。
もしJAL-デルタ連合が実現すると成田空港から米国へ向かう便の6割強がJAL-デルタの便になります。公正な競争の為にはこれを減らす必要があります。またデルタは現在成田に多くの発着枠を持っており、米国の各都市と、アジア各都市との乗継空港として成田空港を最も上手に使っている航空会社です。デルタとしては羽田の国際化はあまりうまみがありません。そこで当初米国はもしJALがワンワールドに残るなら、たくさんの羽田発着枠をデルタに回すように要求したのではないでしょうか?しかし日本政府は羽田発着枠は日本の航空会社の経営を守るために半数はこれを国内2社のために確保し、その見返りとしてJALがデルタの資本を受け入れることを認めたのではないか、というのが僕の推察です。
またJALがデルタと組むことには日本の地方空港救済の意味もあります。
首都圏や関西圏以外に住んでいる人にとって外国に行くのに最も便利な方法は、最寄りの空港からソウルの仁川空港に行って、そこから目的地に飛ぶ方法です。なぜなら国内線の羽田空港と国際線の成田空港は距離があるからです。もし航空自由化して、そしてJALがそのままワンワールドに残ると仮定します。するとスカイチームとしては日本の航空会社がありませんから日本便は韓国の大韓航空が頑張るしかありません。大韓航空としては日本の地方空港からソウルまで来てもらえればそのあと長距離便で稼げるので、ソウルと日本の地方空港の間の搭乗率が多少低くても路線を維持できます。でもそうすると日本の飛行機会社にとっては利益を逸することになります。そうすると日本の国内線がますます縮小してしまうかもしれません。ソウル便だけではとても空港は維持できないからです。
国土交通省のねらいとしては、羽田空港の滑走路新設によって国内線発着枠を増やして、JALとANAの国内線の経営基盤をしっかりさせたうえで、海外の会社と競争させるつもりだと思います。どの空港にとっても羽田空港はドル箱なので、今までは発着枠の制限があり利益を上げるチャンスを失っていました。今後羽田が国際化すると地方から羽田を経由して海外に行くことができるようになります。また今までは発着枠の制限から1日1便などという日帰り出張には不都合なスケジュールだったのが、これからは1日の便数が増えるようになり、地方空港の利用率向上が期待されます。
ですから羽田国際化ーJAL再建ー地方空港再建はセットになっています。もし僕の予想通りJAL-デルタ連合が実現すればこれらの問題を同時に解決することができるかもしれません。よい政策だと思います。
(ついでに言えば、沖縄普天間基地問題も早く解決して、横田基地を民間で使用できるようにしてほしいです。)
今回の国土交通省の英断ですが、そもそも現デルタ航空は旧ノースウェスト航空を含んでおり、ノースウェスト航空は日本の民間航空産業の生みの親のような企業であり恩がありますから、その意向というのは無視できないほど大きなものです。実はもめているように見えて、最初から結論は出ていたのではないでしょうか?(僕の予想が当たっていればの話ですが)
ワンワールドのマイルを一生懸命貯めていた人にとっては来年はこれを思いっきり使い切らなければならないので、大変な年になりそうです。