久々にプロ格名場面シリーズの新作です。
過去にあったプロレスの名場面を文字起こししつつ
どんな出来事だったのか私の勝手な解釈を沿えるという内容になります。
先日、私がいつも見ているyoutubeの
「有田哲平のプロレス噺【オマエ有田だろ!!】」
で、猪木問答が取り上げられていました。
これを見て「そう言えば…」と思い出したのですが
以前猪木問答の文字起こしをしたんですよ。
ただ事件の解釈が難しいというか、
どこを取ってもツッコミ所が多すぎるので
解釈をまとめきれずに放置してしまいました。
今回、せっかくのタイミングなので
書きかけの記事を引っ張り出して完成させることにしました。
それでもやはり長くなるので、
今回は状況説明と文字起こしだけにして
私なりの解釈は次回に続けようと思います。
有田さんの方は2部構成ですが、多分私は3部作になります。
それではまず、書き起こしの前に
簡単な当時の状況説明から。
通称「猪木問答」あるいは「猪木御殿」は
2002年2月1日に新日本プロレスで起きました。
この1ヶ月前、エースだった武藤敬司選手が
新日本を退団しライバルの全日本に移籍するという
大事件が起きます。
しかも単独行動ではなく、
若手の小島聡選手、ケンドー・カシン選手と
裏方の社員を5人引き連れての移籍でした。
※移籍と言っても円満なものではなく
会社員が機密を持ってライバル会社に行く、に近いです。
武藤選手が移籍した理由は、団体としての方向性に
不満があったからと言われています。
当時はPRIDEやK-1など、格闘技が大人気な時代でした。
新日本はここに合わせるように、
悪い言い方をすれば格闘技人気におもねるような路線に入ります。
具体的には格闘技の選手をプロレスに呼んだり
あるいはプロレスラーをPRIDE、K-1のリングに上げたりしています。
ここに不満を持ち、もっと純粋なプロレスがやりたいと
武藤選手は移籍していったのです。
しかし、不満があったのは移籍した選手たちだけでは
ありません。
残った選手たちも、この路線には不満を持っていました。
何とかしてこの路線を変えたい。
そう考えた1人の選手が行動を起こします。
動いたのは現役トップだった蝶野正洋選手。
猪木問答とは何か?を一言で表すならば
「蝶野選手が会社に対して起こしたクーデター」です。
それは団体を仕切る現場監督の権限も、
裏方となる背広組の理屈も吹っ飛ばす
「神」への公開直談判でした。
それではお待たせしました。
ここからが書き起こしです。
~2002/2/1 北海道市総合体育センター 試合後のリングにて~
蝶野「オイ、新日本!よ~く聞けオラ!オイ!
俺に!納得できねえ!説明出来ねえっていうのかオラ!」
蝶野「オイ!お前らに教えてといてやる。
新日本プロレス、このリング。我々には上に1人
神がいる!」
蝶野「ミスター猪木!」
(「炎のファイター」が流れ、アントニオ猪木が登場)
猪木「元気ですか~!」
(場内大喝采)
猪木「俺は怒っている。今日は。
その前に、かつてスキャンダルがあった時に、
札幌のみなさんが最初に受け入れてくれた。
今でもその思いは変わりません。一言、ありがとう」
猪木「そして、新日本からしばらく離れている間に
色んなことが起きている。
今回、アメリカから帰ってきましたら
肝心かなめの武藤がどうしようと、
馳がどうしようとそんなことはどうでもいい。
新日本プロレスの心臓部、秘密を全部持っていかれて
指をくわえている。
こんな奴ら許せんぞ!」
(場内拍手)
(注:馳選手も少し前に新日→全日に移籍しています)
猪木「ということで、俺は怒りまくった。
そうしたら、蝶野が立ち上がってきた。
今、世の中が怒りを忘れてしまった時代に、
俺たちがリングで本当の怒りをぶつける。
それがみんなに伝えるメッセージなんだ!
新日本イズムとはそういうことだと思う。違いますか?」
(場内「そうだ!」の大喝采)
猪木「蝶野!怒ってるかオメエは?」
(天を仰ぐ蝶野。場内大「蝶野」コール)
猪木「聞いたかこの声を。お前に期待をしてるんだぞ」
蝶野「会長(猪木のこと)、俺はまず先に一つ。
俺も新日本で戦うレスラーとして、新日本にも
それから、オーナーの猪木さん、それから
新日本の象徴の、俺らの神であるアントニオ猪木に聞きたい。
ここのリングは、ここのリングで俺は、
俺はプロレスがやりたいんですよ!」
(場内大喝采)
猪木「ちょうど俺は、引退してからもうすぐ4年が経ちます。
覚えているかな?
この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ。
危ぶめば道はなし。踏み出せばその一足(ひとあし)が
道となる。
迷わず行けよ。行けばわかるさ」
(観客「アリガトー!」)
猪木「いいか。今の世の中はなぁ。
みんな縮こまってしまって夢も希望も潰れてしまった。
だからこそ俺たちは力道山が戦後に敗戦の中で
夢をなくした国民に戦いを通じて夢を与えてくれた。
それが猪木イズムじゃない。力道山イズム、
そして猪木イズム。
お前たちが継いでくれなくて誰が継ぐ!」
猪木「今日は俺は素直な気持ちで、な。
出てったやつは構わない。
災い転じて福となすじゃないが、ね。
本当に今、世界に発信しなきゃいけない
プロレスの時代が来てる。
インターネットを通じて世界の隅々までプロレスを
見てくれる時代がもうそこまで来ている。
そのために本当のプロレスをやって欲しい。
そのために俺は外に旅を出てメッセージを送り続けた。
この4年間。小川と橋本の試合。そしてこの前も10月に
色んなことで俺に相談に来たから、
三つ巴戦という試合を提案してあげた。
それも拒否した。
12月の31日、今まで歴史になかった、
紅白と同じ時間帯で最高の視聴率を取った」
(注:この前年12/31に行われた安田忠夫vsジェロム・レ・バンナが高視聴率を出したことを指しています)
猪木「今お前(蝶野)に教えよう!
お前はただの選手じゃねえぞ、これから。いいか!
プロレス界を全部仕切っていく器量になれよ!どうだ!」
(場内大「蝶野」コール)
蝶野「猪木さん、俺に全て任せて欲しい。
この現場責任全てを俺が全部やりますよ!
藤波!オイ長州!ココは俺に任せろオラ、エーッ!
リングの上は、俺が仕切る!いいか!
武藤!全日本!クソッタレオラ、エーッ!」
(蝶野がリング外を指さしながら)
蝶野「オイ!お前ら誰か他にやるヤツいねえのか
オラ、エーッ!オイ!俺と天山が…」
(他の選手たちがリングに登場。
ここからが有名な「猪木問答」の開演です)
猪木「オメエは怒ってるか!」
中西学「怒ってますよ!」
猪木「誰にだ!」
中西「全日に行った武藤です!」
猪木「そうか。オメエはそれでいいや。オメエは!」
永田裕志「全てに対して怒ってます!」
猪木「全てってどれだい?」
(まさかの追及に戸惑う永田選手)
猪木「言ってみろ。俺か?幹部か?長州か?」
永田「上にいる全てです」
猪木「そうか。奴らに気付かせろ。オメエは!」
鈴木健想「僕は自分の明るい未来が見えません!」
猪木「見つけろ。テメエで。」
(無言で棚橋選手にマイクを向ける)
棚橋弘至「俺は新日本のリングで、プロレスを!やります!」
猪木「まあそれぞれの思いがあるから、それはさておいて。
な。オメエたちが本当に怒りをぶつけて
本当の力を叩きつけれるリングを
お前たちが作るんだよ。俺に言うな」
(蝶野、うつむいてグッと歯を食いしばる)
猪木「俺は3年…4年だよ引退して。
テメエたちの時代、テメエらの飯のタネを
テメエで作れよ!いいか!」
猪木「今日はここんとこはテメエらみんな握手しろ」
(敵対していた蝶野・天山たちと、永田たちが握手)
猪木「それじゃあ、俺に代わってお前が一言、
みなさんにメッセージを送ってくれよ」
(蝶野にマイクを渡す)
蝶野「オイ!札幌!」
蝶野「オイそれから!電波通じて、オイ!
全国の新日本ファン!プロレスファン!良く聞け!
新日本プロレス!もう一度ここで、最高の!
プロレスラーの、レスリングを!もう一度よみがえらせる!」
(猪木にマイクを返す)
猪木「オメエらに言っとくぞ。
俺がチョロチョロ出てくるような場を作るなよ!な」
猪木「やるか!」
(言いながら上着を脱ぐ)
猪木「それぞれの怒りも、全てをぶつけてくれ。
俺たちはそんな思いを、日本に元気をつけるために
力を合わせて頑張っていきます」
猪木「行くぞー!1、2、3、ダーッ!」
(ワールドプロレスのテーマ(The Score)が流れる中、
永田・中西・棚橋・健想に猪木が闘魂ビンタ。
蝶野・後藤達俊・天山には握手のみ。
ここで柴田勝頼が出てきてビンタを志願。猪木がビンタ)
(バックステージで記者のインタビュー)
猪木「新日本という、ねぇ、もう立場に立ったら
全部の選手、あるいはこれから社運をかけるとか。
まあ今そういう、法的には取締とか
そういうことじゃない。
やっぱり全体の選手をまとめていく役割として、
(蝶野は)立ってる位置が違うから。
自分の立場じゃなくて、みんな今1人1人の
個性がどうあるか。
彼らのどういう、ね?今もう今こういう合ったものを
引き出してあげて、聞き役になるというかな」
記者「やっぱり蝶野が一番広く選手を
見られるというか、そういう器量があるという
感じがしたわけですか」
猪木「今んとこはね。まああの、だから。
そういう意味では、ヤツはやるでしょう。
力があるから。超能(蝶野)力」
(猪木満面のドヤ顔。記者は苦笑)
以上書き起こしになります。
次回、この猪木問答の正解は何だったのか。
真面目に解釈してみたいと思います。