これはもう、涙が出そうになりました。こんだけ売れる理由もわかる、と確信しました。鶴田先生の作品は、おそらく全国どこでもよく動くこととは思うのですが、この作品はその初動が半端なく力強かったので、フェアでも展開しております。2008年5月、ごく最近の作品ですが、僕はこれから色んな人に、この作品を紹介していきたいなと思いました。



これは僕個人の考え方ですが、書店人として一番大事なのは、「その作品を知る」ことより、「その作品を売る」ことだと思います。僕は評論家ではないですし、慈善団体でもないですので。れっきとした商人ですので。当然、知っていればますます売れる、というのも納得がいきますが、実はこの考え方だと、販売員はときに知っているものだけを売るようになり、知らないものは蔑ろになる、というケースが発生する気も致します。嗜好を強化するのは結構ですが、行き過ぎるのも問題な部分はあります。これは、色んなことに当てはまりますよね。



それで、何が言いたいかというと、鶴田先生ほどになると、その作品がどういうものか知らなくても、間違いなく売れてくれるわけなのです。だから、今まで一度も読んだことなくて・・・ごめんなさいと言いたいです。本当に素敵な絵を描かれる方だなと思いました。登場する女性の、喜んだ表情より、むしろ困った表情に惚れ惚れしました。美しすぎます。



フェリーの上で起きた、たった半日の出会い。そしてその後の物語。SFというのが、どうも昔から好きじゃなかった。読まず嫌いとはこのことかもしれない。こういうのをSFというのなら、僕はSFに、本当に惹かれました。








書き下ろしのカラーページも満載です。綺麗ですよ。ではさっそく、鶴田先生の他の作品も読んでみようか・・・と思いたいところですが、残念ながら、殆どの作品が出版社切状態なのです。今日現在、グランデには講談社の「Foget-me-not」が1冊残ってますよ。たまーに、入ってくるのです。



舞台がフェリーというのも印象的ですね。フェリーは何度も乗ったことがありますが、大型のは新潟から佐渡島に渡るのに乗ったことがあります。カモメやウミネコが、フェリーと同じスピードで上を飛んでいて、デッキから見上げるその風景は、とても心休まるものでした。