アイルランドでの
予定帝王切開の出産当日が
どのようなものだったかを
淡々と書いてみようと思う。

病院によるだろうが、出産当日は
朝8時までにキルケニーの病院に
来るように言われていた。

数日シャワーを浴びることが出来ない
想定で、早起きして朝にシャワーを浴び、
簡単な朝食を義実家で食べるように
子供達に持たせたり、慌ただしく用意を
して出発した。

先着順で手術の順番が決まるのか、
医者の気まぐれか等、どうでもいい
会話を待ち時間のうちにしていたが、
私は2番手になり、結局3時間強
待たされた。

この時点で空腹で、術後6時間は
何も食べられないと知り、
大いにショックを受けた。
その手の記憶は過去2回経験していても
見事に忘れている。
日本ではどうだったか全く覚えていない。

前回7月にこの病院に一泊だけ
入院した事があったのだが、
昼ごはんが1番豪華で、
朝晩はかなり軽かった。
見越しておにぎりやドーナツなどを
持ち込んでいたが、
夜まで食べられないとは。

さておき、出産という奇跡の瞬間を
夫婦で分かち合う家族が多いのだろう。
夫の友人も、へその緒を切る手伝いを
した等言っており、また、看護師の
説明でも自然な流れで手術中の
夫の立ち位置についての説明が始まった。
私は彼の立会いを希望しなかった。
夫も私の意思を尊重するスタンス
だった為、その旨を伝えると、
皆やや驚きつつも、勿論自由なので
そうなのか、で話は終わった。

いざベッドに横になりながら手術室に
運ばれると、ようやく実感が湧いてきた。
メガネもかけたままでよく、
全てがクリアに見える事にも逆に
違和感があり、色々新鮮だった。
日本では外された筈だ。

1人目の方の手術と同じメンバーが
私にも帝王切開を施すらしい。
日本語の名前の発音が難しいらしく、
皆に正しい発音はどうするのかと聞かれた。
また、ベテランの看護師が私の側に座り、
『旦那さんの代わりになるわね』
と、終始話相手になってくれた。

娘さんが日本語教師で過去に東京に
言ったことがある等々の話で
気を紛らわせてくれつつ、
今どんな段階の手術中なのかも
随時報告してくれた。
なんだか少し温かい気持ちになった。

帝王切開、日本でもこちらでも、
下半身が痺れたような麻酔をされ、
痛みはないが押されたり引っ張られたり
する感覚はあり、
また気持ち悪くなったりもする。
意識もあるので会話等もできるし、
上半身は動く。

1人目の時は、胃のあたりを執拗に
押され、吐きたい気分になった事を
覚えている。手術前に看護師に、
『今日は副院長の執刀ですよ、
ラッキーですね』と言われた事を
覚えている。ベテランだと言う意味
だろうが、副院長がどんなものかも
特に知らないので、言うほど
ありがたいとも思えない。
しかも別な経験不足と思われる
若手の医師を助手にし、
その彼に解説しながらの執刀であったので、
まんま実験台になった気分にさせられた。

2人目の時は、麻酔医の女と執刀医が
仕事が終わった後の予定について
話し続けていた。
まぁ彼らにとっては手を動かしていれば
仕事をしている事になるので
どうでもいいだろうが、
なんというか、シラけた。

その麻酔医が、サバサバした
キャリアウーマン風で、
質問の仕方がいちいち気に障った。
端的に一言で返す事がイケてる風
なのだが、麻酔する前の大事な場面で
彼女の趣向に付き合う意味はない。
この女と初めて会うのに、
同僚へのいつものクールな自分を
演出する為だろうひとコマに
される事にも腹立たしかった。

しかも仕事ができる風なくせに、
麻酔は一発で効かなかった。
麻酔がなかなか効かなかったので
何度か打たれたのだが、
手術中はほぼ感覚がなくなった点は
結果良かった。
ただ麻酔を背中に打たれる事は
結構痛いので、未だその小賢しい女が
無駄に記憶に残っている。

3人目にしてやっと温かな気持ちに
させられた。
産まれた後は医師が残りの施術を
している間、看護師達は片付けを開始。
人間なので、普通に昼ごはんの話
とかになっていたが、
窓がある手術室で、珍しく晴天
だったので、明るい雰囲気でもあった。

ただ今回は手術中の感覚が今までで
1番あり、それは割と嫌なものであった。
それも夫代わりの看護師に聞いたところ、
血圧が高いと感覚が少なくなる、と
言っていた。
そんな理由もあるそうだ。

冷たいスプレーを腕に吹きかけられ、
腕と同様に下半身にもその感覚が
戻るまでは一般病棟には戻らず、
看護師が随時世話を
するような場所にいた。
多分1時間くらいだろうか。

手術中まずは羊水を出すらしいのだが、
一気に色々取られたせいか、
急激に口の中と唇が乾燥した事が
印象的だった。

部屋に戻されてからもまだ麻酔が
きれない為、一切動けない。
なので看護師が色々世話をしてくれる。
それは日本でも同じだった。

麻酔がいいのか痛み止めが効くのか、
日本の時と比べ、術後の痛みが
少なく感じた。
そして椅子に座るよう動けと指導
されるのかとも思っていたが、
流石に意思を尊重された。
座りたいなら手伝うし、
座りたくないならそのままでいいよ、と。
小さな事に随分ビビっていたなと
気づかされた。

そして、産後6時間はもはや
空腹を通り越し、別に食べなくてもいい
状態になっていた。
しかし一応チキンサンドイッチと
希望をだしていたのだが、
助産師が『彼女にはトーストと紅茶ね』
と勝手にメニューを変えた。
どうも前日から断食していたので、
食事のスタートは軽いものから
始めた方がいいとの事だった。
お粥がトーストになったわけだ。

術後からふとした瞬間があれば
一気に寝落ちするくらいに
強烈な睡魔が何度もあり、
人に連絡する余裕などなかった。

そんな感じで当日は終わった。