お花組『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』キャスト別感想の続き…の前に、『ハンナのお花屋さん』と『A Fairy Tale』の関連性について、少し。

植田景子先生が花組のために書かれたオリジナル脚本『ハンナのお花屋さん』でも、若く美しいまま早逝した母親が登場します。

『ハンナのお花屋さん』では主演男役(明日海りお)の母親でしたが、こちらでは主演娘役(華優希)の母親。
ハンナと本作『A Fairy Tale』は対を成しているように感じます。

ハンナは「現代のおとぎ話」で人魚姫をモチーフに用いたり、フェアトレードや地雷などの社会問題も取り入れていました。

『A Fairy Tale』はストレートにおとぎ話。
合理主義や資本主義といった社会の仕組みに対する疑問。
働き方改革が声高に叫ばれている中でタイムリーとも言えますが、二幕物でがっつり取り組みたいテーマなんだろうな…と景子先生の胸の内を勝手に想像しています。

ハンナにしろ、A Fairy Tale にしろ、魅力的な母親が登場します。
彼女達は若くして亡くなり、主人公やヒロインの記憶の中で輝きを放ち続ける存在。
象徴であり、道しるべであり、慰めであり、理想的な人間像であったり…。

ハーヴィー(柚香光)とニック叔父(水美舞斗)の関係も、『ハンナ』のクリス(明日海りお)とハンナ(舞空瞳)に呼応しているように感じます。

同時に、クリス(明日海)から、作品を超えてハーヴィー(柚香)へバトンが託されたようにも…。

双方とも、孤独を抱えた少年・少女の魂が、思い出と現実の両側で救済される物語であるからです。
がんばって大人になったからね。
だからこその「大人のおとぎ話」なんですね。


★水美舞斗(95期・研11)

シャーロット(華優希)の実家の庭師・ニック。
草花や樹木の声が聴こえる(くらい植物を愛し、慈しんでいる)
シャーロットの母・フローレンス(城妃美伶)に秘かに想いを寄せていました。
フローレンスの早逝後、庭園は売却され、ニックも解雇。
施設にいた孤児の甥・ハーヴィー(柚香光)を引き取り、植物愛を伝授。
フローレンスからニックへ遺贈された絵が、シャーロット探索の鍵となります。

ハーヴィーに大きな影響を与えたニック叔父。
…ですが、物語でニックとハーヴィーが出会う事はありません。

回想シーンで、ニックが幼いハーヴィーに語りかけるものの、それはニックの一人芝居。
腰をかがめ、小さい子に目線を合わせて頭をなで、語りかけるマイムを行うんですね。
その時のニックのまなざし、表情、伸ばした手、かがめた腰…それら全てから、慈愛が溢れてくるようでした。

愛情にあふれた、頼もしい保護者。
幼いハーヴィーはどれほど心強く、嬉しかったことか。
どれほど孤独な少年を癒し、大きな影響を与えたことか。 

ニックを演じるマイティから、黄金の光(by 『MESSIAH』)が射してくるようでした。
庭師という身分もあり、ニックは控えめです。
シャーロットやフローレンスとの絡みも、ごくわずか。

それでも、大きな存在感と愛を感じます。
ニックの優しさ・誠実さが伝わってきます。
水美舞斗の繊細な表現力が生かされた、素敵な役です。


★城妃美伶(97期・研9)

シャーロット(華優希)の生母・フローレンス。
その名が示すように、花をこよなく愛する優しい貴婦人。
(フローレンスはイタリア語でフィレンツェ、花の都という意味)

新人公演・外箱公演などで数多のヒロイン経験を積んできた城妃美伶。
彼女が演じるフローレンスは母親は母親でも、マドンナとして描かれています。

シャーロットにとっては聖母、ニックにとっては憧れの人。
身近だけど、見上げるような存在。

のどかで穏やかな「幸福」「古き佳き時代」の象徴でもあるのかな。
登場場面は少ないながら、まるでもう一人のヒロインのような存在。
華やかな美伶ちゃんの為のお役ですね。


★乙羽映見(96期・研10)

Mysterious Lady  ……その正体は?!
『オズの魔法使い』の南の魔女・グリンダみたいな謎の貴婦人。
あるいは、『銀河鉄道999』のメーテルのような。

植田景子先生、退団する生徒に素敵な役を振って下さいますね。
本作で、映見ちゃんは歌姫ポジション。
オープニングからラストシーンまで、美しい声を響かせてくれます。

背がすらりと高く大人びた娘役さんなので、Mysterious Lady の役柄にピタリとはまっています。


★芽吹幸奈(90期・研16)

シャーロットの養育係、メアリー・アン。
シャーロットの嫁ぎ先でも仕えてくれる、サリバン先生のような人。※
時に厳しく、常に優しく、幼少期からシャーロットの側にいてくれました。

くみさんの落ち着いた風情と声は、頼りになる先生にピッタリ。
温かな人柄を感じさせる空気感は、職務を超えてシャーロットを慈しんだであろう事を感じさせます。

芝居では歌う場面は少ないけれど、ショーではエトワールを務めます。
強力な歌の支えとなってくれたでしょうに、退団が惜しまれます…。

※)アニー・サリバンは、ヘレン・ケラーの家庭教師。
サリバン先生はヘレンに尽くしました。

追記)独身だと思ってましたが、年下の男性と結婚歴があるんですね。
教えて下さり、ありがとうございます。

▽キャスト別感想はまだ続きますよ…。
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