月組『ON THE TOWN』を観てきましたが、予想より面白かったです。

今日2019年7月29日(月)明日海りお&華優希コンビ、観劇されたそうですね。
毎日劇場通いしてる某たま嫁から報告が。
可愛いカップルぶりだったでしょうなぁ。
見たかった……!!

それでは、個別感想へGo!

★甲斐正人氏とオーケストラ

梅田芸術劇場は年季の入った劇場という事もあり、音響設備がかなりお粗末です。
近年の優良音響ホール(中之島フェスティバルホール、兵庫藝術文化ホール等)に比べたら、雲泥の差。
さらに機械トラブルも頻発し、席によっては舞台が見切れる、トホホ要素満載の劇場です。

…が、そういったマイナス要素をものともしない素晴らしい生演奏を聴かせて下さいます。

ミュージカルにとって音楽は大きな要素だと、改めて教えて下さいました。
『ファントム』『20世紀号に乗って』も音楽の力ってスゴイな…と思いましたが、『ON THE TOWN』でも。

終演後、追い出し演奏をして下さいますが、これがまた華やか。
最後の最後まで楽しませて下さいます。
甲斐先生と奏者の皆様に拍手!!


★潤色・演出:野口幸作

野口先生はニューヨークとミュージカルが大好きなのだそうです。

プログラムに、野口先生のN.Y.レポートが載っています。
ほとんどが風景ですが、正装の野口先生のショットも。
なんと2014年トニー賞授賞式をご覧になられたそう。

本気の凝り性、インテリジェンスなオタクなんですね。(褒めてます)
推理作家・綾辻行人氏が「知的な人間はすべからくオタク」と仰ってましたが、その言葉を裏付けています。

なぜ『ON THE TOWN』を選ばれたんだろう?…と思っていましたが、観てみて納得。

いろんな萌えや味わいが詰まっているし、宝塚やジャニーズでの上演に向いていると思いました。

一応、メインの主人公はいるものの、カラーの違う3人の海軍水兵が、これまたタイプの違う女性と出会い、恋をする。
キャラクターや組合せを楽しむ面が大きい宝塚やジャニーズとの親和性は高いでしょう。

また、「24時間の上陸許可」や「戦時下の海軍」など、タイトな縛りがある中での出会いと別れ。
多くのタカラジェンヌもまた、限られた時間の中で咲く花です。

N.Y.と舞台芸術、そして宝塚を愛して止まない野口先生の愛と情熱がぎゅぎゅっと濃縮還元された舞台です。

海外作品の潤色といえば、小池修一郎先生の得意分野ですが、野口先生はその分野で頭角をあらわしそう。
いえ、すでに頭角をあらわしていらっしゃいますね。


★珠城りょう(94期・研12)
主演:ゲイビー(海軍水兵)

たま様、やっと研12なんですね。
早くからトップに立たれ、組を牽引して来られたたま様。
いつもは「若いのに風格あるな~」と思って観てますが、今回はちょっと…いや、かなり違うかも。

鳳月杏(オジー)、暁千星(チップ)と三人でつるむ姿がとってもナチュラル。
わちゃわちゃ楽しそうだし、仲間の絆が空気感で伝わってきます。
芝居なんだけど、三人の間に漂う空気はリアリティがあります。

三人とも同じ衣装で、むしろキャラはオジー鳳月やチップ暁の方が濃い。
それでも、「あ、この人が主演なんだな」と わかる存在感。

たま様は大階段の男役群舞でも、他の組子と同じ衣装であるケースが多い。
それでも、「この人が真ん中だわ」と感じさせる真ん中感があるんだな。
様々なポジションがある中で、センターが似合う人なんでしょうね。

舞台挨拶や対談などから伝わってくる人柄は、穏やかでマジメ。
自己を押し出すより、他の人を立てるタイプのように見えます。
本人はもしかしたら、人のサポートに回る方が向いていると思っているかもしれませんね。

実際、たま様は組んだ相手役を引き立てるマジックを持つ男役さん。
体格の良さもさることながら、相手への思いやりが滲み出るのかもしれません。

美園さくら(アイヴィ)とのコンビも馴染みまくっています。
体格差がちょうど一回り差で、顔の輪郭が似ていて、タイプは正反対(たま犬とさく猫)
良い感じにバランスのとれた二人。

芝居・ダンスの相性も良く、歌声も調和してます。
さくらちゃんがどんどん可愛くなっていくし。
愛されると女の子は生き生きするし、綺麗になるのね。

6月のミス・サブウェイに選ばれたアイヴィ(美園さくら)のポスターに一目惚れし、彼女をたった一日で見つけようとする一途さ。
彼女のプロフィールを読み、それを鵜呑みにして赴いたカーネギーホールで出会える運の強さ。
最初から、一点の曇りないストレートな好意。

純白な主人公が、珠城りょうの素にしか見えないマッチングぶり…!
野口先生もプログラムで「面倒見がよく姐御肌(兄貴肌?)の珠城に、ゲイビーはぴったり」と仰ってますが、確かに。

ブロードウェイ・ミュージカルという事で、魅力的なナンバーが目白押し。
歌唱力は本人比、成長しています。
以前より音域が広がったのでしょう、声の裏返りなどはナシ。

一音一音丁寧に歌い、誤魔化さない珠城さん。
音は外さないけど、音が綺麗に伸びない時など、良くも悪くもわかりやすい。

梅芸の観客は『ON THE TOWN』の劇中歌を初めて聴く人が多いはず。
それでも適当に流したり、ごまかしたりしないんですね。
誠実な人柄が、そんなところにも滲み出ていました。

デュエットダンスでは、さくらちゃんを片手でリフトし、くるくる回ります。
えーーーーっっっ!!
さりげなく凄すぎるだろーーーー?!

シエスタ「ねぇ、野口先生も振付師さんも、たま様が女性だって忘れてない?」

たま嫁「…え? そうでしたっけ?」(←わざとトボける)

…うん、みんな忘れてるね?
珠城さん家のりょう君の本名は「フロル」っていうんだ。
音楽学校入学時は女子だったけど、宝塚歌劇団に入ってから男になったみたい。
成人する時点で性別を選べる種族だから…って、萩尾望都先生の傑作マンガ『11人いる!』を読んだ人にしか通じないネタですね、ごめんなさい。

でもま、片手であんな安定感があるリフトが出来る男役は、そうそういません。

これはもう、たま様で『エールの残照』を再演してはどうだろうか…?
ちゃぴが相手役では、珠城さんでも流石にキツイ…と思いましたが、さくらちゃんなら出来なくなさそうな気もしてきました。
…いや、でも、負担が重過ぎるかな、やはり。

またひとつ、珠城さんの大きさを感じた作品であり、お役でした。

追加。
男役群舞で、次々と月組男子達が珠城さんに絡むのね。
珠城さんが振り払っても、なぎ倒しても、絡みついてくるのね。
たいそう艶っぽくて、ドキドキしました。


★鳳月杏(92期・研14)
オジー(筋肉バカの海軍水兵)

ちなつさん(鳳月)が月組の舞台に復帰。
戻ってきて~~~!!(涙)

…と思ったのも束の間、まずオープニングの群舞で、オジー鳳月の端正な色香あふれるダンスにやられました。

無駄な動きがなく、しなやかでセクシーなダンス。
ちゃんと周りに合わせているのに、目を惹く華やぎと溢れる色香。

ちなつさんは、同じ板に立つ主役を立てる役者さん。
その緻密で心あるサポート力ゆえに、どんどん輝きを増してこられました。

明日海りおの談話(2019/04/28 花組『CASANOVA』大千秋楽にて)
「(鳳月を)知らない子もいると思いますが、月組の気心の知れたところへ帰って、絶対力を発揮できると思う。月組の人には『すごくいいスターになっただろ!』と自信を持ってお返しできます」

いまや、共演者を輝かせつつ、誰より己も輝くスターへと成長を遂げられたちなつさん。
『ON THE TOWN』でも、チームにしっくり馴染みつつ、驚くほど魅力を放出していました。

花組で学んだ「キザり」、磨き込んだ「ダンディズム」、培った「アピール力」
どれも遺憾なく発揮していました。

ちなつさん、本当に色気がすごい。
オジーと恋に落ちるクレア(夢奈瑠音/海乃美月)が羨ましい。

フィナーレでは、トップさんの手前でソロ歌唱と男役を引き連れての群舞。
階段に浮かぶシルエットがすでにカッコイイ、海賊王ちなつさん。
二番手格での堂々たる月組再デビュー。

花組時代も充分素敵でしたが、一段と艶を増したちなつさん。
多くの観客を虜にしたことでしょう。

そうそう、オジー鳳月がゲイビー珠城に「美園アイヴィに会えたら、ハッタリを効かせろ」と自己紹介ポーズを伝授します。
ここは毎回アドリブなんですよ。

たま嫁と「明日海さんかいらしたら、花組ポーズして下さるかな♡」と話してたんですね。

もちろん、ちなつさんがたま様に伝授し、ありちゃんも含めて決めたポーズは、花組!最高!ポーズだったそうな♡

▽個別感想はまだまだ続きます。
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