少し前のことですが、『かげきしょうじょ!!』(斉木久美子/白泉社メロディ連載中)のコミックスをまとめ買いしました。
 
今までは雑誌をたまに購入して読んでいましたが、前々から気にはなっていたので。
 
たまの拾い読みでも結構おもしろかったけど、じっくり読むと更に良いですね。
 
ただ、『かげきしょうじょ!!』を1巻から読んでも、意味不明な部分もあります。
 
それは、『かげきしょうじょ!』時代の話が入ってないから。
 
『かげきしょうじょ!』は、ジャンプ改(集英社)で連載スタート。
そう、青年誌に掲載されてたんです。
 
それもあって最初は、ツンツン美少女キャラ・奈良田愛にスポットが当たっていました。
 
クール&ドライで男嫌いの奈良田愛は、AKB48がモデルであろう国民的アイドルグループJPX48所属のアイドル設定。
 
愛の母親は女優で、恋多き女。
仕事やアバンチュールで不在がち。
 
愛からすれば「よそのオッサン」が出入りする『家』は安全地帯ではなく、常に緊張を強いられる場の一つでした。
 
彼女が出会うのが、海賊王ならぬ「オスカル様に、私はなる!」と宣言しまくってる天然キャラ・渡辺さらさ。
178㎝の高身長を誇る、天真爛漫な少女です。
 
奈良っち(←愛の愛称)とさらさは、神戸の紅華歌劇団の養成所……すなわち、音楽学校で出会います。
(正確には入学前だけど、音楽学校での出会いではあります)
 
紅華には、愛を溺愛する叔父(バレエ講師)もいます。
奈良っちは、ようやく安全地帯に辿り着いたのね…(ホロリ)
 
入学前~入学当初までのエピソードは『かげきしょうじょ!シーズン・ゼロ』として白泉社から発売されています。
 
それを読むと、さらに理解が深まりますが、仮に端折っても、『かげきしょうじょ!!』は楽しめます。
 
宝塚歌劇団や、各種マンガやゲームなどのオタク知識があると、さらに楽しめます。
知らなくても大丈夫ですけどね。
 
基本は、渡辺さらさと奈良田愛を軸にした、紅華歌劇団の音楽学校を舞台にした群像劇。
 
長編連載作品としての大きな流れと並行して、各キャラクターがメインの短~中編作品が挿入されます。
これがまた、いちいち胸に迫る話でして。
 
例えば、いまや歌劇団のトップ男役に登り詰めた里美星(さとみ・せい)の、音楽学校時代の挫折。
 
計算高くてイジワルな美少女本科生・野島聖(のじま・ひじり)が、紅華入学前に味わっていた生きづらさ。
 
双子の予科生・千夏と千秋、それぞれの自我の芽生え。
 
祖母・母に次ぎ、母娘三代にわたって紅華に入学・入団する恵の憧れと葛藤。
 
…などなど、様々に描かれる物語。
紅華乙女でなくても、共感できるキャラやエピソードが見つかると思います。
 
今のところ、読んでいて思わず心の中で握手した筆頭が、里美星でしょうか。
 
可愛いものが大好きで、自分も可愛く生まれたかったのに、期せずして背が伸びすぎて……とか。せせせ、せつない…。
 
私はロザリー視点で、オスカル様を見上げていたかった。
麻乃佳世様みたいになりたかった。
(佳世ちゃんはディアンヌ役でしたが)
 
「オスカル様より大きなロザリーはいない」
…と同級生に言われた一言は、今となっては懐かしい思い出です。
 
……でも、仮に小柄だとしても、ロザリーや麻乃佳世様みたいな美少女ではなかったし、私の場合。
どう転んでも、アウトだったには変わりない。
 
本編では、乗車した新幹線に偶然乗り合わせた里美星が、奈良っちを前にして「可愛いなぁ、可愛いなぁ、こんな顔に生まれたかったなぁ」とメロメロに。
 
そんな星は……星が望む可愛さとは別モノでしょうけど……可愛いと思います。
 
気持ちがわかるといえば、本科生の野島聖もそう。
 
聖は、ヒロイン・さらさの分担さん(という言い方は、紅華ではしないようですが)…じゃなくて、奈良っちの分担さんですね!

コメントで教えて下さり、ありがとうございました。
聖が厳しくさらさの掃除チェックをしてる姿が刷り込まれていたもので、うっかりしてました。
 
聖は何故かさらさを嫌っていて、底意地の悪いことをなさいます…じゃなくて、厳しく指導しています。
 
聖は紅華に入るまで、学校といったコミュニティに馴染めずにいました。
好きなものを好きといえず、本音でつきあえる友達はおらず、常に肚の探り合い。
 
その鬱積もあって、可愛い女性アイドル(JPX48)のファン活動にのめり込みます。

そこで出会った「心は乙女男子」は、深い友情を育みあえる友達。
 
軋轢の中で、アイドルや紅華歌劇団といった『夢の世界』を支えに生きる聖。
 
「普通の世界に生きる人々」に心を切り裂かれる聖。

大切な親友(乙女男子)もまた『当たり前』や『普通』の壁に苦しみ、傷つきます。

聖はついに「夢を現実」にして、現実(=夢の世界)を生きていく決心を固めます。
 
肚の探り合い
二枚舌
口先と心の中は別

……そんなの、もうまっぴら!
 
「本当の好きって何? 私の好きは、好きしかない」
 
…だったかな?
そんな捨て台詞を言い放ち、

「どう思われても構わない。来年の今頃、私はもうここにはいないのだから」
 
…って、一発合格する気満々ですか!
いいぞ、いいぞ!!
 
…というような話を読み、それまで単なるイジワルキャラだと思っていた聖への見方が一変。
 
里美星に並び、共感できるキャラクターに躍り出ました、野島聖。
 
野島聖が渡辺さらさを苦手なのは、その天真爛漫さがどこか羨ましくて、イライラするんだろうなぁ…。
 
ちなみに私も「普通」とは縁遠く生きてきたクチです。

どんだけ言われて来たよ、「変わってる」と。

…ただ、私は「変わってる」と言われても、「私にとっては、これが普通だからなぁ」
 
オタク気質も隠さず、そういうところを面白がってくれる人と交流してきました。
 
…なので、オタをひた隠しにして、「普通」であろうと努めた苦労は……あったかな?

隠そうとしても、すぐバレてたから、ハハハ。
 
普通って何なんでしょうね?
 
そうだなぁ……おそらく「その時代の多数派、最大公約数」を指すのかな。
 
好きなものは好き。
楽しければ楽しいほど、人生はあっという間。
 
約18〜19年前(つまり、2000年の中程)、京大ミステリ研出身の推理小説家・綾辻行人氏は、日本経済新聞のコラムで、こんな事かいていらっしゃいました。
 
「知的でなければオタクにはなれないし、オタクは総じて知的である」
 
何かに没頭したり、凝ったり、掘り下げたりする気質を「オタク」と、綾辻氏は定義されているのでしょう。
 
言い換えれば、「探究心」
(綾辻さん的には、おそらく「知的探究心」

何かに夢中になり、深く掘り下げ、愛と情熱を注ぐ。
人生が、より深まりそうですね。
 
『かげきしょうじょ!!』は、宝塚歌劇が好きな人、少女漫画が好きな人、生きづらさを感じている人にお薦めしたい作品です。
 
 
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