花組『MESSIAH』新人公演と本公演、そのキャスト陣の化学反応について、ちょろっと語ります。

雪組『凱旋門』も、クオリティの高さに驚いた新人公演でした。
キャスト陣の魅力、上田久美子先生の演出など、「もう一つの本公演」のような新人公演でした。

そして、花組『MESSIAH』……こちらもまた、素晴らしい新人公演でした。
観終わって、しばらく動けないほどに。

『MESSIAH』という作品が持つパワーもさることながら、新人公演メンバーの気迫が凄まじかった。

天草四郎という確固たる主役がいながら、同時に群像劇でもありました。

四郎役の聖乃あすかはじめ、すべての登場人物の覚悟とパワーが劇場全体に溢れてたなぁ。

開演してまもなく、リノ(一之瀬航季)が銀橋を歌いながら歩む場があります。

聖母マリアと流雨を重ね、繊細なメロディを紡ぐ一之瀬リノ。
ここで、グッと来ちゃいました、いきなり。

一之瀬くんは決して歌ウマではないけれど、豊かな声量と美しく響く声をもっています。
温かい雰囲気と、男役として不可欠な包容力も備えています。

嬉しそうに、愛おしそうに、聖母マリアを讃えながら、歌いきる姿に、なぜかウルウル…。
あれは不思議。

でも、あそこでウルッと来た人はかなりいそうな予感。
観劇中、石像と化す私が、ウルウル来るくらいですから…。 

あ、心の中では楽しんだり、哀しんでますよ?
ただ、見た目は石像。
前世はきっと、モアイ像。

明日海さんも、一之瀬くんの銀橋を渡る姿に感動されたそうです。
一之瀬くんの成長に感慨をおぼえての事だったようです…が、豊かな表現力にも驚かれたに相違ありません。

一之瀬航季は今、怪我で休演中の亜蓮冬馬の代役として、多聞丸(四郎の海賊仲間)を演じています。
これがまた、とっても良い味を出していて。

代役になった当初は、夜叉王丸(明日海りお)に胸を叩かれるたび、嬉しさを押し殺してて、そこも可愛くてツボでした。

(明日海さんが大好きなのね、はなこちゃん)

今は、ちゃんと「ちょ、何すんだよ」的な表情を見せております。
この時の表情が、男の子で可愛い。
きっと、夜叉王丸とは悪ガキ時代からの付き合いなんだろうなぁ。

一之瀬くんは、鳳真由さんを彷彿とさせるところが、ちょこっとある気がします。
人間的な温かさ、丸みが醸し出されてて。

これから、要注目の生徒さんの一人ですね。
私の周囲では、以前から「一之瀬くん推し」が結構いるのに、すっかり出遅れてます。

本日2018年8月18日の公式ニュースで、亜蓮冬馬が引き続き、東京公演も休演する旨、発表がありました。

亜蓮くんは、若手有望株の一人。
将来を見据え、じっくり療養する選択は必ずプラスに働くと思います。

先に2番手さんについて語りましたが、主役もインパクトありました。

天草四郎(明日海りお)を新公で演じた聖乃あすか(100期・研5)

聖乃あすかは、最終決戦の気迫のみなぎり方が半端なかった。
これが、いつもほんわかアルカイック・スマイルを浮かべている、ほのかちゃんなの?!

先日、キャトルで花組新公写真を見て、本公演の四郎さんと見比べて、気づいたんですが。

演技力はもちろんですが、メイク効果も見逃せない事に気づきました。

明日海さんの四郎は、夜叉王丸の時と、四郎ではメイクが変わってますよね。
特にアイメイク。

海乱鬼の夜叉王丸は、歌舞伎の隈取みたいな、目をきつく強調するメイクを施しています。

ところが、四郎さんになってからは、目が優しくなっている。
ふだんの明日海メイクなんですよね。

聖乃あすかは、夜叉王丸も、四郎も、メイクはそのまま。
アイラインが強調され、強い目ヂカラを発揮していました。

ほのかちゃんは菩薩のように優しげな目をしてるから、隈取アイラインを残しておいて良かったかも。

最終決戦では、鬼気迫る迫力が倍増。
まさに夜叉のごとし。

加えて、新人公演は良くも悪くも一発勝負。

この一回にすべてを賭ける!…という意気込みで臨んでいますよね。

だから、体力配分など、MAXで挑むと思います。

雪組『るろうに剣心』新人公演で、永久輝せあが演じた剣心は、銀橋をマッハのスピードで駆け抜けました。
本役の早霧せいなの瞬発力やスピードも凄かったけれど、それを凌いでいたように感じました。

でも、早霧さんはじめ本役は、本拠地と東京で併せて100回近い公演回数を、すべて同じクオリティで観客にお見せしなければなりません。
体力やペースの配分は重要。

しかも、当時の雪組はインフルエンザの嵐に見舞われていました。
主役が倒れる訳にはいかない。
その為にも、がむしゃらに全力を出し切る訳にはいかない。

そういったプロ意識は、雪組に限らず、すべての組の本役キャストは持っている事でしょう。

新人公演後の本公演は、より熱い舞台になっていました。
もともと高いクオリティが更に底上げされたような。

熱量のみならず、細やかな表情や動きも一段とレベルアップしています。

特に変化が大きかった登場人物は、リノ(柚香光)でしょう。

開演直後に山田祐庵(柚香光)が、4代将軍・家綱公(聖乃あすか)に招聘され、江戸城に上がった際。
肩をすぼめ、重い足取りの祐庵。

罪悪感が、彼を蝕んでいる様子が伝わってきます。

他にも、一之瀬リノが夢見るように聖母マリアを歌った銀橋で、柚香リノは切々と聖母を求めます。

一之瀬リノとは全く異なるアプローチ。

温かく包み込むように歌い上げた、一之瀬リノ。

柚香リノは救いを求め、すがるような瞳で歌うのね。

解釈が大幅に違ってて、そこが好き。
どちらのリノも魅力的です。

そして、松倉勝家の圧政を目の当たりにし、「神はなぜ救って下さらぬ…!」と慟哭し、花道を去るところ。

ライトが消えて暗がりになり、舞台では他の場に移行。
それでも、花道を袖に向かって歩く足取りは変えず。
かろうじて己を支える、重い足取り。

暗がりでも、最後までリノとして捌けていきました。
毎回、目を凝らし、そんな柚香リノを見送っています。

伊豆守(水美舞斗)から、四郎の首を取って来いと命じられ、葛藤する柚香リノ。
四郎を罵る、リノの胸の内の苦しさが滲み出てきました。

また、地下牢で初めて、四郎に本心を打ち明けたところ。
己も四郎と共に戦い、最期まで運命を共にしたい!…と。 

この時の柚香リノの表情が、たまらないんですよ。
もう必死すぎて、切なすぎる。
どれほど四郎を助けたいか、ビシバシ伝わってきます。

最後に、家綱公(聖乃)から、歴史の真実を記録し、聖母マリア(モデル:流雨)の絵を完成させるよう命じられた祐庵(柚香)

長年の恩讐の相手・伊豆守(水美)からも、無言でうなづく事で容認されて。

四郎と流雨を思いながら、長きにわたる呪縛から解かれたように、昇華を感じさせる表情をみせる祐庵。

千秋楽が近づくにつれ、家綱公(聖乃)も、伊豆守(水美)も、祐庵(柚香)も涙を流し、静謐な白熱の場となっています。

新人公演の前後で、驚くほど演技が変化した、柚香光。
れいちゃんの本気を見せられた気がしました。

聖乃あすかの家綱公は、ノーブルな「生まれながらの将軍」
それが、更に男性的な強さ、為政者としての威厳、器の大きさを感じさせつつあります。

水美舞斗の伊豆守(松平信綱)は、将軍の右腕。
冷静な老中としての顔と、人間・松平信綱の胸の内を、精緻に演じています。

夜叉王丸と四郎を演じる明日海りおも、演技のメリハリがより強まったように感じました。

夜叉王丸として叫ぶときの、荒々しさ。
四郎として笑うときの、ほがらかさ。
誰かを心に懸けるときの、はにかみと優しさ。

そして、最終決戦の表情。

隈取のようなアイメイクこそしていませんが、並々ならぬ覚悟がみなぎっています。

優しい目元ゆえの、悲壮感がより一層強まっていて。

四郎は死を覚悟し、運命を受け容れている。
それは諦めではなく、その時その場に於ける、ベストを尽くすこと。

明日海が演じる天草四郎は、明日海自身とリンクし、深い説得力を増して来ています。

最終決戦の天草四郎は、無垢な少年のような面立ちに見えます。

登場時の荒々しさが、どんどん削られ、剥がされ、脱皮していくように、どんどん四郎の印象が変化していきます。

海乱鬼(かいらぎ)として鳴らした青年が、終盤には清らかな少年のように見える不思議。

もしかしたら、明日海が体現する四郎には、天草四郎の霊が宿っているのでしょうか。

そんな気さえしてくる、天草四郎がそこにいます。

本役を手本にして、新人公演キャストがお稽古を重ね。
本役さん達が、新人公演に揺さぶられ、刺激を受け。
新公キャストが更に、本公演から学んでいく。

そんな循環を目の当たりにした、花組公演です。

叶うなら、東京の新人公演と本公演も見届けたいなぁ。
それはさすがに難しいので、東京千秋楽ライブビューイングを待ちたいと思います。


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