※以前ピロリ菌について簡単な記事を掲載しましたが、今回はもう少しだけ掘り下げた内容をご紹介します。

                        

                

 

 

ヘリコバクターピロリ菌除菌による胃癌予防

 

 ヘリコバクターピロリ菌を除菌すると十二指腸潰瘍が8割(RR 0.20),胃潰瘍が7割(RR 0.31)防げます. 

 ここで,私たちの期待は,ピロリ菌を除菌すると胃癌が防げるか,ということです.

 ピロリ菌が胃癌の原因となっているのは,ほぼ正しい事実だと思われています.


 日本人対象のある研究(2000年発表)では,

胃癌発生率は1000人年あたり男性で5.3人,女性で1.3人,

ピロリ菌陽性だと男性群では2.59倍胃癌発生率が高くなりました.
ただし,この研究では,女性群ではピロリは胃癌リスクにはならないという結果でした.


もう一件の胃十二指腸潰瘍,胃過形成,NUD患者を対照とした日本の後ろ向き研究(2001年発表)では,

7.8年の追跡で,ピロリ菌感染がないと胃癌発生率が0%だったのに対し,ピロリ菌感染があると2.9%でした.

 

 それでは,ピロリ菌を除菌したら,胃癌の発生が本当に無くせるのでしょうか.

 


 

ピロリ菌除菌による胃癌発症予防の個別研究

 

日本の早期胃癌治療後の患者を対象として36ヶ月追跡したRCT(2008年発表)では,

胃癌の再発が除菌群で3.3%に留まった一方,対照群では8.7%と有意に減りました.

 

これは,ピロリ菌除菌が胃癌発生を防ぐことを証明した最初の臨床研究といわれているようです.

 

本研究は早期胃癌治療後の二次予防についてのものなので,

この結果をもってまだ胃癌を未発症のピロリ菌保有者で除菌をしても胃癌予防できるかという一次予防に対しても有効かどうかは分からない、という指摘もあったようです.

 

2010年6月に,厚労省はピロリ菌除菌の適応を拡大することにしました.
しかし,ここには胃癌の一次予防目的でのピロリ菌除菌は適応とされていませんでした.

 

しかし,2013年2月22日より,厚労省はピロリ菌除菌の適応をさらに拡大することにしました.

慢性胃炎に対する除菌の保険適用です.

初めて,胃癌の一次予防に対してピロリ菌除菌が保険適用となったことになります.

乱用が危惧されたせいか、内視鏡検査を行うことが条件とする対策がなされています.

 

では,慢性胃炎患者におけるピロリ菌除菌で,本当に胃癌を予防できるのでしょうか.

数多の分析研究が発表されてきましたが、いずれの研究においてもその分析方法の限界に指摘があったようです.

 

 

で、ピロリ菌除菌はどこまで妥当?

 

少なくとも現時点では,

「胃癌未発症の健常者はピロリ菌除菌によって胃癌発生を予防できるかどうか分からず,

効果があるのは1部の患者に限定される可能性があります.

ましてや,胃癌による死亡も,生命予後の延長も期待できず、

害しかない可能性すらあります.」
ただ,将来的に,ピロリ菌除菌によって胃癌発生を予防可能ということが明らかになる可能性はあります.


現時点においては,

「早期胃癌治療後の患者ではピロリ菌がいれば,再発予防のために除菌をするのは勧められますが,

健診でスクリーニングをしてピロリ菌感染者を見付けて全例で除菌したり,

慢性胃炎患者で胃癌予防目的でピロリ除菌をする,

というのは時期尚早

と、結論づける指摘もあります。

 

どうやらこの分野のお話、まだまだ色々なベールを被っていそうですね。

 

 

参考文献:南郷先生のなんごろくから引用させて頂いております。