夢か、現実か | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

夢か、現実か

睡眠時間が三時間を切っていた。


俺は慢性的な寝不足のためか、嫌な睡魔と、一日中、戦い続けなければならなかった。


そのため、


五分でも、十分でも時間があったら、眠った。




バイトから戻り、仕事へ出かけるまでの間、


髭を剃ったり、飯を食ったりする時間があった。


約四十五分。


俺はその時間を、睡眠に回した。


そうしないと、体が保たなかった。



自宅の駐車スペースへ車を入れ、俺はシートを倒す。


眠る前に、携帯のアラームをセットした。


三十分。


のこりの十五分で、飯を食い、髭を剃る。


家に上がっても、眠れはしなかった。


俺の部屋は、死ぬほど寒かったから、震えながら眠らなくてはならない。


それならば、暖房の効いた車の中なら、すぐに眠ることが出来た。




倒したシートへ体を横たえると、すぐに眠りに落ちた。


俺は夢をみた。


奇妙な夢だった。


車の中で俺は目覚めた。


それ自体が、夢なのだ。



寝る前、空は黒雲に覆われ、雨が降りそうだったが、夢の中の空は、晴天だった。


家の中から、娘の母親の気配が濃厚に、感じ取れた。


俺は落ち着けなかった。


家の中から、物音がする。


何か物をたたきつけるような音。


皿が割られる音。


娘の母親が、自分の不愉快さを俺に示す、いつものやり方だった。


嫌な予感がした。


案の定、廊下を歩く乱暴な足音が、車の中まで聞こえてくる。


玄関から見ると、俺の車の位置は、ちょうど見下ろすような格好だった。



がしゃんという音とともに、勢いよく玄関のドアが開け放たれた。



うわあ。



俺は恐怖で、うなり声を上げた。


と、同時に眼を覚ました。



??



起きていたよな?今まで?


夢から覚めた直後の俺は、夢と現実の区別が、すぐにはつかなかった。



家の方を、注視する。


静かだった。


物音も、足音も聞こえない。



俺はほっとし、車を降りると玄関へ向かった。


携帯を見やると、あれから二十分しか経っていなかった。


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