とにかく、酒が飲みたかった
考えてみれば、
若い頃、俺は酒など必要としなかった。
飲まなくても、やっていけた。
それなのに、今の俺は、どうしてこうも、酒が飲みたくなるのだろうか。
俺は酔っぱらいの、ろくでなしか?
わずかな金があれば、DVDを借りる。
本を買う。
とても、酒になど、回せる金はなかった。
というより、
バイト代からくすねた金は、底をついたのだった。
今月は、俺のバイト代を正確に把握してのことか、
見事に金をむしり取られ、二百円しか、俺の手元に残らなかった。
俺はその金でTSUTAYAへ行き、DVDを二枚借りたのだった。
いつものように帰宅する。
飯を作り、腹に詰め込む。
そこからが、苦痛だった。
何かが足りない。
疲れを癒やす、何か。
そう。
酒が足りないのだ。
俺は思いあまって、キッチンに置かれていた、
調理酒を引っ張り出し、コップに一杯注いだ。
ひとくち口に含むと、信じられない不味さだった。
なんだこれは?
古いのか?
二リットル入りのパックを見やると、そこにはデカデカと、合成清酒と書かれていた。
しかし、アルコールを含む飲み物は、この家の中で、それだけだった。
俺は仕方なく、ちびちびと、合成清酒をなめた。
驚いたことに、不味さにはすぐになれてしまった。
一杯を、あっという間に飲み干した。
ほんの少しも、酔えなかった。
俺は布団に潜り込み、考えていた。
いつになったら、まともに晩酌を楽しめるようになるのだろうか?
このままだと、俺は死ぬまで、奴隷のままだ。
考えはそこで凝固し、俺は眠りに落ちていた。
熟睡など出来はしない。
俺はその晩、またもや猫の夢を観た。