結局は、俺の負けだ
部屋の中に投げ込まれた鍋から、嫌な臭いがした。
あまりの悪臭に、吐き気がした。
蓋を開けると、そこには腐海の森が広がっていた。(意味がわからない人は、風の谷のナウシカを参照のこと)
鍋を、窓の外へ投げ捨ててやろうか。
そう思ったが、出来はしなかった。
この鍋で、父は生前、様々な料理を俺のために作ってくれたのだ。
そして、母も。
俺は、意地でも鍋など洗いたくはなかったが、
この状態では、今夜、眠ることなど出来そうになかった。
俺はキッチンへ鍋を持って行き、洗った。
それは、俺の敗北を意味していた。
俺の脳味噌は、ドーパミンで満たされ、
娘の母親の脳味噌は、おそらくセロトニンで満たされるはずだ。
俺は、右側頭葉に微かな痛みを感じた。
早くも、ドーパミンが分泌されたのか。
いや、
元々、俺の脳味噌は年がら年中、ドーパミン漬けなのだ。
快感物質が、脳味噌の中に分泌されたことなど、皆無だ。
こうしてストレス物質が溜まり、最後には、脳の中に腫瘍が形成されるのかも知れない。
疲れが溜まっていた。
酒が飲みたかった。
アルコールで脳を麻痺させたかった。
しかし、
酒などどこにもなかった。
俺は、唯一の安息の場所、
睡眠へ。
そう思った。
それ以外に、やれることは何もなかった。
寝るだけだ。
