「国会には『カンの顔だけは見たくない』という人が結構いる。そういう人たちには『本当に見たくないのなら、早くこの法案を通した方がいい』と言おうと思う」
菅首相は、6月14日、東日本大震災復興特別委員会で、「再生可能な自然エネルギーを増やしていくことはたいへん重要だ」と述べ、今国会中の固定価格買い取り法案の成立に意欲を示した。
菅直人首相は15日夜、国会内で行われた再生可能エネルギー促進法の早期制定を求める集会に飛び入りで参加すると、早期退陣を求める与野党議員らにこう訴え、挑発してみせた。
日本は工業立国だ。電気料金が上がれば、大企業は生産拠点を国外に移す可能性がある。大企業のように資金がなく、国外に移転できない中小企業は、工場をたたみ、廃業という道を選ぶかもしれない。
「3・11」は、日本の電力業界に転換を迫る日となった。CO2削減というテーマのもとで原発を新増設するという電力行政は修正を余儀なくされ、自然エネルギーの普及が改めて求められるようになった。
原子力、LNG、火力などと比較すると自然エネルギー利用の発電は割高となる。そこでドイツなどでは、固定価格で買い上げて電力料金に上乗せ、自然エネルギーの普及を図ってきた。ドイツの自然エネルギー比率16%という数字は、「FIT(フィード・イン・タリフ)」と呼ばれるこの制度がもたらしたものであり、日本もそれに倣った。
福島原発事故後、菅首相は、急速に自然エネルギーに傾斜、「原発容認派」の立場を捨て、自然エネルギーの普及に3兆円の売上高のなかから数%を投資すると明言した孫正義ソフトバンク社長との仲を深めていく。
孫氏は震災発生後に原発の放射能問題で揺れる福島県を訪れて住民避難を働き掛け、個人として100億円の寄付を表明するなど積極的に活動。12日に官邸で開かれた管首相らとの有識者懇談会では「原発依存度は下げざるを得ない。本業でないエネルギー問題について真剣に悩むようになった」ため、自然エネルギー普及に乗り出したと語った。
全国約10カ所に総額800億円を投じ発電能力総計200メガワットのメガソーラーを整備すると、産経新聞などが5月に報じた。国内の10電力会社が現在運営しているメガソーラーの発電能力合計は19メガワットに過ぎな。
ソフトバンクのメガソーラ参入が「再生可能エネルギー促進法」を後押しし、国内メガソーラ全能力の10倍の施設が出来た場合、促進法と規模の面で当然利益が見込めるだろう。
今までは「 固定価格買い取り制度」を報道しても、法案が審議されることはなかった。
今回、進まなかった「 固定価格買い取り制度」は紆余曲折は別にして今国会で通るのだろうか。
そのことが「ソフトバンクのメガソーラ参入」で簡単に解決するならば、なにか釈然としないものがある。