ペルル嬢(122)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant

 
——————【122】—————————
   
  Moi,  je  restais  en  face  de  lui,  
adossé   à  la  muraille,   les  mains  
appuyées  sur  ma  queue  de  billard  
inutile.

  
———————(訳)————————————
       
  私は壁にもたれたまま、両手をもう使
っていない玉突き棒に載せて、彼のほう
に向いたままだった.


 ——————⦅語句⦆————————————
     
restais:(直単過/3単)    
adossé:(p.passé) < adosser 
adosser:(他) [à, contre に]
   もたせかける、(を)背にして置く、
muraille:(f) 壁、城壁、外壁    
appuyées:(p.passé/f/pl) < appuyer
appuyer:(他) [par によって] 支える、
   [sur, contre, à に] もたせかける.
   押しつける. 
queue:(f) ❶ (動物の)尾、尻尾、❷柄、軸、
     ❸(ビリヤードの)キュー.
billard:[ビヤール](m) 玉突き、ビリヤード  
inutile:[イニュティル](形) 役に立たない、
   無用の、無駄な

     

—————≪情景描写≫———————————
  
「私は壁にもたれたまま、両手をもう使って
いない玉突き棒に載せて、彼のほうを向いた
ままだった」

たしかに本文を訳すとこうでした.しかしチ
ェックのため、翻訳本を見るとちょっと違う.
どういうことかと言いますと、シャンタル氏
は玉突き台に足をぶらぶらさせて座っている.
そしてその彼と面と向き合うなら、聞き手の
私は立っているしかありません.椅子という
言葉が出てこなかったためです.ですからこ
こは翻訳文ではこんな風になっております:

「私は壁にもたれたまま、両手をもう使って
いない玉突き棒に載せて、彼のほうに面と向
かって立ったままだった」

さらに付け加えると「両手を玉突き棒に載せ

る」ということは、その玉突き棒は、水平で

はなく、杖として立てており、両手は、その

棒のてっぺんを押さえつけていた、というこ

とになります.

 

ですから、親切な訳文はこうなります:

 

「私は壁にもたれたまま、もう使っていない

玉突き棒を杖にして、そのてっぺんを押えつ

けるようにして、彼を見据えて立っていた」