4月7日 (日) 


   【ニューオータニ、午前11時】

  きょうは、大阪市内、
  お買い物ツアーのアテンド業務です。

  お客様、仰せには、


   「 お昼は、ラーメンを食べましょう。
     夜は、ミシュラン
二つ星のお店よ。串カツがいいわぁ。」


  この、トレーシーさんの、
リクエストにお応えするため、
  ホテルのマネージャーと、
連絡を取り合います。

  

エンデ
ィさん : Oh Yamada san, We'd like to
      see the fish tackle shop first.
      あの、山田はん、わっしらは、
      先に釣り具屋に行きたいのですけど。



山田  : That'll be fine. Let's go.
      それはいいじゃないですか。
      行きましょう。



    第四ビル1階の、「1ban」 
    という釣り具店にご案内。

    エンディさん、リールをお買い求め。
    トレーシーさんも、
    よく、一緒に、釣りに出かけるのだそうです。
    トレーシーさんは、サウスポー。
    逆巻きリールをお買い上げ。

    え?

    見ていると、リール、ふたつどころじゃありません。

    6箱お買い上げ~。

    その他、ウインドブレーカー数点、グローブ数点、
    テグス・・・・お店、開けそうヨ。


    お支払い総額、27万円也。


    店員さん、全部、商品を袋詰めして、手渡します。
    ここで、ゴタ、ひとこと言ってやった。


    「 あんたなぁ、30万円近い買い物やで。これ。
         ちょっと、何か、感謝の気持ち込めて、
           サービスしたら、どないやねん。」


    「私では、わかりませんので・・・」


    「わかる人に連絡して!」


エンデ
ィさん : Yamada san, That's okay. That's okay.
      We need not extra.
      山田はん、もうええ、もうええ。
      そんなこと、ゆわんとき。


   ということで、


     「 もう、ええわ。まけとったるわ。
もう、店長呼ばんでもええ。」


   と、言ったとき、店長がおでまし。
   おみやげ、ふたつゲット。 

     (あほ、もっとよこせ。27万円の客やぞ。)  
   
       


  【大丸・そごう】


     心斎橋に移動。大丸百貨店と元そごう
     (こっちも大丸になってます)に行きました。

     さすがに、こちらのエルメスは、品切れ。
     ブラック・バーバリでお買い物。


     近くに、

「コムデ・ギャルソン」

 のお店があります。

      お立ち寄り~。


     こうも、付き添い仕事をしていると、
     段々、退屈になってくる。
     段々、どうでもええようになってくる。

     (もう、はよして、終わりなはれ)

     という気持ちにもなるし、


     (いやいや、早う終わられたら、困る。)

    ゆう気持ちもあるし、複雑諭吉、金はほしいが、
    仕事はあきた。あ~、退屈。


    世の中には 以心伝心 というものがあって、
    たとえ、言葉に発していなくとも、
    伝わる気持ちというものがある。


トレー
シーさん : Yamada san, Let's have a lunch after this.
       We'd like to eat ramen noodle.
       Do you know the good place for that ?
         
       山田はん、このあと、食事にしましょうよ。
       ラーメン食べたいのだけど、どこか知ってる?


     山田の知ってるラーメンは、「天下一品」やけど、
     これは、かなり個性の強い味なので、
     鍛錬できていない外国人には、無理かも。

     そう思って、ホテルのマネージャーに問い合わせ。


マネー
ジャー: 山田さん、そしたら、

      「一風堂」さん
  
     にお連れすれば、どうでしょう?



  ラーメンの

     「一風堂」

  これはいい考えである。決まり。


       【一風堂】

  山田、豚骨スープ味に、太麺で注文。
  その後、ご夫婦の通訳に廻る。

    「たまご」

  を別に注文。
  さらに、あれも、これも、全部別注文。

  そして、出て来たラーメンは、
  その別注文したはずの、
  具材が、全部、ラーメンの中に入っていた。

  もちろん、ゴタの注文した、素朴なラーメンには、
  てんこ盛りの具材が載っかっていた。


山田  : あのー、こんな注文
      しなかったよ。どうすんの?


店員さん: すみません。すぐに、作り直します。


    そのとき、トレーシーさんが


トレー
シーさん : That's okay.
That's okay. Okay with us.
       How about you ?
       Is that okay with that ramen for you ?
       
       いいじゃない、いいじゃない。
       私たちはこれで、いいわよ。
       山田はん、どう?いい?


山田   : Of course okay
if you are happy with it.
       もちろんいいですけど、
おたくたちがよければ。


エンデ
ィさん : Then that's okay !


   かくして、お店は、作り直しの憂き目を免れました。
   山田は、たくさんのトッピングの具を獲得しました。 
 

   心斎橋エルメスに立ち寄りましたが、そう、柳の下に、
   ドジョウはいません。
   カエルもいません。 


      「日程表では、午後は・・・・・」、


    言いかけたら、ご夫妻、


      「 Yamada san,
Go back to the hotel please. 」
       (山田はん、ホテルに戻ってたも。)


     ビクッ、とした山田。何か、落ち度があったか?

      
      「 No, I just want to take a little rest
and change suits to prepare the dinner.」
      

( 何もご心配なく。ちょっと、中休みです。
夜の食事の着替えもしたいですし。)
   
       
       【夜の食事とは、法善寺横町】


   ホテルに戻って、約2時間の中休み。
食事場所は、すでに、マネージャーさんが、
   予約を取って下さいました。
ただし、そこは、2つ星ではなく、
ひとつ星レストランなので、
   お客様の了解を得て下さい、とのこと。

   それは、大丈夫。
当日予約なんて、
予約の内にはいらないと、
説明すれば、いいのだ。

   それより、この空白の2時間、ちゃんと、
ガイド料金をつけてくれるのだろうね?


     午後6時30分。ご両名登場。

     再度、市街地に向けて出発。

   場所は、月の法善寺横町、本通り。

      
   車は、千日前通り、赤髭薬局店前に着けます。

   ここから、法善寺参道の、
   一筋北の通りまで、行って右折れ。

   その右手にある串カツ料理店。
   ここが、ミシュラン一つ星レストラン。


     【WASABI】

   その店の名は「ワサビ」。

   午後7時、入店すると、満席。


    「 どちらさまでしょう?
      はい、トレーシー様、伺っております。
      少々、お待ちいただけますか?」


   待っている間、
ご主人のエンディさん、おトイレです。
場所を聞くと、


    「 お二階になります。」


   そう言われて、
エンディさん、おひとりで、二階へ。


  ヾ(@^▽^@)ノ


   そして、用事をすませ、
降りて来られました。


エンディさん : Yamada san,
There is a table nobody sits at.
Please ask
if we can take that table seats ?

         山田はん、二階、席があいてましたで。
その席にして、もう座ってええか
         聞いてもらえます?


    ということで、お店の人に聞いてみた。

    そしたら、


      「 その席は、予約なので、
        だめなんです。すみません。」


    だって。

    だんだん、また、ムカムカしてきたゴタ。


      「 おたく、それ、どういうことですねん。
私らは、予約してましたやないか。
        予約ちゃいますのか、私らは?」    


      「 すみません。申し訳ございません。」



   エンディさんが、なかに入ります。


     「 Okay. That's okay with us.
We have a lot of time.
No need to hurry.」
     ( いいよ、いいよ。
時間は
なんぼでもあるんやし。急げへんよ。)  


    ヾ(@^▽^@)ノ

   まあ、ちょっとしたことで、
カッカと怒るようでは、
エンディさんのようなお金持ちには、
   なれないのでしょうね。
ちょっと、見習うべきか。


    【教訓】

  金持ち、けんかせず。 
些細なことで、腹を立てるな。金持ちに
   なりたければ、柔和な心が大切じゃの。
エンディさんや、トレーシーさんのように。


さて、午後7時20分。
無事、おふたりさんが、お席に着かれ、
  ご注文の通訳を終了したところで、山田、退出。

   (=⌒▽⌒=)

   この間、ゴタも、別場所で、食事です。
   当然1000円以下の店。
   松屋かどこかを探しているうち、

     「はり重」

   にやって来ました。


    ( まあ、ここでええか。
日曜日の夜、どこも満員。
さっさと食べて、ハイヤーの中で休もう。)


    「はり重」で、ビフカツカレー

(900円)を注文。今夜の山田の食事です。

    なかなか、よかったヨ。おすすめ!

   ヾ(@^▽^@)ノ


     「 午後9時には、
       もう、出て来られるでしょう。」


   ドライバーさんに、
そう言ったのは、午後8時30分。

   あれから、時間は過ぎ、只今。午後9時30分。


     「 どないなってんねん。」

   ちょっと、のぞきに行くことにした。


   法善寺と寿司屋との路地から
その店の裏手に出られます。

   膝元の高さに、細くのびたガラス窓から、
店内を、そっと、見渡すことができます。


     ( うーむ、お客様、
 ご機嫌のていたらくで、
       会話がはずんでいるご様子。)
     

   もう、30分ぐらいは、かかりそうである。
車に戻り、ドライバーさんに、経過報告。


    「 あれ? ドライバーさん、お食事は?」


    「 いえ、私はいいんです。」


    「 え、大丈夫なんですか?
コンビニで何か、買ってきましょうか?」


    「 いいんです。ほんとに、おかまいなく。」

     
  このとき、ようやく電話。

  トレーシーさんからです。


トレー
シーさん : Hi Yamada san.
We've almost finished the meal.
Please come over.
       ( もう、食事終わりますので、
いらしてくださいな。)


     行ってみると、
隣に座っていた日本人カップルと、
すっかり仲よくなっていて、
      
    
       「 この人たちの分も、
お近づきの印に、食事をおごりたい。」

     と、言います。

     その日本人カップルは、天神橋で、
小料理店を経営する若夫婦で、
きょうは、定休日(日曜日)で、
ここに遊びがてら、食事に来たとのこと。

     それはいいのだが、やはり、
ミシュランの推す高級料理店のこと、
食事をおごるといわれても、
今しがた知り合ったばかりの人から招待を受けるには、
抵抗がある。


     これをいかに、スムーズに解決するか、
こんなところまで、通訳ガイドの仕事かいな?

     説得しやすい側に、つくことにした。

      で、

     日本人(藤沢さん・・・だったかな?)夫婦の方を、
言いくるめることにした。


      「 あのね、この人たち、
何度も、日本に来ているんですけど、今夜始めて
        あなたがたと、お友達になれて、
おおよろこびなんですよ。
        どうか、気持ちを汲んでやってもらえませんか?」


      「 それじゃ、こうしましょう。
今度、日本に来たら、
必ず、声をかけてくださるように。
そのときは、私たちが招待するのよ。」


     それで、ようやく両者、納得。


     気前よく、全員の分をお支払いになって、
お店の方も、恐縮してしまい、

     山田に、


      「 きょうは、ほんとに、すみません。
 どうもありがとうございます。」

  
      「(いや、金は私が出したのではないので・・・)
どういたしまして。」

 
    長い大阪の夜は更けゆくのでした。
    きょうも、午後11時、

    ようやくホテルに帰還です。
    報酬金には、色が添えられていました。
もちろん、
    空白の2時間分も引算なしでした。
    ドキドキ

    明日は、午前10時30分迎えとなりました。

     おしまい
     山田 錦