孤独で何が悪い? | 38度線の北側でのできごと

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38度線の北側の国でのお話を書きます

 世田谷文学館に谷口ジロー展を見に行ってきた。

 

 

  ぼくは、井之頭五郎の年齢に近づいている。そして彼と同じく下戸で、彼と同じくまた、ひとりで飯を食うことが多い。いや、ずっとひとりでご飯を食べてきた。

 

 高校時代も、大学時代も。

 

 大学は学生数が多くて、食堂の限られた席はランチタイムには埋まった。でもよくみれば半端な席は空いている。6人一組で座るところに5人しかいないことも多くひとり分はちゃんと空いている。4人でどうしよどうしよ空いてないよなんてやっているうちに昼休みは過ぎラーメンは伸び授業が始まる。

 

 今の職場も、昼休みはさっと一人でご飯を食べ、残りの時間昼寝している。昼寝をしないと20時までの研修はもたない。

 

 孤独のグルメが連載されているころから、ずっと無意識にこちらは孤独のグルメをやって来た。ひとりで飯を食うことがマンガのネタになることにも驚いたが、そこには綿密な描写と読ませる絵がある。面白いのは、料理系のマンガでありがちな手放しの絶賛。そんなものは食べログで読み飽きている。あるいは通ぶった批判も。

 

 主役は料理ではなく、料理を食べる側にある。最近このあたり間違いがちなお店が多い。黒いTシャツに、頭にタオルを巻き腕組みしたラーメン屋の店主。トイレには読みにくいポエム。「心を込めて準備中」の木の看板。客と勝負して、あるいは威圧してどうするのよと思う。

 

 講演の旅は孤独のグルメだった。豪華な夕食をいただいたあとの翌日の食事。一転して小汚い、地元の食堂で食べるご飯の至福。ほうじ茶を飲みながら、地元の放送局のニュースを見たり、地方紙を開いて「遠くまで来たなぁ」と窓の外を見る。

 

 そんな旅をまたしてみたい。ひとりで。スーツケースひとつで。