犬を食わず夏は過ぎゆく | 38度線の北側でのできごと

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38度線の北側の国でのお話を書きます

 といえば生ビールでもなく、アイスでもなく肉なのである。

 

 去年に続いて西横浜でスッポンと猪と牛肉を散々食べてきた。スッポンの生き血を焼酎で割ったものを飲み頭痛を発症したが、4時間ひたすら食べっ放し。そして破格の会費。なんとぜいたくな時間だったのだろう。

 

 テーブルを同じくしたのは、在日朝鮮人の方々。年齢はもちろん、立場も相当偉い人たち。

 

 社会人経験のある人なら、そうでなくてもある程度の年齢の人ならわかるだろう。こういう時は年下の人間が率先して肉を焼くべきだと。

 

 この鉄則は在日朝鮮人と焼き肉を食べる時には捨て去るべきである。

 

 というより、そもそも焼かせてくれない。トングを握らせてくれない。「ほらほら食べなさい」とトングを取り上げ、実に手際よく肉を焼いていくのである。特に年長者は年の功もあって、手際が鮮やか過ぎる。皿にどんどんさらに肉を載せてくれる。こういう時は早々に肉奉行になることを諦め童心に戻り「いっただきまーす!」と肉をかっ込むに限るのである。そして「おいしーーい!」と叫ぼう。

 

 例えそれが朝鮮総聯中央の幹部が相手であってもだ。焼肉で韓国、朝鮮人には勝てない。

 

 残念なのが例年必ず食べられる犬肉を食べられなかったこと。

 

 聞くと秘密の入手ルートがあるらしい。中国経由で入手できるのだが検疫が厳しい。これが犬肉を高価にする。この検疫をうまく潜り抜けるテクニックがあるのだが、今年はこのテクニックが活用出来なかったらしい。

 

 暑い夏には犬を食べるのがいいのだけれど。残念。

 

 大人のたしなみとして、犬肉を食べる店をいくつか知っておきたい。例えば会社でやりたくもない幹事を押し付けられた時にカードとして使うのだ。特に「女子に幹事やらせるの?」などという妄言を吐く輩と戦うために。

 

「おまえが犬肉を食べるか?おれが幹事を辞めるか?選ばせてやる」

 

 金切声の罵詈雑言が飛んで来る。「サイテー!」「残酷!」「他の店にしてよ!」。ここで決して妥協をしてはいけない。「無条件降伏、イエスかノーか」。そう迫り、罵詈雑言はシンガポールを陥落せしめ、イギリス軍司令官のA・パーシバル中将を前にした山下奉文のように泰然自若と聞き流すとよい。

 

 そのうち誘われなくなる。あいつに幹事をさせると大変なことになると言われ狂犬呼ばわりされる。

 

 それでもよい。孤高を貫くのだ。浮いた交際費で文庫本を買うとよい。

 

 甲子園も終わった。犬を食べずぼくの夏は過ぎゆく―――。