ぼくなんてまだまだ | 38度線の北側でのできごと

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38度線の北側の国でのお話を書きます

「あのよ、オレ琉球王になろうと思うのよ」

 

 久しぶりに会った友人がこんなことを言うのである。友人、というとおこがましい関係ではあるのだけれど、渋谷のど真ん中でぼくは突如そんなことを言われたわけである。

 

 この方既に50歳を超えている。この前会ったらひげを伸ばしていて、何だか仙人みたいな容貌になっていた。「どしたんですか?ひげなんて伸ばして」と聞くと、冒頭のことば。

 

 なかなか人生で、しかも50歳超えて「王になりたい」という人の相談というか、宣言を聞く機会もない。40数年生きて来たけど、こういう時どんなリアクションを取ればよかったのだろう。今でも悩む。「琉球王に、オレはなるぅ!」とやけっぱちでワンピースのルフィの物まねをしたら、大笑いして半ば本気に狙うことにしたらしい。

 

「時計を売ったの。仕事も辞めるの。その売ったお金で香港へ旅行に行こうと思うの」。

 

 別の50代の友人である。時計を売るってO・ヘンリーの「賢者の贈り物」のことかと思ったら違う。まあ腕時計はぼくもしないし、いいんじゃないでしょうか?無責任にそうちょいと背中を押してみたら、ホントに行って昨日の朝帰って来た。

 

 一昨日は琉球王が友だちを連れてきた。琉球王と、その友だちと、そのまた連れ。その連れが韓国人で、ぼくの後輩だったのだが、問題は琉球王の友だち。

 

 30代半ば。突如として安定した職業を辞めて上京、俳優を目指している。まだ上京して半年くらいしか経っていないのに、いくつかのCMに出たり、ある方の付き人をしたりしている。他にも色々書けないことがあるのだが、いや、ぶっ飛んでる。

 

 人生やりたいことをやりなさい。好きなことを始めるのに年齢は関係ない。凡百の自己啓発本はそんなことを無責任に書いてそれを何ら恥ともしないが、しれっと実践する友人たちが誇らしくもあり、また安心する。

 

 ぼくなんてまだまだ。

 

 これで安心して、平壌行けるな。