あれ、これってウチのお馴染みのすき焼きやんと思い、「どんな料理かと思ってたらすき焼きやったんや、やった~っ!ここでもすき焼きって嬉しい。すき焼き大好物やもん!」
「何かお決まりの料理でゴメンなさい。私の家で鍋料理なんて久しぶりなの。鮫君も来てるからいいかなって思ったんだ」
「いや、最高の選択やん。すき焼き選んでもらってアリガト」
「そう言ってもらって私も嬉しいよ。出来上がるまでもう少し。待っててね。でもどうしたの?」
「うん、智さんがお酒お代わりって言うからお酒もらおうと思って下りてきたの」
「まだ飲むの?別にいいけど。明日お兄ちゃん仕事どうだったのかな?」
「聞いとくよ。とりあえずビール2本出してください」
「はいはい」冷蔵庫からビールを取って渡してくれた。
「アリガト。じゃ上がってきます」
「鮫君」
「何?」
「お兄ちゃん変なこと言ってなかった?」
「何も。俺たちのこと羨ましいって。智さんみたいなハンサムな人が彼女いないってのもおかしなもんだけどね」
「お兄ちゃんって好き嫌いが結構激しいから。鮫君のことは気に入ってもらってるみたいね。部屋に誰か入れたの見たのって初めてだし」
「ふーん、俺には気持ちのいい人だけどな。全然気取らないし、優しいし」
「鮫君のこと気に入ってるからよ、きっと。良かったね。私も安心出来たし」
「やね。お互いの家族に嫌われないで良かった。あ、でも・・・」と言葉を濁すと、裕美も気付いたようで、
「ウチのお父さんね・・・。いずれ何とかなる、きっと」と言い切った。
「ゴメン。でも時間が来ればきっと解決出来る。・・・じゃまた上がってくる」
「もうそろそろ出来上がるからその1本でお酒は止めてね。お兄ちゃんにも言っといてね」やけに裕美が眩しく感じたのはどうしてだろ?やっぱ多少酔ってんのかな。
「分かった」そのまま裕美のいる台所からお母さんのいるリビング抜けて2階に上がった。智さんの部屋のドア開けると、
「遅かったな。またノロケ話してきたの?」
「ゴメンなさい、そうです。そろそろご飯出来るからお酒はこれだけにしてくださいとのことです。それと智さん明日は出勤なんですか?」
「いや、明日も休み。俺飲み足りないんだけど。小田島君も遠慮しないで飲みなよ」
「はぁ・・・。僕はまだほどほどにしか飲めないみたいですから。良かったら2本とも智さん飲まれます?」
「小田島君も寂しい奴だな。飯食いながら飲むか。早いけど下りる?」
「どちらでも構いませんが、智さん」
「何?」俺の方から先にビール開けてしまった。飲んだ。ホントはまだまだいけるけど、遠慮した方がいいに決まってるから抑えてた。でも、多分今回の話の核心になると思ったので飲んだ。「どうしたの」立ち上がりかけた智さんだったが、そのまま座った。
(続く)