スマホに誰かの静かなSOSが届く

僕はもう

いつもでは眠る時間を過ぎていたのだけれど

その時はなぜか

その静かな叫びを押し殺すことができぬ

間抜けな魂であったのだ


どんな風に収入と支出のバランスが狂ったのか知らないその魂の

少なくとも悲痛には見える絵文字とスタンプ入りのメッセージを

僕は思わず

こころに溶かしてしまったのだった


欲望かといわれればそうである

だが情ではないかと問われれば

たぶん少しはそうである


いや

世の中は少し狂っていて

今という時代はちょっとつまずいただけで

リカバリーが非常に困難な

とんでもない世界のだとは感じる

それは当人の管理力や将来設計の甘さだと

切り捨ててしまえば終わりなのだろうけど

肌感覚として

若年層の 今そこにある貧困というものが

じわじわと拡大していることを痛感してしまう

それは売り手側だけではなく

買い手側の金脈の枯渇感というのも伴っているのだから尚更である


現実的に頼れることが可能な近親者やそれに準じるものがいない人々の気配は

確実に増えてはいる


何が株価最高値だと思う

日本は表層だけは整えた貧者に

溢れてる社会なのかもしれない


誰かのこんなはずじゃなかった未来の穴埋めのために僕は存在しているのか?

想定外の夜の彷徨いである

僕はその子の細かなこと知らない

聞かないのだ

根掘り葉掘りという関係性ではない

どうしても必要な時は自分から教えてくれるだろうと思う



容姿は全然悪くないし

物腰も柔らかい

だが口数は多くはなく

察するに

どうやら自分にはあまり自信はない方のようだ

そこは僕に似てはいる


でもいい子である

僕はいつも早くこのニゴリエから

卒業できることを願ってはいるのだが


いつものように僕の小さなギャグや いろんな面白い系の話を

興味があるようなないような

捉えづらい表情で聞いてくれている

話は尽きないが

僕の白濁した求愛が涙を流さない限り

今夜の世界に平和は訪れないのだ

暗黙のセクハラへ夜は流れた

充分に優しさをまとった芝居の上手い僕の指先は

官能領域のあまり発展してこない彼女の上をアイシテルの痕跡を探すように踊り

それ以上の雌には変異しない彼女に

早く最終工程に取り掛かり

仮死状態の雄をでっち上げ、作業としての彼女の工程を終わらせてあげようかと思った

その矢先のことだった