「ゴンタさん、ゴンタさん」

仕事中の僕に呼びかける声に振り返った

マスクをしているからすぐにはわからないけれ

「ああ、どうしたで?」

すぐに名前が出てこないくらいの知り合いであったのだが

声を掛けられることくらい客商売の職場で働いてるのでたまにはあるのだが、

柔らかいのに深刻そうな声なので、なんだろうと不思議に思う

「最近、また調子が悪くて 気分もあの頃みたいに落ち込んで、体重も減っちゃったんですよ。それでね、金縛りになるんですよ よく」

さあ大変だ 彼は以前、鬱になり数ヶ月会社を休んでいたタイプの人なので、その点は心配ではあるが さて

あれ?

僕に霊感があるって話したっけ?

ああ

したした!

っていうか その手に話

半分以上は僕のネタなのだ

そうそう その話に関連して 軽いヤツだったら払えるよっとか言ってたかもしれない

口は災いの元だ

しかし

そんなにすごく親しいというのでもないのに僕を頼ってくるのも

それも気弱で控えめにすっと寄ってくるところとか

身体を持たない迷えるヤツらに似てさえいるし

僕は反射的に答えていた

「そりゃ大変だね ちょっと払ってみようか?」


僕ぁ、自分のその手の能力というか感覚っていうのか、そういうものを実はあんまり信じていないのだ

もっと そこら辺に浮遊しているヤツらの姿をハッキリ見える(と言っている)人とか

たまにいて驚いたり スゲーって思ったりするし

僕のなんて気のせいに毛が生えたようなものだから、アルと思えばアルけど ナイと思えばナイようなものなのだ

そんなもん 実はナイ方が幸せなのだ

若い頃 やたらとあちこちで拾ってきてしまって身体は疲れるし、祓う方も上げ方もわからないから

僕の部屋なんてお化け屋敷になっちゃうし大変だったのだ


そうそう

こんな笑い話があるんだけど聞いてくれるかい?

仕事関係でね 真面目そうなアルバイトがいたんだけど

「おい、ちょっと今日うろうろしてるから気をつけろよ」って言ったことがあるんだけど

僕は微かに感じるその手の気配 肩の疼きみたいなのかな

そんなの感じると多分霊感なんかないだろう他人に バイトとかね ネタとして怖がらせたり笑い話に繋げたりするために

そんなカラカイ半分の話を投げてみたりすることがあった

そしたら その真面目君は

「ああ、確かに そんな感じですよね」って反応を返してきたのだ

僕はギョッとして ゾワっとして ヒヤッときた

自分の気のせいに近い感覚が真実に近いものだと知らされて

なんだよ! 勘弁してくれよ! とか感じてしまったのだ

自分でも少し笑えたり 笑えなかったり


話を戻そう

僕は仕事中だけど少しだけ時間をもらって

彼を表に連れ出した

最近反応がなかった僕の霊感アンテナである肩が

軽く疼いているのに気が付いた

確かに彼には付いている


僕はその手の知識もないし修行とかも勿論してはいない 霊とかがあるかないかとは別に シロウトが祓うなんてことをやっちゃいけないのだ

危険なのだ 追い出した迷った魂が宿主を求めて僕の方に乗ってくる確率が非常に高い

彼を表に連れ出したのは 密閉された空間でそれをやれば 誰に憑依してしまうかわからないからで

皆さんは見たことあるかなぁ

古いオカルト映画の「エクソシスト」

あれと同じことしちゃってる訳

馬鹿な僕は自分に憑かせてしまうんだな

そんなつもりはないんだけど

彼には多少の注意事項を教えて帰した

僕の肩が酷く重いから多分半分は除霊は成功したんじゃないかと思っている


さてこれからなのである

自分から祓う方法

出来れば上がってもらう方法ね


これが結構、衝撃的なのだよ


いくよ

よく聞け!

いや

よく読め!


詩作すること!!


なのである


普通の詩作じゃないのかな

僕的な詩作かな

僕の書くものって恋愛系は別にして

どっちかっていうと孤独感とか儚さとか

こんな筈じゃなかった未来に立ってしまった我が身を

嘆きながらもゆっくり受け入れていって

そのサミシサを味わって悦んじゃおうっていう

M的変態さがあってさ

それってお経とかの色即是空みたいなのに近いのかって思ったりしたのね

後から気が付いたんだけどさ

詩作を始めたのがすごく遅かったんだよね

30過ぎ

気が付けばその頃からナンカ連れて帰っても

いつのまにかいなくなるな感があって

もしかしたら上がった?感もあって


もっと若い頃は気を強く持って(寄ってくるな!)とか強く念じても寄ってきちゃったんだけど

30過ぎからは

まぁいっかなって

なんか上げ方わかった気がしてたのね


その夜背負ったヤツを供養する詩を書こうかなって思ってたんだけど

自分でさ

表に出て肩とか叩いたらね

痛くなくなったの

疼き感がほとんど消えたのね


あ!

消えたのか!

とか安心してさ


疲れてるし眠くなるし

詩なんて無理して書くもんじゃないし

最近は聴こえてくるのを自動書記するようなスタイルなので書かなかったのね

供養になるようなヤツをさ


あれから二日


ただこのお話を書きたい欲求はずっとあってね

今日はお休みでさ

比較的早く目が覚めてね


今そろそろこれを書き終わるくらいなんだけどさ


書き始めてからすぐに

肩が全開で痛くなってきていてさ

なんか少し息苦しさもあるし

僕の連れ帰ったコノカタ

少し強いし狡猾かもしれぬのじゃ

やばい

呪い殺されぬように

これを書き上げたら諸行無常のおポエムを

書こうと思って書きます


題名は

いつも題名なんて付けないんだけど


題名は


「除霊の歌」


お化けに怒られるわ!


おあとがよろしいようで