出会い系と僕

 黒魔術 そして君2

(僕とジュジュの魔法1)


まるで思い出みたいな 遠い昔 エピローグだけが永くて エンドロールが 日陰の汚れた雪みたいに残っている 何も聞こえない夜は 君の名前を口ごもる 未来なんてまるでない 時間の吹きだまりで  衝動が不自然に震えている 汚れた僕を恥辱するみたいに 生きるって汚れることだよって吐いたその息を 命の為にと吸い取る僕は ぬかるみでついた泥を 泥水で洗い続けている 全部汚れたら楽になれる でも どこかが油紙のように拒み続けるので まだら模様の無惨が浮き上がってしまう 汗臭いままで眠れるだろうか 汗臭いまま愛されるだろうか


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 誰も近づかない禁断の森の奥の小さな名もない泉の畔で ジュジュの横顔を眺めるのが好きだった ただそれだけだった

僕はひとり遊びが好きな少年で 森に近い村外れの貧相なあばら屋に住んでいた 祖母と犬 そして父 ぼんやりと空想に抱かれていると あれほど行ってはダメだと言われていた森の奥の方にさえ 夢遊病者のように迷い込むことがあった  まあ 禁止というものの多くは防止に結びつかないのが人の世の常なのだけれども 子供の頃の僕がどんな風な葛藤を経て ぼんやりという仮面を被り 禁断に浸食されていったのか 嘘つきな記憶とその記憶以前の空白から再構築するのは 今となってはかなり難しい

ただ僕は ジュジュの横顔を眺めるのが好きだったのだ 寡黙な彼女は でも子供の僕にもわかる見えない羽衣のような不思議をまとっていて 例えばその栗色で長いきれいな髪に触れようとするような そんな不埒をしなければ ただ眺めるだけの至福の時間を 僕に与えてくれた 話しかけても あまり返事はしてくれなかったが 時々蝶のように優しく舞いながら 微かだけれどきれいな 歌うようなナニカを振りまいていた 呪文なのか  祝福なのか でも それは少なくとも拒絶ではないということだけは 僕にもわかっていた  ジュジュはいつの間にか 僕の中にも住みはじめていたんだ