「性愛空間の文化史」 金 益見著 を読む | Gon のあれこれ

Gon のあれこれ

読後感、好きな太極拳、映画や展覧会の鑑賞、それに政治、ジャーナリズムについて、思いついた時に綴ります。

こういう学問分野は「民俗学」の中に入るのだろう。

柳田國男、折口信夫あるいは宮本常一等を先立ちとする、なかなかに身近な学問。

著者は在日コリアン三世。 名前を見て、貝原益軒を連想した。

見と軒がハングルで同じまたは類似の読みであるならば、名付け親は「益軒」の事が念頭にあったに違いない。


性愛空間の文化史/ミネルヴァ書房
¥2,100
Amazon.co.jp

著者は「はじめに」のところで、ラブホテルの定義、先行研究、目的と方法、書の構成について記述している。

この書が興味本位のものではなく、学問的方法に則ったものであることを言外に明示している。

「一定時間をひとつの単位として場所を切り売るセックスもできる宿泊可能施設」とラブホテルを定義し、

関係者の聞き取りと広告の変遷をもとに、ラブホテルという呼称が生まれるまでの変遷を明らかにすることを目的とする著作である、と述べ

ラブホテルのルーツ、モーテルの誕生と衰退、ラブホテルの隆盛と現在が順次展開される。

地方紙まで含めて丹念にこの種の施設の広告を収集した根気強さに敬服すると同時に、一種の「オーラルヒストリー」的手法で、関係者からの丹念な聞き取りが収録されている。

これは、今収集すべき資料である、と言う点で貴重なものだ。

内容については、施設提供側の証言が中心なため、ラブホテルが一般のホテルや旅館に与えた影響ばかりが述べられているが、逆もある。

例えば女性客にアッピールする施設やアメニティの提供は、旅館やシティホテルが先行していたと思う。

しかし、施設の回転率(ホテル旅館では稼働率)が高く、従って面積当たりの売り上げ、利益の高いこの種施設は、その分建築・設備に投資できるわけで、浴室や洗面の豪華さは宿泊業ではなかなか追いつけない。

また「石亭」のようにラブホから旅館業に進出した業者もあるが、宿泊業ではきめ細かい投資、経営管理が必要だが、その点の大雑把さが災いして、進出が失敗したケースも多い。

もう一点は、結婚式場との関連。
ゴンドラは関西の式場業者が最初に始めたものだが、結婚式場とラブホテルとの相互の関連もあったような気がする。