『この道や 行くひとなしに 秋の暮』 と、松尾芭蕉氏の句を無理やり調べて今回の冒頭を飾らせていただきます。

 

 9月も終わろうとしているのにまだまだ暑いと、暑がりの私は何とか涼しげな想像をしてみたいと思いました。この句の解説を見てしまったので、それは置いておくことにします。

 

 句を読み、感じることは自由でしょうから、私なりの受け止め方をしたいと思います。

 

 〝この道や〟これは私自身が訪ねる秋の旅路を思い浮かべました。

 

 次に〝行くひとなしに〟ですが、人が殺到するような有名で人気がある場所にいるのではなく、私が好む風景がある場所を思い浮かべます。これまでの経験上で、私が好む風景を巡っていて、まず人混みにまみれることがありません。僅かな生活者がときより歩いている程度。。。ですから〝行くひとなしに〟を、そんな情景と受け止めることにします。

 

 そして〝秋の暮〟は、湿度を微塵も感じない風がささやいだりして、いかにも爽やかで涼しげな空間を想像します。

 

 すなわちこの句は、私の嫌いな蒸して暑い夏がとっくに過ぎ去って、ささやく秋風を受けながら賑わうことは無縁な私好みの風景を静かにその良さを味わいながら旅路を楽しんでいる。と、いう受け止め方になりました (^^)

 

 。。。と、いう訳で、それがどうしたんだと、言われかねない前置をしてしまいましたが、秋の旅路をひとつ、ご紹介してゆきたいと思います。

 

 今回は 『吉備路自転車道』 をサイクリングしたことを思い出してみました。今から 5 年も前の 9月も終わる頃でした。今年の今頃と一緒で、結構な暑さだったことを覚えています。

 

 岡山県の高梁市辺りをベースに旅をしていた最終日に、高梁駅から列車に乗って岡山に向かう途中に総社 (そうじゃ) 駅に着いたのですが、面白い駅名だったので降りてみることにしたのです。

 

 

 

 随分と昔のお笑い番組で、笑える地名を視聴者から教えてもらうコーナーがありました。その中で明石家さんまさんが一枚のハガキを読みました。「私が住んでいる町には〝そうじゃ〟という駅があります」と、スタジオも大爆笑でしたが私も腹を抱えて大笑いしたことを思い出しまたのです。

 

 駅を出てすぐ傍に、レンタサイクルの看板が目に入ってきましたのでサイクリングをしようと、いうことになりました。先にも申し上げたように、結構な暑さだったので歩くよりはマシだろうと思ったのでした。

 

 しかも、指定された 3ヶ所のレンタサイクル屋さんでしたら、乗り捨てが出来るということなので、これはいい!と、いうことになりました。

 

 レンタサイクル屋さん 3ヶ所ともJRの駅に隣接しているので、JR利用者の私たちには利便性が良かったのです。

 

 荒木レンタサイクル(JR総社駅前)、高谷レンタサイクル(国分寺前)、ウエドレンタサイクル(JR備前一宮駅前)と、この 3ヶ所になります。

 

 

 

 自転車に乗って市街地を走りだすと、いくらも走らないうちに田園と低くこんもりした山々とをセットにしたお約束の長閑な風景が広がってきました。

 

 しつこいようですが 9月のわりには結構な暑さなのですが、その風景は決して暑苦しくはありませんでした。

 

▼案内表示がマメに設置されているので、道に迷う心配も無いと思います。

 

 

 総社駅前から備前一宮駅前方向を目指して走っていると、最初に休憩したくなるのが 『やよい広場』 でしょうかね。その名の通り、高床式倉庫が建っています。その昔、この付近で遺跡発掘でも行われていたのでしょうかね。

 

 公衆トイレと屋根付きベンチがありますよ。

 

 

 

 秋の田んぼ道には秋桜がよく似合う。かれこれ 40数年前にコスモスを秋桜と書いて世に出したのは、シンガーソングライターのさだまさしさんでした。歌ったのは山口百恵さんです。

 

 当時、辞書に無かった漢字でしたが、現在では当たり前のように定着していますよね。漢字の文化さえ変えてしまう偉大な歌だと、私は思っています。

 

 

 

 秋桜でもう一つ。女房殿と結婚する前に私が 「君はコスモスみたいだね」 と、言ったことがあります。女性の皆さんは、好きな男性にこんなことを言われたら嬉しいでしょうか? その時の女房殿もまんざらでもない感じでした。

 

 コスモスは茎が細くて長く、いつも風に揺さぶられて右へ左へと振られていますよね。故に、可憐な姿だとも言えるのですが、実は雑草並みにタフな復元力を持っているのです。強風でなぎ倒されても、踏みつぶされても、必ずや立ち上がってくるのです。無論、私はこういった意味でタフさを褒めたたえた意味で言ったのですが、当時の女房殿は勝手にいいように解釈したみたいです ( *´艸`)

 

▼備中国分寺内に建っている五重塔

 

 

 低い山々を除いては、平らで広めの田園風景の中に五重塔が見えてきます。こうした立地は珍しいと思うし、カッコ良く建っているので、立ち寄りたくなったことは言うまでもありません。

 

 他の季節も、菜の花や蓮華、向日葵などの花々が五重塔を引き立てているそうですよ。

 

 

 

 次は、古墳の登場でして、『造山古墳』 と呼ぶのだそうです。私はその昔に社会科の教科書で仁徳天皇陵古墳の航空写真を見てから、この前方後円墳が大好きになって是非とも見てみたいと思いながら大人になりました (^^)

 

 仁徳天皇陵はまだ見に行けてませんが、奈良にある前方後円墳は見たことがあります。とにかく上か見るこの形が良い。昔のドアの鍵穴を思わせる形がなんとも滑稽に思えるのです。

 

 。。。ところで。。。私はもう。。。とっくに。。。気付いてはいるんですよ。

 

 

 

 上から見下ろさない限り、前方後円墳だなんて判りはしないってことを。。。 これって、おそらく前方後円墳好きな人のあるあるだと思うのです。

 

 それでも、旅先に (好きだけど、それだけの為には動かない (^^;) それが在るならば近づきたくなるのです。ですから、前方後円墳を歩いて嬉しくもあるのですが、所詮あの形を見ることは出来ない切なさも同時に感じているのです。

 

 

 

 せめて、古墳の頂上からの眺めを見て切なさを抑えることにしました。とは言え、この造山古墳、全国に築造された前方後円墳の規模では第4位の大きさを誇るのだそうです。

 

 しかも、こうして古墳内に立ち入ることが出来るのですから、お好きな方には満足感が高い場所の一つだと、私は思いました。

 

 

 

 造山古墳を後にして吉備路自転車道を走って行くと、15分程で 吉備路自転車道 足守川 休憩所』 に着きます。あえて、自転車道のために造られた施設のようです。屋根付きのベンチがありますが、トイレや自販機はありません。

 

 広い川幅を持つ足守川沿いにあり、目の前に堰があるのでその段差を落下する小さな滝の様な水音を耳にしながらリラックス出来ることと思います。

 

 

 

 次に着いたのは 『吉備津神社』 です。特徴は、本殿の屋根が同じ形でツインになっていることです。入母屋と呼ばれる形式の屋根が並んでいるので、『比翼入母屋造』 と、建築の言葉では呼ぶのだそうです。

 

 入母屋がツインになっているのはここだけなのだそうですよ。ちなみに、切妻がツインになっているのが島根県の三保神社の本殿で見られますよ。

 

 本殿の正面から見るのも勿論良いのですが、もう一つの特徴で奈良県桜井市に建っている長谷寺のような長い廻廊と共に裏手を道路から眺めるのも良いと思います。

 

 

 

 長い廻廊も、風情を感じながら歩くことが出来ます。

 

 

 

 この神社には、桃太郎の話の元になった温羅退治と呼ばれる神話が伝わっているのだそうです。お好きな方は、ここから 約 15km 離れた場所に 『鬼ノ城跡』 と共に巡ってみるのも良いと思います。

 

 尚、ご利益は、縁結びや、夫婦円満、安産育児、長寿、現金収入UP があるそうです。歴史相当古いようですが、現在の本殿は 600 年程の時が経っています。

 

 

 

 この後、JR吉備線の備前一宮駅前にあるレンタサイクル屋さんに自転車を返して、そこから吉備線に乗って岡山駅に向かいました。総社駅前から備前一宮駅前までを 4 時間程かけてフラフラあちらこちらを巡ってきました。

 

 いかがでしたでしょうか、吉備路自転車道は。予備知識が無くてたまたま見かけたレンタサイクルに飛び込んでのことでしたが、長閑な田園風景の中に見応えのある寺院あり、古墳あり、大規模で美しい神社ありと、情景豊かなサイクリングコースだと思います。

 

 私にとっては、大変満足感があるサイクリングでした。

 

 

 今日も訪ねていただきまして、ありがとうございました。

 

 

 

 

 それでは、またです。