私が初めての一人旅をしてまわった所は、夏の紀伊半島でした。当時、高校三年生だった私は、陸上の長距離部をしながらも喫茶店などでアルバイトをしていました。

 

 一人旅ゆえに自由な計画と行動が出来て、また冒険心がくすぐられて心がワクワクし、更には自分で働いた賃金で旅をするという、自立した行動に満足感をあじわっていました。

 

 当時、茨城の実家に住んでいた私は、旅の移動手段の一つとして長距離フェリーを使うことにしました。東京を夕方に出港して和歌山県の紀伊勝浦港に翌朝到着する便がありました。

 

 サンフラワーという立派な大型船なので一度乗ってみたかったし、夜の移動は金銭的にも時間的にも効率が良かったのです。寝台列車も考えましたが、船の方が圧倒的に安価でした。

 

 サンフラワーが朝日を背にして紀伊勝浦港に着きました。その後、鉄道とバスを乗り継いで和歌山県の山奥にある川湯温泉という所に向かいました。そこで二泊しました。

 

 今思うと、高校生の旅にしては中々渋いチョイスかもしれません。

 

 川湯温泉に連泊するで中一日は、確かそこから現在では世界遺産である熊野古道らしき路を暑い中で半日ぐらいテクテクと歩いたかなあなどと、おぼろげなに記憶が残っています。

 

 そんな中でも水道水しか知らなかった私が、山中の集落で飲んだ水がとっても美味しいと強く思いました。この時に初めて、水の味わい深さを知ったと思います。

 

 また、昼も過ぎた時間に集落の見知らぬおばちゃんがこさえた握り飯をご馳走になり、その時に何気ない他人の親切心からなる心地の良い空間とぬくもりを感じていました。

 

 川湯温泉を後にして、帰路である三重県及び愛知県に向かう鉄道の列車本数が余りにも少ないので、海沿いに延びる国道を景色も良いからと思いこれまたテクテクと歩き始めました。

 

 もう少し歩ける、もう少し歩ける、なんて思いながら足を進めていたら次に乗る列車に乗り遅れてしまいました。現役の長距離走者だったので、体力だけはあったが見通しは未熟でした。

 

 これ以上時間をロスすると茨城まで帰れなくなってしまう懸念があったので、思い切ってヒッチハイクを試みたら老夫婦の方が応じてくれて、結構な距離を運んでくれました。

 

 若かりし頃の私が初めての一人旅で、人様の情けに触れて、心地の良い体験をさせてもらった紀伊半島は、今でも私にとって特別な場所なのかもしれません。

 

 良い旅でしたが、ガイドブックを見て行ってみたいと思っていても、バスや鉄道を乗り継ぐ時間の制限によって見逃した場所があったりしました。

 

 今回、熊野路の旅 (ここから、現在の話です(^^;) においては是非、その頃に見逃した所に行ってみたいと思っていました。そして、そこはホテルのすぐ近くにありました。

 

 〝鬼ヶ城〟(三重県熊野市木本町) が、その一つです。

 

 隆起と風化と波の浸食によって生じた自然の芸術で、熊野灘に面して延々1Km続く、国の名勝・天然記念物。と、観光三重のサイトより抜粋。

 

 

 

 その場に立って眺めてみると、本当に自然の芸術なんだと、そう思いました。

 

 

 

 私がここを訪れたのは午前10時頃でしたが、普通車70台、バス10台も停められる駐車場は結構うまっていました。

 

 この景勝地の遊歩道を少し汗ばみながらも歩き、青い空と海を背負ったこの風景に魅せられながら、家族連れもしかり。。。

 

 

 

 カップルもしかり、それぞれに写真を撮ったりして各々の時を過ごしていました。

 

 

 

 一見すると、すごい所を歩いているように見えますが、遊歩道の足元は水平に削ってあり安定していますので、これから訪れようと思っている方々はどうかご安心くださいませ。

 

 それと、昨年に日本列島を襲った台風の被害により、この日は遊歩道が途中で通行止めになっていましたが、1月10日より仮復旧ではありますが全通しているとのことです。

 

 

 

 ここで、どうしてもご紹介したいことがあります。

 

 駐車場と併設されている〝鬼ヶ城センター〟という施設がありまして、ここでは売店でお土産を買ったり、軽食と食事が出来るのですが、ここにいるとずうっと耳に入ってくる音楽があるのです。

 

 それは、ここ熊野市のご当地ソングなのです。

 

 

 お聴きいただけましたでしょうか。この歌だけを〝鬼ヶ城センター〟で繰り返し流しているのです。サビの 『熊野が好き 好き あなたが好き ♪ 熊野が好き 好き 家族が好き ♪』 

 

 熊野の特産である柑橘で、その名も〝新姫〟という果汁が入った〝新姫ソフトクリーム〟食べてる間、ずう~っと耳に飛び込んできました。

 

 これがしばらくは耳に残り、後に移動している最中にもハンドルを握りながら鼻歌で口ずさんでいまいます。今でもそうなんですよ (^^;

 

 フレーズといい、歌声といい、ご当地ソングとしてはとてもユニークなインパクトを感じます。皆さんも私と同様に、耳に残ってしまったらすみません m(__)m

 

 

 

 『く~まのがすき♪』 のフレーズを散々聴いて、それを耳に残ったまま、鬼ヶ城とはまた別にある近くの奇岩に立ち寄ることにしました。

 

 鬼ヶ城の駐車場からから国道42号線に出たら 2km 程西へ向かった所に〝獅子岩〟と呼んで、これもまた、海の浸食によるもので現在の形になっているのだそうです。

 

 これは、獅子岩よりも東から 国道42号線を走っていると、綺麗な海岸線が続く中でポツンとそれらしきものが見えてきますので、結構手前からもよく分かります。 

 

 各地にある風化や浸食などで形づくられた自然岩などに付けられているネーミングには、そう呼ぶにあたってどうも無理があるケースが多々ありますが、この獅子岩ドンピシャですね。

 

 

 

 これでまた1箇所、高校三年生の夏以来 35年間思い焦がれていた所を観ることが出来ました。それだけではなく、晴天にも恵まれまして大変満足しています。

 

 それでも、途中までしか歩けなかった鬼ヶ城に関しては心残りがあります。きっとまた、熊野路を訪れることでしょう。

 

 今回は、この辺で失礼しますね。続きはのらりくらりと、また後程に。。。

 

 

 今日も訪ねていただきまして、ありがとうございました。

 

 

 

 

 それでは、またです。