カメラがモタラシタモノ 11-09
『バンッ!!』
背中で扉が大きな音を立てて開くと、ハルヒの怒号が飛んできた。
「キョン逃げるな!古泉君、強制連行!」
怒号に固まった俺に、こんどは古泉が俺の肩を掴んでくる。
「遅かったようですね。さぁ行きましょうか。」
ナイアガラの滝のように冷や汗を流しながら救いを求めるように古泉の顔を見ながら
「逃がしてくれるんじゃないのか?古泉。」
「残念ですが、以前から言ってるように僕は涼宮さんには逆らえないんですよ。」
「このイエス・マンが!」
その時の古泉の笑顔はとても冷ややかに見え、俺の肩を引く力も力強く、そして強制連行される俺の叫び声が虚しく部室棟に響きわたった。
「た・す・け・て~~~~~~」
強制連行され、ハルヒの前に突き出された俺の目に飛び込んできたのは、通常のSOSメンバーに加え鶴屋さんだった。
そうか、情報発信源は長門でも確定させたのは恐らくこの人だ。
「キョン何処見てんの!」
ハルヒが横目で鶴屋さんを見ていた俺のネクタイをグイッと引っ張る。
「粗方は有希と鶴屋さんに聞いたわ。」
「やっぱり…」
鶴屋さんは頭の後ろで手を組み白い歯とチャーミングポイントである八重歯を見せてイヒヒとばかりに笑っていた。
「なにがやっぱりなの。二人の話だけで十分だけど、一応あんたの話も聞いてやるつもりよ。有希と付き合うって本当なの?浮ついた気持ちや、ただ何となくとかじゃないでしょうね。それとゴールデンウィークにデートって本当なの?悪いようにはしないわ、正直に答えなさい。」
笑ってない目と、口角をピク付かせた笑いのどこが悪いようにはしないだ。信じられるか!
とはいえ、ここはハッキリと言わなければ、それこそ『ただ何となく』になっちまう。
そして長門にも説明して誤解という事を分かってもらわないと…
そう思い、ハルヒの後ろにいる長門にチラッと目をやった。
すると、そこには『虎子』がいた。
ショートカットで無表情で読書をしているはずの少女が、今はデジカメの画面を食い入るように見て、口元が少し綻んでいる。
なんだ、この可愛さは。本当に長門なのか?
俺の胸は昨日よりも増して高鳴り心臓の音が回りに聞こえてるんじゃないかと思うほどだった。
「キョンどうしたの、アホみたいにポカーンと口をあけて。有希と付き合うの、付き合わないの。もし間違いとかだったら、あたしから有希に説明してあげてもいいわよ。」
「いや…間違いじゃない…」
つい長門に見とれてハルヒの言葉が半分耳を通過していた俺は、長門と付き合っていることを肯定してしまった。
というより今の俺に否定する言葉は持ち合わせていない。今からでも俺の方からもう一度告白したいくらいだ。
「ホ・ン・キ・なんでしょうね~」
ハルヒの声が些か振るえネクタイを持つ手にだんだん力が加わってきた。
「ももちろん本気だ。本気だが…ハルヒさん、ちょっと苦しくなってきたんですけど…」
「ギョン、あ・ん・た・ね~~~」
「涼宮さん、あのぉ落ち着いてください。今お茶入れますから、ねっ、ねっ。」
「涼宮さん、気を静められて。冷静に、冷静に…」
「ちょっ、ハルにゃん…ハルにゃん…」
目は前髪で隠れて見えないが、口は歯が砕けんばかりに噛み締めている。だんだん呼吸が出来なくなってきた。しかもネクタイを締め上げる力が緩む様子はない。ダメだ、殺される。
長門ーーーーーー!!!