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言っておくが、もしアナタがオレ達名古屋の人間が毎日手羽先や
ひつまぶしや味噌煮込みうどんを食ってると思ったら大間違いだ。
ああ、思ってない。こりゃ失礼しました。
でも、大阪の人が毎日タコ焼きとお好み焼きを食ってるのは本当
らしいよ。
それでも少し肌寒くなってくると、味噌煮込みうどんが食いたくなる。
味噌煮込みうどんは名古屋のうどん屋ならどこでも扱っているが、
やはり王道はここ山本屋さんだ。
ややっこしい事に山本屋さんには本店と総本家の2種類があるのだが、
オレ的には本店を推させて貰う。
何故ならうどんに付いて来るお代り自由の漬物が美味いし、総本家
では別料金の玉子のトッピングも付いているからだ。
日が落ちすっかり肌寒くなった日曜の夕方に東名名古屋インター近く
の店を訪ねると、店内は同じ思いに駆られた名古屋人で賑わっていた。
扉を開け店に入った途端、かつお出汁の香りが鼻腔から入り脳天に
突き刺さる。
あんたぁ、あたし堪らんがや、どえりゃ味噌煮込み食べたくなって
来たわ。
こちらでの生活も30年が過ぎ、今では名古屋弁を自在に操る岩手
生まれの嫁セツ子がオレの耳元で囁く。
たわけ！ちょっと待ったってちょ。もうすぐ席あくでね。
元東京人のオレもネイティブな名古屋弁でそう応える。
幸い案外回転は早くオレ達も10分ほどで席に案内された。先ずは
お茶と件の漬物が運ばれて来た。
この漬物がめっちゃ美味いのだが、いつの間にか白菜がアイテムから消えて
しまったのは残念だ。添えられたおろし生姜とテーブルに置かれた白醤油で頂く。
うどんと言ってもナメてはイケない。
今の季節おススメの牡蠣入りの味噌煮込みなどは二千円を超える値段だ。
吉野家なら余裕で4杯は食えるので、我家の様な下流家庭には中々敷居が
高いのがこの山本屋さんなのだ。
セツ子はスタミナホルモン味噌煮込みをオレは牡蠣入り味噌煮込みと白
ご飯を注文した。
待つほども無く、グツグツと煮える土鍋が運ばれて来た。
蓋を取ると大振りな牡蠣がこんにちはだ！玉子はこれから煮えて来る
ちなみに味噌煮込みの土鍋の蓋には蒸気抜きの穴が無く、蓋をそのまま
とんすいの様に使うのが作法とされている。
八丁味噌を使った出汁はかなり濃い味付けだが、これがまた少し芯が残
った様な硬めの麺によく合うのだ。
半熟になった玉子を蓋の上で溶き、それにうどんを浸けて食うのも高度
なテクニックとされている。
ああ、熱い汁を啜り漬物で頬張る白飯の美味さ。お代り自由なのに
じじい故に一膳しか食えないのが口惜しい。
店から出ると身体の奥から温まり額にはうっすら汗が滲んで来る。
今年も味噌煮込みうどんの季節がやって来た。
高山や御嶽辺りではそろそろ紅葉が見頃だそうだ。秋は一番好きな
季節だけど、あっという間に終わっちゃうんだよね。
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