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今日から一緒に道内を周るT氏推定年齢70歳は、昨夜大洗からのフェリーで苫小牧に着いて
います。
T氏は私が公私を通して大変お世話になっている方で、氏が60歳で大型免許を取得して以来、
お盆休みにはこうして、北海道や東北、九州等のツーリングにご一緒させて頂いているんです。
資産家の氏は毎年違うマシンで現れますが、今年はつい先日納車になったばかりのBMW
R1200GS LCでお越しの筈です。
居ました。居ました。私がT氏の宿泊するホテルに着くと、氏はエントランスに止めたピカピカの
GSの周りを落着きなく動き回っています。
「Tさん、今年もよろしくお願い致します」
私がヘルメットを脱ぎ、そう挨拶しても、上の空で地面に寝転んでGSの下を覗き込んでは。タメ
息を付いています....
「Tさんどうしたの?」
私が尋ねると驚いた事に、振り向いたT氏は目を真っ赤に泣き腫らしているじゃありませんか...
「いや~参ったよ。」
「いや~参ったよ」は氏の口癖です。
「昨日フェリーに乗る為に常磐道を走ってたらさ、渋滞でノロノロ運転だったんだわ。そしたらヘル
メットに付けたB+comのマイクがポロっと外れて落ちたから、思わずハンドルから両手を放したら
コケちゃってさ、新車なのにキズ付けちゃったんだ。いや~参ったよ。」
私は頭の中で
アホかジジィ!低速の時に両手を離したら、そらコケるわ!しかもせいぜい数千円のマイクの為に
300万近いバイクをコカしてどうする?
そう思いましたが、当然口には出しません。
「そりゃ、大変でしたねぇ~お怪我はありませんでしたか?そうですか、それは良かったです。大体
GSみたいなアドベンチャーバイクにキズのひとつも無いと、ビーマーの間じゃバカにされるそうです
よ。何て言うかアレです。男の勲章ですよ。」
私がそう言うと、氏は途端に機嫌を直し、
「ホント?じゃぁ~反対側にも倒した方がいいかな?」と、ニコニコしながらスタンドを払って倒そうとする
のを私は慌てて制し、どうどうどうと背中を叩いて落ち着かせると、市場まで食事に行く事を提案しました。
苫小牧の市場はホテルから15分ほどの距離です。バイク乗りの間ではマルトマ食堂さんのホッキカレーが有名ですね。
T氏は「ホタテか、いや~参ったよ。」と言いながら満足そうです。
他にもホッキの刺身や
イクラ・カニ丼などを食べながら、今回のコースの打合せをします。
「Tさん、今日は旭川に泊まりますから、日高から237号で占冠、富良野、美瑛を抜けて旭川に入りま
しょう。お昼は富良野か美瑛の逝けてるファームレストランにしましょうか?少し距離走りますけど、
大丈夫ですよね?」私がそう言うと
「いや~参ったよ。」
T氏はやはりそう答えるのでした。大丈夫か?このじじいは....
私はいつまでも名残惜しそうにホタテの殻をペロペロと舐め回しているT氏に
「さぁ、そろそろ行きましょうか」
と声を掛けて席を立ちました。いよいよ私達の北海道ツーリングが始まります。
ところで食べ物の静止画像ばかりで、ツーリングの雰囲気が伝わらないと思いますから、この時車体に
付けたソニーのHDR-AS30Vで撮影した手抜き動画を貼っておきますね。