中国政府がこれまでドルや円などの国際通貨に限って
きた貿易代金の決済に「人民元建て」を試験的に導入
する方針です。

当面は上海、広州、深セン、珠海、東莞の5都市・・・

これまで人民元は内に閉じこもり、開放を拒んでいましたが
世界的な不況のなかで、突然の180度の方針転換です。

ここで一気に国際社会に人民元での決済を認知させ、
ドルや円に対抗する形で人民元の国際通貨化をめざす
戦略でしょう。

考えてみれば、世界一の外貨準備高や巨額の貿易黒字を
バックに、経済規模も世界第3位となる訳だから、
早かれ遅かれの動きかも知れません。

アメリカ、ヨーロッパと不況の地域を消し込んでいくと、
アジアが消去法的に浮上してきます。
その中で中国の景気回復が真っ先になりそうです。

こんな状況のなかで日本はどうでしょうか。「円」に
対する戦略が見えているでしょうか。

円高で輸出企業の業績が心配されるといっては騒ぎ、
円安で輸出企業を中心に株価が上昇してきたといっては
胸をなで下ろす様は、国が漂流しているような
感覚を覚えます。

これまでは「弱い円は国益」といった面が強かったと思いますが、
今後は次第に「強い円は国益」といったフェーズに
入っていくのではないかと思います。

今後、資源や排出権の価格上昇が予想される中で、
資源や排出量を買う力が、今後ますます重要になるはずです。
その力とは強い円そのものです。

通貨に対する政府のスタンスがないことはなんとも
寂しい話です。