「科捜研の女」間の「ルヴァン」CMが巧い ドラマの雰囲気壊さず地続き、科学的に商品の長所を説明 | かなこの「恋はときどき」

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 人気ドラマ「科捜研の女」(テレ朝系、木曜20時~)が戻ってきた。第19シリーズとなる今回は、20周年を記念しての通年放送の予定だが、4月18日放送の初回で興味深かったのは、劇中で放送されたクラッカー「ルヴァン」のCMだ。わざわざ撮り下ろした番組タイアップのショートドラマで、ドラマ本編のスピンオフの体裁で、科捜研の面々にうまくルヴァンの商品特性を説明させていた。遊び心満載で面白いが、ドラマの印象は崩さないまま。こういうCMをこそ、スポンサーには劇中で流して欲しいものだ。

 

そもそも、ドラマとCMとは、出演者がダブりがちだ。テレビ局の営業が、ドラマに出ている俳優を起用しているスポンサーに、一緒に露出することで相乗効果を狙いましょう、と持ち掛けるためだろう。だが、筆者は以前にも指摘したが、この戦略は、ドラマへの没入感をそぐために、互いにとって逆効果ではないかと思っている。ドラマに出演している俳優が出ているCMが劇中で放送されると、劇中の役ではない素の状態を見てしまうため、ドラマの雰囲気がぶち壊しになってしまうためだ。

 

ドラマの役柄とCMとのギャップが大きいほど現実に引き戻されてしまう。ドラマでは真面目に事件を捜査をしていた刑事がCMでは普通のお嬢さまになったり、ドラマでは常人とは違う能力を発揮するような変人がCMではごくごく普通のアイドルの表情を見せたりすると、そのギャップで急に白けた気分になって、がっかりしてしまう。人気俳優であればあるほど、ドラマでは印象深い役柄を演じるだろうし、CMにも起用されがちだ。ドラマでの役作りがあまりにもふだんの当人とかけ離れすぎている場合には、CMが夾雑物として感じられないかもしれないけれども。

 

この点、帰ってきた新シリーズの「科捜研の女」で劇中に流された、ヤマザキビスケットのクラッカー「ルヴァン」のCMはうまくできていた。というのも、ふだんはルヴァンのCMといえば沢口靖子というほど定着しているCMキャラである沢口自身は登場しなかったからだ。ドラマのレギュラー陣である科捜研の仲間、マリコ(沢口)以外のいつもの顔ぶれの所長ら職員4人がCMにはお目見え。まるで重要な証拠品を調べているように見せかけて、科学鑑定をした結果として、ルヴァンの持つ長所をそれぞれが科学的に解説した。

 

スポンサーとしては、マリコ=沢口靖子が出てくる、いつものルヴァンのCMを流せば楽だっただろう。だが、そうしなかったうえに、「科捜研」のスピンオフドラマをわざわざ仕立てた。マリコ以外のレギュラー陣は起用しつつも、あえてマリコだけは出さなかったおかげで、視聴者は、劇中で進められているとてもシリアスな事件捜査の雰囲気を崩されないまま。CMとドラマとの「ダブり感」は排除できた。でありながら、他の科捜研のメンバ―が登場することで、ドラマとの地続き感は演出した。手間はかかっているが巧い。しかも科捜研の人々をフィーチャーすることで、ルヴァンの素晴らしさを「科学的に」理詰めで説明できた。類似商品が数多くある中での商品の独自性を「科学捜査」によってうまくアピールできたのだ。

 

このタイアップを考えた広告代理店に拍手を送りたい。ドラマの劇中に挟まれるタイアップ広告はこうあるべし、というお手本のようなCMだった。と、元沢は思う。

(2019・4・22、元沢賀南子執筆)