SNSと大衆を信じる?利用する? ドラマ「3年A組」真偽を見極めろ、「クイーン」利用しろ | かなこの「恋はときどき」

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 1月期の連ドラでは、SNSなどインターネット情報発信が、物語に影響を与える重要な舞台回しになった作品が2作あった。「3年A組」(日テレ系、日曜22時30分)と、「スキャンダル専門弁護士クイーン」(フジ系、木曜22時)だ。前者はウエブに大量に流れる情報の真偽を見極める大切さを子供たちに教え、デジタルリテラシーを説いた。後者は、ウエブに増殖する情報が嘘か本当かには関係なく、渦巻く悪意や嘘(フェイク)をも利用して情報操作し、自分に優位に物事を運ぶデジタル時代の情報戦略を描いた。インターネットへの姿勢懐疑か利用か、正反対のドラマだったが、視聴率から類推するに、視聴者に受け入れられたのはウエブへの懐疑だったようだ。

 

「3年A組」は菅田将暉主演。卒業式まで10日のある朝、高校3年A組の担任である美術教師(菅田)が突然、クラスの生徒全員を人質に教室に立てこもる。彼の目的は「最後の授業」。「18歳成人」となったいまや、10日後に高校を卒業すると、子供たちは一人前の大人としてみなされてしまう。だが世の中は、かつてないほど子供たちにとって厳しい。情報との付き合い方が難しく、誰もが加害者になってしまうリスクを抱えている。しかもSNSを通じてウエブ上にひとたび流通した情報は、間違いを訂正することも難しいのに、ずっと後まで残り続けてしまう。そんなインターネット情報との付き合い方を骨身にしみこませるため、命を賭して、大掛かりな問いかけをした。

 

劇中、菅田演じる一颯先生が言う通り、生徒たちは毎日、違う情報に右往左往させられる。見方が変われば立場も意見もコロコロと変わることを、実際に身を持って体験する。だが現実社会はフェイクも含めた情報がウエブにあふれ、個人はそれらの情報の出どころや真偽も確認しないまま、安易に感想をつけてリツイートなどで拡散させている。情報を受け手として享受しているだけでなく、自らその流通や拡散にも加担しているのが、現代のウエブ社会だ。そして他者を傷つけたりと何かトラブルが起きた時、こんどは情報を拡散させた個人までもが責任を問われる。ウエブで氾濫している偽情報に個人が影響され、情報操作されやすく、その情報に乗っかった個人が誰かの加害者になってしまいかねない。その怖さを、毎週、情報を小出しにすることで劇中の生徒に伝える形を取って、視聴者に考えさせた。

 

一方の「スキャンダル弁護士クイーン」では、SNSで無責任に呟かれるコメントを利用して、黒を白と言いくるめ、白を黒と誤解させる、といった手段が使われた。こちらは弁護士の氷見(竹内結子)が主人公。初めから、SNS上の情報も、それを扱う人間たちをも信用してはいない。ネット上に真実があるかどうかにはこだわらず、人々がより面白い情報に食いつくという現実を踏まえて利用してやろうという、ある意味「大人の」戦略だ。

 

氷見は弁護士なので、依頼主の利益に沿うように動く。クライアントの臨む「結果」を得るためには、毎回、きわどい手法を取る。例えば、テレビ局に「よいしょ番組」を作らせたり、週刊誌にあえて偽情報をリークして特ダネとして書かせたり、記者会見を開いて衆目の関心を集めたり、本当は火のないところにスキャンダルをでっちあげたり、揚げ足取りの発言をSNSでつぶやきリツイートさせまくって相手を誹謗中傷したり――正々堂々の真逆、「やり方が汚い」と視聴者に感じさせるような手段で、見ていて決して気持ちのいいものではない。視聴率が低迷したのもむべなるかな、である。

 

全話を通して見ると、政界スキャンダルを暴露し、ある政党を浄化するために、氷見が、学生時代の知人である青年政治家(山本耕史)と組んで講じていた策略だった。最終回は一応、勧善懲悪、悪者を懲らしめて終わった。とはいえその手法は、それまでの回同様にギリギリセーフのきわどい証拠固めやSNS戦略で、果たしてこれは「ハッピー」エンドなのだろうかと疑問が残った。

 

まだ物事を知らないが純粋な子供たちに向けて「正論」を訴えた「3年A組」と、世の中はそんなものという前提で、正論よりも「大人の対応」でうまく世渡りする術を描いた「スキャンダル弁護士クイーン」。前者は最終回で15%超えし、後者は1桁台と低迷したという視聴率の彼我の差は、視聴者はまだまだテレビもメディアも、そして大衆のことも信じているという現実を反映したものだろう。

(2019・3・22、元沢賀南子執筆)

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