人情本や好色本を禁止するだけでなく、役者や遊女の錦絵までも御法度となったのだ。
しかし、したたかな商売人でもあった浮世絵師の歌川国芳(ウタガワクニヨシ、1797~1861年)は、動物や魚などを組み合わせて役者に見立てた「寄せ絵」や落書き風の「むだ書」など、法の網をかいくぐるかのような描き方を創案して、役者絵を描き続けたのである。
娯楽を禁じられて鬱憤が溜まっていた江戸庶民は、この反骨精神に喝采を送り、国芳は当代一の人気絵師となった。
今日でも、「寄せ絵」や「むだ書」は漫画の源流とされ、高く評価されている。
写真は、「荷宝蔵壁(ニタカラグラカベ)のむだ書」。
